賃上げ要求は「2%程度を基準」を維持しつつ、水準の絶対値にこだわる/連合の中央委員会

2016年11月30日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は25日、千葉県浦安市で中央委員会を開催し、2017春季生活闘争方針を決定した。賃上げ要求基準は「2%程度を基準とする」と2016闘争方針から変わらないものの、賃金の上げ幅だけでなく、賃金水準の絶対値を重視し、「底上げ・底支え」「格差是正」にこだわる姿勢を昨年以上に強調している。

17年も「賃金の底上げ・底支え」と「格差是正」を重視

あいさつした神津会長は2017春季生活闘争について、「少子高齢化と人口減少、特に労働力人口の減少がもたらす人手不足がすでに顕在化している。同時に、IoTの普及や人工知能の活用といった技術革新に代表されるイノベーションの進展が職場や企業、産業に変革を迫っていることも事実」と現状認識を示したうえで、「こうした状況のなかで明日への希望を確かなものとするために、いかにして『働くこと』の価値を高め、一人ひとりの生活の維持・向上をはかるべきか。そして、誰もが多様なニーズに応じて働き方を選ぶことができ、その働きに応じて適正な処遇がなされ、職場でも家庭でも地域でも活躍することができる『包摂的な社会』の構築をいかに実現していくかが問われている」と2017闘争の意義を強調。続けて、「そのことと相まって、日本の経済を『自律的成長』の軌道に戻さなければならない。GDPの6割を占める個人消費を拡大するためには、すべての働く者の賃金の『底上げ・底支え』『格差是正』によって家計収入の増加をはかることが不可欠だ」と述べた。

2016闘争では、物価上昇がゼロ近傍のなかで賃上げを獲得するとともに、非正規労働者の賃上げが前年を上回り、大手と中小の賃上げ率のかい離も縮小したことなどから「これまでにない新たな傾向を生み出すことができた」と振り返りながら、「今次闘争においても、この流れを持続させ、さらに拡げていくことが極めて重要だ」と継続的な取り組みの重要性を強調。「2017春季生活闘争は、わが国経済社会の分水嶺といっても過言ではない。この間に作りだしてきた流れを継続し、さらに広がりを持たせていかなければ、わが国は再びデフレの深い闇に舞い戻り、それが固定化しかねない」と危機感をあらわにしたうえで、「こんな時だからこそ、組織された私たちが経済の自律的成長、社会の持続性を確かなものとする原動力として、社会の期待に応えていかなければならない。今次闘争においても、すべての働く者・国民生活の底上げに向けて私たちが果たすべき役割は非常に重い」と、積極的な取り組みを構成組織に促した。

「賃金の絶対額」を意識、「名目賃金の到達目標の実現やミニマム基準の確保」に力点

2017春季生活闘争方針の具体的な内容をみていくと、スローガンは「『底上げ・底支え』『格差是正』でクラシノソコアゲを実現しよう!長時間労働撲滅でハッピーライフの実現を!」と掲げ、2016闘争に続き、処遇や労働条件の「底上げ・底支え」「格差是正」を柱に取り組む。また、一般的に大手企業の労働者に比べて賃金水準が低い中小企業の労働者が、大手企業と同じ賃上げ率を獲得したとしても、賃金水準自体の格差は埋まっていかないことから、昨年から闘争の前面に打ち出した「大手追従・準拠などの構造転換」の取り組みを前進させる。さらに、企業間取引のなかで下請けの立場に置かれることが多い中小企業が、値下げ要請などにより取引上不利を被り、賃上げ原資を捻出できない場合もあることから、2016闘争で初めて運動に掲げた「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分」を今回も継続して展開する。

賃上げ要求基準については、2016闘争方針と同じ文言で、「賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の『底上げ・底支え』『格差是正』に寄与する取り組みを強化する観点から2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする」とした。ただ、今回は、賃金の絶対値にこだわり、加盟単組が「生活できる賃金か、仕事に見合う賃金かどうか、自社の賃金の点検を促す」(須田孝・総合労働局長)ため、「名目賃金の到達目標の実現やミニマム基準の確保に取り組む」との文言を加えた。

中小共闘ではワークルール関連の取り組みも柱に

中小の賃上げ要求方針(中小共闘方針)と非正規労働者の労働条件改善方針(非正規共闘方針)も2016闘争方針と大枠は変わらない。中小共闘方針をみると、月例賃金については、「連合加盟組合全体平均賃金水準の2%相当額との差額を上乗せした金額を賃上げ水準目標(6,000円)とし、賃金カーブ維持分(1年・1歳間差)(4,500円)を含め、総額で1万500円以上を目安に賃金引き上げを求める」としている。

社会水準以上の賃金絶対額の確保に重きを置くため、生計費などをもとに算出した「最低到達水準」を都道府県別に設定した連合リビングウェイジにもとづき、地場の単組などはこの水準のクリアを目指す。また、2017闘争では、連合本部が作成した都道府県別の産業別地域の賃金水準(地域別特性値)も開示し、地域の職種別賃金相場の形成の運動も進める。

中小にかかるワークルールの取り組みも柱に掲げ、労働関連法制のなかには企業規模が一定の人数に満たない場合や業種によって義務を免除したり、努力義務とするものもあることから(労働基準法の1カ月につき60時間を超える時間外労働部分の割増率50%の猶予措置や、常時10人以上の事業場となっている就業規則の作成・届け出義務など)、法を上回るルールの獲得に努める。

引き続き「誰もが時給1,000円」の実現を掲げる

非正規共闘方針では、賃金引き上げの取り組みについて、時給に関しては ①「誰もが時給1,000円」の実現に向けた引き上げ ② 時給1,000円超の場合は、37円を目安に要求する ③ 取り組む地域ごとに「県別リビングウェイジ」を上回る水準をめざして取り組む ④ 正社員との均等待遇の実現をはかるため、昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化、昇給ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保した上で、「底上げ・底支え」「格差是正」にこだわる内容とする――とした。このほか、正社員への転換ルールの導入や無期労働契約への転換促進などの雇用安定に向けた取り組みや、均等待遇に関する取り組みを盛り込んでいる。

中央委員会閉会後、同じ会場で共闘連絡会議の第1回全体代表者会議が開催され、当面の闘いの進め方などを確認した。「すべての組合は2月中の要求提出、3月内での決着に向けた交渉配置を行う」こととし、回答ゾーンについて、【第1先行組合回答ゾーン】を3月13日(月)~17日(金)、【ヤマ場】を3月15日(水)、【第2先行組合回答ゾーン】を3月20日(月)~25日(金)、【中堅・中小集中回答ゾーン】を3月25日(土)~31日(金)とすることを決めた。

連合HP