勤務間インターバルと36協定の上限規制の導入求める/連合中央委

(2016年10月19日調査・解析部)

[労使]

連合(神津里季生会長、689万人)は第73回中央委員会を14日に福島市で開催し、向こう1年間の活動計画などを決めた。同計画では政府の方針では不十分だとして貧困や社会的排除、また長時間労働の是正などの具体的な課題について、国会の動向もにらみつつ総がかりで取り組むとしている。安倍内閣が最大のチャレンジと位置づける「働き方改革」に関しては、すべての労働者を対象とする「休息時間(勤務間インターバル)規制」や特別条項付き36協定における上限時間規制の導入などの法改正に取り組む。

「裁量制拡大・高度プロフェッショナル制度は是正・撤回すべき」(神津会長)

冒頭のあいさつで神津会長は、安倍政権で進められている「働き方改革」に関連して、電通の女性新人社員の過労自殺が労災認定されたことに触れ、「労働時間の問題は働く人の命の問題にほかならない。問われているのは、『働かせ方』の見直し。これ以上は働かせてはならないという労働時間の上限を例外なく定めること、そして、勤務と勤務の間の休息時間を定めることが不可欠」と強調した。また、安倍政権が長時間労働の是正を標榜する一方、「長時間・過重労働を助長させかねない裁量労働制の対象業務拡大や『高度プロフェッショナル制度』を導入するための労働基準法の改正案を下ろしていない」としたうえで、「提示されている内容は明らかに長時間労働是正の流れに逆行するものであり、是正あるいは撤回すべきである」と改めて、強調した。

写真:連合第73回中央委員会

なお、神津会長は9月27日に初会合がもたれた政府の「働き方改革実現会議」のメンバーとなっている。

2017闘争では社会的広がりのある「底上げ・底支え」「格差是正」を

連合集計で賃上げが前年実績を若干下回った2016年の春季生活闘争について神津会長は「過年度の物価上昇がゼロ近傍であるなかで月例賃金の改善を成し遂げたこと、非正規労働者について昨年を上回る賃上げを実現したこと、そして企業規模間の賃上げ率のかい離を縮小したことは、『春闘』の歴史のなかでも画期的なことである」と評価。その中での特徴的なこととして、月例賃金にこだわった交渉を展開したことにより、「減益局面で一時金の減少があっても賃上げを勝ち取るという動きもあった」と指摘した。また、この間、中小企業の経営者団体との社会対話を通じて、「継続的な賃上げのためには公正な取引環境の実現が重要であるという認識の共有をはかった」と述べたうえで、2017闘争に向けては「引き続き『底上げ・底支え』『格差是正』に向けて取り組み、さらに社会に広がりを持った運動としていくことが求められている」と強調した。来季闘争の方針論議は、今月20日の中央執行委員会で確認する闘争「基本構想」を踏まえて、月末の2017春季生活闘争中央討論集会を経て、11月25日の中央委員会で決定される。

「働くことを軸とする安心社会の実現に向けた総がかり運動」(活動計画)

中央委員会で確認した2017年度活動計画では、社会的対抗軸をつくり国民世論を動かしていくため、格差の是正・縮小に向け昨年の大会後にキックオフした「クラシノソコアゲ応援団 RENGOキャンペーン」の第2弾を展開する。この中では、とくに貧困や社会的排除、長時間労働の是正など、身近で具体的な課題を突破口に国会動向もにらみつつ、連合本部・産別などの構成組織、都道府県の地方連合会、市町村単位の地方協議会が総がかりで取り組むとしている。

具体的な行動展開として、労働相談や職場・地域での対話活動など地道な活動の積み重ねに加え、これまで労働組合と距離感を感じている若者・女性層にもSNS動画配信など分かりやすく伝わるような工夫をする。あいさつで神津会長はクラシノソコアゲキャンペーンを通じて、「政策や政治の役割とのつながりを実感できる機会を積み重ねることで、意識を呼び覚まし、行動への参加を促し、社会的うねりをつくっていくことが求められている」としたうえで、キャンペーン第2弾では、「社会に向けた運動と職場における取り組みを、『ヨコの広がりとタテの深掘り』を意識しながら展開する」と呼びかけた。

活動計画に盛り込まれている政策実現事項として、労働基準法関係では、「時間外労働限度基準」告示の法律への格上と、すべての労働者を対象とした「休息時間(勤務間インターバル)規制」や特別条項付き36協定における上限時間規制の導入などの法改正に取り組むとしている。また、雇用・就業形態にかかわらない均等待遇原則の法制化に向けて、労働政策審議会の議論を通じて労働契約法、労働者派遣法の改正に取り組む。この前提ともなる労働政策審議会のあり方を中心とする労働政策決定プロセスの見直しについては「公労使の三者構成原則の重要性を再認識し、その維持と一層の強化が図られるよう対応をはかる」としている。

さらに、「子どもの貧困」の解消に向けた政策の推進として、「幼児教育の完全無償化」「高等学校の授業料無償化」に加え、大学の学費引き下げおよび高等教育における給付型奨学金制度の導入の推進を盛り込んでいる。