100人未満規模の賃上げ額が昨年比542円増/フード連合大会

(2016年9月7日調査・解析部)

[労使]

食品メーカーなどの労組で構成するフード連合(10万6,000人)は5日、都内で定期大会を開き、2016春季生活闘争のまとめを確認した。食品関連産業の相対的地位の向上等を目指して臨んだ2016春闘は、100人未満規模で昨年比542円、0.23ポイントプラスの結果となった。まとめは、「中小労働者に対する格差是正を掲げた方針において大きな成果だ」などと評価している。

フード連合は2016春闘で、デフレからの脱却と経済の好循環実現、食品関連産業の相対的地位の向上を目指し、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」に向けて「オール・フォー・ワンで取り組む」方針を掲げ交渉に臨んだ。

要求は、すべての組合がまず賃金実態を把握し、その「水準の絶対値」に応じて、産別が2013年に策定した賃金ビジョンにおける「年齢別ミニマム基準」の確保を前提としたうえで、各組合の実情に応じて設定。① 定昇制度が確立していない組合は総額要求基準を「11,000円以上」 ② 定昇制度を確立しているが賃金ビジョンの「到達目標」に満たない組合はベア「2%(6,000円)以上」 ③ 賃金ビジョンの「目標水準」に満たない組合はベア「2%(6,000円)基準」 ④目標水準到達組合は「2%(6,000円)」を基準とした原資獲得――にそれぞれが取り組んだ。

また、昇給ルールが確立されていない非正規労働者については、賃金ビジョンの「企業内最低賃金の目標水準」を確保するとともに、「誰もが時給1,000円」の実現を目指しつつ、40円を目安に時給の引き上げを求めた。

賃上げは加重平均で6,475円、2.20%――「中小に対する格差是正で大きな成果」

6月30日時点の集計を見ると、全体の賃上げは加重平均で6,475円、2.20%と、昨年同時期の実績(6,328円、2.15%)を147円、0.05ポイント上回った。これを規模別で見ると、300人未満規模は4,543円、1.84%(昨年同時期4,450円、1.80%)で昨年対比93円、0.04ポイント増、100人未満規模では、4,316円、1.87%(同3,774円、1.64%)と、昨年対比542円、0.23ポイントの大幅なプラスとなっている。

さらに、ベア・賃金改善分が算出できる組合の集計結果を見ても、全体では1,368円(同1,320円)で昨年比48円増、300人未満では544円(同649円)と昨年105円のマイナスとなったが、100人未満規模は734円(同588円)で前年比146円増となった。

まとめは、「全体を見ても物価上昇局面による社会的な賃上げ機運が高まった2015春闘と比較しても遜色のない収拾結果であり、とりわけ規模が小さくなればなるほど、昨年と比較しても健闘している結果を叩き出していることは、『中小労働者』に対する格差是正を掲げた方針において、大きな成果だ」と評価している。

個人消費喚起のために継続的な賃金上昇を

年間一時金については、119組合が平均月数で5.17カ月を要求し、102組合が加重平均4.94カ月(156万7,960円)で収拾した。月数は前年より0.04カ月減少したものの、額では3万4,295円増となった。なお、収拾した組合の7割強にあたる75組合が、年間最低目標月数の4カ月以上を獲得している。

このほか、74組合が賃上げ要求した非正規労働者については、45組合が何らかの賃金改善を獲得。72組合が要求して33組合が獲得した2015春闘に比べ、改善組合が大きく増加した。

こうした状況を踏まえ、まとめは今後の課題について、「経済環境の足元がおぼつかないことに加えて、大幅な物価上昇が見込まれないなかで、『デフレから脱却と経済の好循環』を実現するために、『個人消費を喚起するための賃金上昇は継続的に必要』だ」と強調。2014春闘からブラッシュアップしてきた中小労組への支援や賃上げ要求根拠の考え方、闘争の進め方などについて、早期に取り組む必要性を訴えている。

合理的な理由のない処遇格差の解消を/松谷会長

松谷和重会長は冒頭のあいさつで、2016春闘について、「中小の取り組みに『より』結果を残すことができ、100人未満の組織にそれが著しく現れているのが今年の特徴だ」と説明。「まだ交渉中の単組もある」としながら「次年度に繋げる春闘だった」と評価した。

現在、厚生労働省で実現に向けた検討会が開かれている同一労働・同一賃金のあり方についても触れ、「これまでパートタイム労働法や労働契約法などの整備も進んできたが、依然として『パートだから』『契約社員だから』『再雇用だから』という雇用形態を理由に、賃金・一時金だけでなく、休暇や福利厚生、安全衛生面などで正社員と非正規労働者の間で格差がある」と指摘。「雇用形態だけを理由として異なる扱いをするのではなく、仕事の内容やその負担、責任や会社に対する貢献、これまでのキャリアなども総合的に考慮して、合理的な理由のない処遇格差を解消すべきだ」との考えを示した。