トヨタ1,500円、日産3,000円、本田1,100円の回答/自動車大手

(2016年3月18日 調査・解析部)

[労使]

大手自動車メーカーの労使交渉は16日に集中回答日を迎え、自動車総連傘下の組合に一斉に回答が示された。格差是正を重視し総連全体で取り組める要求として昨年のほぼ半額となる3,000円の賃金改善で望んだ結果、トヨタ自動車は前年実績を2,500円下回る1,500円を回答。日産自動車は組合要求どおりの3,000円を回答したが、そのほかのメーカーは1,100~1,500円の幅で回答が分散。一方、一時金は拡大戦術会議登録組合12組合中8組合が要求満額となった。

一時金は満額回答相次ぐ

今季交渉で経営側は、賃金コストが中長期にわたって経営基盤に大きな影響を与えることや中長期的な競争力低下への懸念、さらに足もとの業績や今後の見通しの不透明さを理由に、最終盤まで厳しい姿勢を崩さなかった。これを踏まえて、自動車総連は12日の中央闘争委員会で、「賃金改善分については、全ての単組は、自動車総連全体の底上げ・格差是正に最大限資する、結集度を高めた回答を獲得する」、「一時金については、要求水準への組合員の強い思いを踏まえ、『満額獲得』に向け最後まで押し込む」、「個別賃金、企業内最低賃金協定、非正規労働者に関する取り組み、総実労働時間についても、要求実現に向け全力で取り組む」ことを確認して、交渉を追い込んだ。

 

その結果、トヨタは8,800円(うち制度維持分7,300円、前年実績1万1,300円)、日産が平均賃金改定原資9,000円(前年実績1万1,000円)、本田技研はベア1,100円(同3,400円)などの回答が示された。このほかのメーカーにおける労使交渉でも1,500円を上限に1,100円までの幅で回答が分散して、それぞれ収束した。

一時金については、昨年獲得水準以上の回答が相次ぎ、要求満額組合は12中闘組合中8組合となった。

底上げに向けたヤマ場はこれから、非正規処遇改善は前進

今季交渉で自動車総連は関連企業や下請け関連との格差是正を主眼にすべての組合が3,000円以上の賃金改善を要求することをめざした。そして、「全ての働く者の賃金を引き上げ、全体の底上げを図っていくこと」が重要であるとの認識を全体で共有したうえで要求を構築。完成車メーカーが3,000円の賃金改善でそろうなか、自動車総連全体(1,067 単組)の要求動向を見ると、要求の平均はメーカーを上回る3,200円となっている。今後、この取り組みが実を結ぶかどうかは、これから交渉が本格化する車体・部品製造、販売・サービス、輸送などでの交渉・協議にかかっている。

また、初めてメーカー労組がそろって要求した、契約社員や期間工など非正規労働者に対する処遇改善でも、トヨタで60歳以降再雇用の一般組合員の交渉結果に連動した賃金・賞与、パートタイマーも一般組合員の交渉結果に連動した賃金・賞与(参考:時給10円の引き上げ)、シニア期間従業員(2、3年目)の日給150円の引き上げ、組合要求ではないものの一般期間従業員の日給150円引き上げを合意した。このほかのメーカーでも時給の改定、企業内最低賃金の引き上げ、正社員登用の促進などで要求どおりまたは進展ありの回答が示されている。

こうした動向を受け相原康伸会長は、「現在の回答引き出し状況が、これから本格交渉を迎える中堅・中小組合の交渉の土台となり、業種や企業規模にかかわらず、広く自動車産業内外に波及し、全体の底上げにつながっていくことを強く期待したい」との談話を発表した。