要求額は昨年と同じ定昇相当2%プラス5,600円/私鉄総連の職場討議案

2016年12月2日 調査部

[労使]

大手私鉄やバスなど約230の労働組合が加盟する私鉄総連(田野辺耕一委員長、11万5,000人)は1日、都内で第1回中央委員会を開催し、2017年春闘の職場討議案を提起した。月例賃金の産別統一要求として、昨年同様、定昇相当分(賃金カーブ維持分)2.0%に加え生活維持分・生活回復・向上分として5,600円(2.0%相当)の引き上げを求める内容。職場討議を経て、2月2日の拡大中央委員会で正式決定する予定だ。

「賃金の絶対額」を意識して「月例賃金にこだわって交渉する」(田野辺委員長)

あいさつした田野辺委員長は、17春闘の職場討議へ向けて、「交通産業の賃金水準は、他の産業と比べて低い地位にある」と指摘、賃金水準を表わす「賃金の絶対額」を意識して「月例賃金にこだわって交渉する」姿勢を示した。

職場討議案では、月例賃金の要求にあたって「ポイント別賃金水準にこだわり、段階的に水準を達成できるように」交渉を進めるとしている。ポイント別賃金水準には、「平均水準」として連合の「構成組織の賃金・一時金・退職金調査」のモデル賃金(主要組合・所定内賃金水準)をもとに、たとえば35歳高卒・事務技術労働者で31万4,636円、同・生産労働者で30万3,857円の水準を設定。同様に「到達水準」として、中央労働委員会「賃金事情調査」のデータ(資本金5億円以上、労働者1,000人以上)から、35歳高卒・事務技術労働者(総合職)で33万3,080円、同・生産労働者で30万4,120円の水準を設定した。

このような賃金水準をふまえつつ、統一要求として、昨年と同様に、定期昇給相当分2.0%プラス「生活維持分+生活回復・向上分(ベースアップ分)5,600円」を提起。定昇相当分については、賃金カーブ維持分ととらえ、「各組合の平均基本給の2.0%となるように」交渉する。生活維持分+生活回復・向上分の根拠については、① 生活維持分を例年過年度物価上昇分相当としているが、物価上昇指数が上昇していないことから今回は「加味していない」② 「人材確保と要因不足の解消が産業全体の大きな課題となる」ため、「人への投資、生活回復・生活改善という観点を勘案し2.0%相当とする」――と述べている。

「ヤマ場の戦術設定」は3月上旬

年間臨時給(一時金)については、「賃金の後払い」「生活防衛」の観点から、中期賃金方針で定めた最低水準3カ月、目標水準5カ月、到達水準5カ月以上をめざす。また、2016年度の協定月数を堅持するとともに、協定を夏冬別ではなく年間協定とすることを掲げている。

産業別最低賃金の要求は、2016年の地域別最低賃金プラス10%に設定した。このほか、非正規雇用労働者の労働条件改善について、「1時間あたり60円以上を引き上げることを基本とする」とし、連合が提唱する「誰もが時給1,000円」の実現に取組むとしている。

要求は、2月2日開催の第2回拡大中央委員会で正式決定し、私鉄総連、地連、各単組の連名で提出する。賃金、臨時給、産別最賃についてのスト権確立投票を3月上旬までに結果集約できるように実施する。回答引き出しの「ヤマ場の戦術設定」は、3月上旬に予定する中央闘争委員会で「春闘推進方針」として決定するスケジュールとなっている。