長時間労働を生む2交替制夜勤職場の割合が過去最高/日本医労連・2016年度実態調査

2016年11月9日 調査部

[労使]

3割強の看護職員が長時間労働となる2交替勤務で働き、その過半数が「16時間以上」の長時間夜勤を行っている――こんな看護現場の実態が、日本医労連(中野千香子委員長、15万4,800人)の「2016年度夜勤実態調査」で明らかになった。また、看護師確保法の基本指針を上回る「3交替で月9日以上」「2交替で月4.5回以上」の夜勤を行っている人が、それぞれ22.9%、33.5%と、過酷な看護現場の実態が浮き彫りになっている。調査は、日本医労連の加盟組織のある医療機関を対象に実施し、442施設、看護職組合員11万3,614人から回答を集計。日本医労連は調査結果を踏まえて、「患者の安全と看護労働者の健康への影響が危惧される深刻な事態だ」と訴えている。

調査によると、勤務体制では、「3交替」の病棟が61.6%で、「2交替」の38.4%を上回っているものの、2006年以降、仕組みとして長時間労働になる「2交替」制をとる病棟の割合が増加を続けており、今回調査の38.4%は過去最高(2006年調査では11.3%)。「2交替」職場で働く看護職員は34.2%で、その過半数(53.3%)が「16時間以上」の長時間夜勤を行っている。

3交替制では1カ月の夜勤日数「9日以上」が2割超

1カ月の夜勤日数を見ると、「3交替」では平均7.63日で、「8日以内」が77.2%、「9日以上」が22.9%(うち「10日以上」が7.3%)。「2交替」では平均4.04回で、「4回以内」が66.4%、「4.5回以上」が33.5%(うち「5.5回以上」が10.7%)となっている。看護師確保法の基本指針では3交替職場について「月8日以内の夜勤体制の構築に向けて積極的に努力する必要がある」(2交替では月4.5回)ことを明記。いずれの交替制でも、指針を上回る夜勤日数で働く割合が2~3割と少なくないことがわかる。

何人で夜勤に就いているか(夜勤体制)については、3交替職場では、「3人以上」の夜勤が準夜勤の73.8%、深夜勤の68.1%となっている。夜勤要員の複数配置を求める入院基本料制度改訂が行われた2006年以降、「3人以上」夜勤が増加しており、改善が進んでいる。安全上問題が指摘されている「1人夜勤」については、準夜勤の1.6%、深夜勤の1.4%とわずかだが、依然として残っている。「2交替」職場でも同様の傾向で、「3人以上」夜勤の割合が83.5%と高く、2006年から増加傾向で改善が進んでいるものの、「1人夜勤」も2.6%とわずかに残っている。

夜勤の最も短い勤務間隔は「8時間未満」が依然半数近くに

勤務と勤務の間の時間(勤務間隔)について、最も短いケースを聞いたところ、回答した442施設の半数近く(48.0%)が、「8時間未満」としており、「8~12時間未満」の16.4%と合わせると、6割以上(64.4%)がILOの157号勧告の基準を満たさない「12時間未満」となっている。

医労連は、調査結果を踏まえ、「長時間夜勤に関する労働時間や回数の制限が行われないことが、現場の労働環境に大きく影響している」として、健康的負担の大きな夜勤労働者の労働時間について、「1日8時間以内、勤務間隔12時間以上、週労働32時間以内」の実現を訴える「安全・安心の医療・介護の実現と夜勤交替労働の改善を求める国会請願署名」に取り組んでいる。

また同労組は、TPP(環太平洋連携協定)の批准について、「医療従事者の賃金・労働条件や人員体制にも大きく影響する」「国・自治体の施策・規制で不利益を被ったと企業・投資家が判断した場合、制度の変更・廃止や損害賠償を求めることが出来る『ISDS条項』は、国民皆保険制度など日本の医療制度を壊す」(11月7日付、三浦書記長談話)として反発。同じくTPPに反対する全米看護師協会の呼びかけに応じて、11月17日に国会周辺で、「医療従事者による11・17TPP反対グローバルアクション」を展開する考えだ。