下請け取引などの環境について意見交換/連合・全国中小企業団体中央会の懇談会

(2016年3月18日 調査・解析部)

[労使]

連合(神津里季生会長)と全国中小企業団体中央会(大村功作会長)は17日、都内で懇談会を開き、下請け取引などの環境について意見交換した。両組織の懇談会は初めてのこと。中小企業が賃上げを継続的に実施していくための環境整備や、取引環境の改善などを議論した。

月例賃金にこだわったことを、どう広がりにつなげていくかがカギ(神津会長)

冒頭、神津会長は「連合は結成して27年目。中小企業に働く人に関わる課題を大きな柱の一つとして取り組んでいるが、日本の労働組合の組織率は大企業に偏っている。しかし、連合運動の大半はむしろ組織に入っていない人たち、労働組合という形で労働条件の問題を含めカバーされていない人たちのために取り組んでいると言っても過言ではない」と説明した。

そのうえで春闘について、「今年はとりわけ『底上げ春闘』として、持続性、月例賃金、広がり、底上げをキーワードに取り組んできており、昨日(の集中回答日)も良い回答を引き出せた。具体的には1,500円が中心になっているが、いま物価がほとんど上がっていないなかで、これだけの回答を引き出したのは春闘の歴史のなかで初めてのこと。月例賃金にこだわったことを、今後、どう広がりにつなげていくかがカギになる」などと強調。「ともすると、親企業の回答を子会社やサプライチェーンにつながる関係会社は超えられない、といった悪しき常識があるが、それではだめだ。連合は企業経営者の人も含め、何かあったら是非、相談に乗りたい。中小企業団体中央会とは政策面含め、連携を深めていきたい」と呼びかけた。

大企業の収益が中小企業・小規模事業者にも届き、新たな設備投資や賃上げに(大村会長)

一方、大村会長は「最近のわが国の経済は、中国経済の減速懸念等による世界的な金融混乱のなかで不透明感が強まっており、平成29年4月の消費税増税も控えて先行きが見通せない現状にある。2月16日に日銀がマイナス金利を導入し、デフレ脱却による経済浮揚を目指してきたが、その効果は未知数だ」と指摘した。

全国中小企業団体中央会は中小企業のなかでも小規模事業者が多い団体として知られる。同会が毎月実施している景況調査では、今年1月の景況DIがマイナス28.7%と、3カ月連続で悪化している。こうした状況を踏まえ、大村会長は「経済の継続的な好循環を確立させるためには中小企業・小規模事業者の生産性向上を図っていくことが重要だが、まだ多くの中小企業、とりわけ小規模事業者からは景気回復が実感できないとの声が聞こえている」と現状を訴えた。そのうえで、「大企業の収益が中小企業・小規模事業者にも届き、新たな設備投資や賃上げなど経済の好循環に結びつけていくことが重要だ」として、「今後も設備投資を喚起・後押しするだけでなく、賃上げ等、さらに多くの中小企業・小規模事業者が前向きな経営に取り組むよう支援していきたい」などと強調した。

賃上げを実現できる環境整備や取引環境の改善等について議論

懇談会後のブリーフィングによると、意見交換では中小企業が賃上げを継続的に実施していくための環境整備や取引環境の改善、地域の活性化などについて意見交換がなされた。

具体的には、連合側からは、①日本の品質や生産性は非常に高いはずだが、それが正当に評価されていないのではないか②優越的地位の濫用による不当な値引き、価格転嫁、押しつけ販売がまだ散見される③日本の成長が持続的に続くことがポイントで、中小企業が賃上げできるような環境の整備が重要④(まず大手が決まって、その後に中小が「大手マイナスいくら」で決まっていく)賃上げの仕組みを変えて社会構造を変えていくべき――などの点を指摘したうえで、こうした課題の解決や社会的なコンセンサスづくりに一緒に取り組むことを求める声が上がったという。

これに対し、中央会側からは、大手の賃上げの影響がコストダウン圧力となって下請中小企業に来ていることや、原料価格のコストアップを転嫁できなかったり、利益の源泉である付加価値を正当に評価してもらえないことなどの問題を指摘する中小企業の声があることを報告。さらに、「(中小企業・小規模事業者の設備投資等を支援する)政府の『ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金』が新しいものをつくる気を起こさせているが、地方では人口減少が激しく、その対策がないとジリ貧になってしまう」「一所懸命、周知しているが、政府や経済団体の施策等が(中小企業・小規模事業者に)届いておらず、反省点になっている」などの意見が出されたという。