安全衛生対策の徹底・強化へ/基幹労連大会

(2016年9月14日調査・解析部)

[労使]

基幹労連(工藤智司委員長、25万8,000人)は8、9の両日、福岡市で定期大会を開催した。奇数年から2年ごとに設定される連合の2年間の運動期間との期合わせをするため、今回に限り1年間の運動方針を決定。役員についても1年間の任期で改選を行い、工藤委員長が再任された。

2016年の春季取り組み「企業規模間の格差は拡大傾向にある」

大会では、今春闘の最終総括である「AP2016春季取り組みの評価と課題」を確認した。2年ごとに賃上げ交渉を行う基幹労連は、AP2016では、産別一体となって2016年度・17年度2年分の賃金改善として8,000円基準の要求を設定した。また、業種ごとに加盟組合を束ねる業種別部会の判断により、2016年度だけの単年度要求も容認した。結果は、2年分の交渉を行った組合では、多くが16年度4,000円、17年度4,000円の賃金改善要求を行い、16年度1,500円、17年度1,000円で決着した。総合重工など16年度のみ交渉した組合では、4,000円を中心に要求を行い、多くが1,500円の決着となった。

評価と課題は、「こうした結果は要求額に対しては十分とはいえないものの、組合側の『人への投資』の必要性に対する粘り強い主張に対し、経営側が一定程度の理解を示した内容と受け止める」とし、中小労組が多い業種別組合については「経営状況の違いもあり回答にばらつきはあるが、前進回答組合が約8割を占めており、先行組合の賃金改善の流れが全体に波及したと判断できる」と振り返った。

賃金改善に関する今後の課題としては、「有額回答を得たことは一定の成果として受け止める。その上で2年サイクル取り組みとして、AP14・15の成果と基幹労連を構成する各組合の賃金の社会性を考えると、今後のAP17春季取り組みも踏まえた上で評価していく必要がある」とし、「AP16のみをみれば、企業規模間の格差は拡大傾向にあり、業種別部会で十分精査し、『当面の目標』も踏まえながら取り組みの強化は必要である」などと総括した。

「まさに非常事態、すべての職場で安衛対策の徹底を」(工藤委員長)

運動方針は、安全衛生活動の取り組み、組織力の強化と組織拡大、労働政策実現力の強化、「産業政策」・「政策・制度」の推進など、7項目を重点課題に据えた。

安全衛生については、2003年の基幹労連の発足以降で300人を超える災害死亡者が出ている。この8月だけでも5件の死亡・重大災害が発生した。方針は、災害事例集の確実な横展開と活用を図るとともに、関係会社・協力会社の災害防止への取り組みを強化するとしている。現場ではベテラン層の引退による世代交代がピークを迎え、中途採用者や女性社員の増加などにより労働力構成が変化していることから、幅広い労務構成を踏まえた取り組みを検討する。挨拶のなかで工藤委員長は「まさに非常事態といっても過言ではない。改めて、すべての職場での安全衛生対策の徹底を要請する」と呼びかけた。

組織拡大では、引き続き非正規も含めた組織拡大の具現化をめざす。非正規労働者の実態を含めて検証。加盟組合への的確なサポートやフォローを実施するため、組織拡大センターを設置する。

労働政策では、AP17について、賃金改善交渉を行う組合もあることから、AP16春季取り組みで整理してきた内容にもとづいてサポートする。方針討議では、AP17に向けて川崎重工労組が「AP16での2年サイクルでの取り組みを踏まえ、AP17も引き続き連合やJCMと協調した闘いとすべく、しっかり部会においても議論することが必要。先行き不透明感があるが、組合員の期待に応えられる交渉態勢をつくることが成果につながる。基本年度(16年度)と変わらぬ本部の指導性発揮をお願いする」とコメント。住重労連も「組合員の関心は高く、期待も強い。必ず結果を出すとの意気込みで船重部門一体となって取り組む。本部も16年と同様にJCMと連携をとりながら、リーダーシップを発揮してほしい」と要望した。

産業政策関連では、10年をスパンとする「産業・労働政策中期ビジョン」の見直しを行う。現在のビジョンは2010年に策定したもので、当初から、6年を過ぎたところでその先の10年を見据えて一定の見直しを行うことになっていた。見直しに向け、検討プロジェクトを設置して具体的な検討をスタートさせ、来年冬の中央委員会で中間報告し、来年夏の定期大会で特別報告する予定だ。

中期ビジョンでは60歳以降の働き方の再検討へ

中期ビジョンの見直しについては、方針討議のなかで、現状を踏まえた十分な検討を求める意見が相次ぐなか、60歳以降の働き方についての検討を求める要望が目立った。新日鐵住金労連は「2025年からは60~65歳が完全無年金となる。長期的に視野に立つとともに、退職金制度や、働きに見合った処遇、現場のモチベーションなど幅広い観点での検討が必要」と発言。JFEスチール労連は「定年者の2割が継続勤務せず退職しており、ベテランの技術・技能が損失している。60歳以降の雇用のあり方については、一律定年延長、選択定年制、再雇用と分かれていて、これを一本化することは困難だが、1年で議論して方向性を導かないといけない」とより具体的な産別方針の策定を求めた。日新製鋼労組は「65歳まで、豊富な技能や知識を発揮し、若い人とともにいきいきと働ける職場づくりが大事。現場のニーズを把握して、早急かつ丁寧な検討が必要だ」と述べた。

工藤委員長、神田書記長を再任

1年を任期とする役員の改選では、工藤委員長(三菱重工労組)、神田健一事務局長(新日鐵住金労連)ともに再任となった。

さきの第24回参議院選挙では、組織内候補であるとどろき利治氏(民進党、比例代表)は落選となった。工藤委員長は挨拶で、「当選につなげることができなかった責任を痛感している」とし、「今後、来年の中央委員会に向けてしっかりと総括を行っていくこととなるが、必要なら期限を延ばしてでも、しっかりと総括を行っていくことが求められ、総括を確認するまでの間、次の第25回参議院議員選挙に向けた議論は先送りしなければならないと考えている」と述べた。加盟組合からも、運動方針の討議のなかで、選挙結果に対する自省のコメントが相次いで出された。