所定内賃金は月給制が1.0%、時給制が0.6%前年度より増加/NCCU処遇改善調査

2016年12月21日 調査部

[労使]

訪問介護ヘルパーや施設介護員など、介護業界で働く労働者を組織する、UAゼンセン傘下の「日本介護クラフトユニオン」(NCCU、久保芳信会長、組合員約6万5,000人)は19日、2016年の「処遇改善調査」結果を公表した。調査では15年3月と7月のそれぞれの時点の賃金を調べ、年度間の賃金の変化を把握。16年調査では、新たに残業時間の昨年からの増減なども調べている。

月給制の賃金と全産業平均の賃金水準、格差が拡大

16年調査では、調査票の配布方法を変え、8~10月に全組合員対象に調査票を送り、加えて10月に1,717事業所の組合員約1万人に調査票を配布、合計で4,740人(月給制組合員2,966人、時給制組合員1,774人)の回答を得た。回答者は、月給制で女性が73.5%、時給制で88.6%と、女性の割合が高い。

3月と7月の所定内賃金の変化をみると、平均で月給制の7月が21万8,592円で、3月時点より2,255円(1.0%)の増加。時給制(月収換算)は12万9,169円で、3月時点を817円(0.6%)上回った。年度間の増加率は、「介護職員処遇改善加算」制度の見直しがあった15年の調査結果(月給制で1.9%、時給制で3.6%それぞれ増加)を下回っている。7月の月給制の平均値は、賃金構造基本統計調査(15年度)の男女計・全産業平均の30万4,000円と比べてその差がおよそ8万5,000円に達し、NCCU15年調査時点の格差(約7万7,000円)から広がっている。村上久美子副事務局長は「処遇改善の加算をしても、全産業平均に追いつかない」と指摘した。

残業の背景に人材不足が

16年調査から加わった残業に関する項目では、「今年に入ってからの残業時間は昨年に比べて変化があったか」という問に、月給制の27.4%が「増えた」(「減った」は22.7%)と回答しており、時給制の「増えた」13.9%(「減った」は13.1%)と比べ「増えた」の割合が高い(その他の回答は両者とも「変らない」が多く、ほかに「分からない」および「無回答」)。「増えた」と回答した人にその理由を聞くと(複数回答)、「介護員の数が減ったから」(月給制49.6%、時給制62.0%)および「業務量が増えたから」(月給制61.4%、時給制36.4%)の回答が多い。

さらに「残業時間を正確に申告していますか」の問には、「申告している」は月給制の50.9%にとどまり、「申告していない」が47.1%に達した(時給制では「申告している」49.2%、「申告していない」29.2%となり無回答の割合が多い)。月給制の「申告していない」理由(複数回答)は「残業を申告しづらい雰囲気がある」43.5%、「自主的に残業している」24.6%、「申告しても残業を認めてもらえない」23.3%が多く、村上氏は「会社がしめつける一方で、人材不足で業務量が増えているのではないか」と懸念を示した。

NCCUが回答した組合員の年齢の推移を過去5年にわたって調べたところ、月給制・時給制ともに20歳代、30歳代の割合が低下する一方、月給制では40・50・60歳代のすべてで割合が上昇、時給制は40歳代が微減しているほかは50・60歳代で上昇し、若い世代の割合低下、中高年齢層の上昇傾向が著しい。今回の調査の背景に、介護職員の人材不足問題の存在が浮かび上がる結果となっている。