300人未満の賃金改善分は1,522円で全体平均上回る/JAMの回答集計

(2016年4月1日 調査・解析部)

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(宮本礼一会長、35万人)は3月31日、2016春闘の最新の回答状況について公表した。それによると、300人未満の単組が獲得した賃金改善額は全体平均を上回る1,522円で、加盟する金属労協の集中回答日(16日)を過ぎてから平均額が上昇する傾向にあり、組合本部で会見した宮本会長は「高く評価できる」とコメントした。

JAMの今春闘の交渉単位組合数は1,579組合。3月15日と16日を、全単組が回答引き出しを図る「統一回答指定日」に設定した。大手労組はこの期間を中心に回答を引き出すが、多くの中小労組の交渉は3月の中旬から4月以降に本格化し、地場中小を中心にさらにその後、数カ月にわたって交渉が継続する。

賃金改善分の全体平均は1,427円

3月30日現在の集計結果によると、交渉単位組合の70.1%にあたる1,107組合が要求を出しており、そのうち賃金改善分を要求した組合は交渉単位組合の64.9%にあたる718組合。賃金改善分の平均要求額は4,568円となっている。

回答を受けたのは623組合(交渉単位組合の39.5%)で、回答額の平均は5,334円。そのうち、賃金構造維持分を明示できる483組合について、賃金改善分を獲得したのは294組合(回答組合の47.2%)で、賃金改善分の平均は1,427円だった。

規模別に、300人未満の組合だけでみると、要求した556組合のうち、187組合が賃金改善分を引き出しており、その平均は1,522円と全体集計での平均額を上回った。

また、規模が小さい組合における改善分の平均額は3月の統一回答日以降、日を追うごとに低下するのが例年の傾向だが、30日時点での集計では、前回の集計(1,465円)を57円上回った。また、統一回答指定日直後の3月17日の集計(1,364円)と比べると、158円上回っている。これはベアが復活した2014年、15年の春闘では見られなかった展開だという。

JAMの安河内賢弘・労働政策委員長によると、自動車、電機での賃上げ相場となった1,500円を超える賃金改善分を獲得する組合が少なくなく、なかには2,500円の改善分を獲得する組合も出ているという。

「高く評価できる」(宮本会長)

JAMの宮本会長は、これらの300人未満の組合の賃金改善分の獲得状況について、「過年度物価上昇率が横ばいで上がってなく、実質GDPも伸びていないなかで、これだけの賃金改善分を確保できたことは、高く評価できる」とし、「元請けだけが賃上げするのではなく、グループ全体や川上から川下までの取引関係全体のなかで、適正な配分をするという気運が高まってきた」などと述べた。

安河内・労働政策委員長は「すばらしい結果。統一回答指定日の直後は、個人的には(同規模の賃金改善額は)1,000円を割ってしまうかと思った」と話し、正式な分析はこれから行うとしたうえで、その背景として「粘り強い単組の交渉」や「人手不足」、「中小も賃上げしないと経済の好循環が実現しないとの雰囲気が高まったこと」に加え、「労働界で中小企業の公正取引の運動を展開していることが経営者から評価されている面もあるのではないか」などと述べた。