大手優位の回答状況からの脱却を/神津連合会長

(2016年3月18日 調査・解析部)

[労使]

連合(神津里季生会長)は16日、金属や小売、情報、交通・運輸などの回答引き出しを踏まえて記者会見を開いた。集中回答日には、金属大手などが3年連続で賃上げを獲得したほか、UAゼンセン、情報労連、航空連合などの傘下の組合も同日までに回答を引き出した。神津会長は、「長い間、大手優位という回答状況を脱却していこうと、答えを具体的に引き出していく意味で注目してきた。今日段階では、何とか結果に結びつけた」などと評価した。

3年連続でベアを引き出し、時給の引き上げも進んでいる

16日の会見時、須田孝・総合労働局長は、全体の状況について「2,000円から1,500円、あるいは1,000円といった形で、3年連続でベアを引き出した。正規・非正規の同時決着を掲げてきたが、現段階で時給制の賃上げ回答が満額回答も含めて10組合あるなど、時給の引き上げは相当進んでいる。時間短縮の取り組みも、それぞれの単組でやっている」などと説明した。

非正規関連の回答も昨年以上に多い(神津会長)

こうした状況について神津会長は、「各組合が持続性と月例賃金での引き上げにこだわり、例年にも増してギリギリまで交渉し、答えを引き出した。これまで長い間、大手優位という回答状況を脱却していこうと、連合全体、各構成組織が答えを具体的に引きだしていく意味で注目してきた。今日の段階では、何とか結果に結びつけたとみている」と評価した。

非正規労働者への成果配分についても、「非正規に傾斜を強めて交渉してきたことを結果に結び付けている回答内容も、昨年以上に多く見受けられる」と指摘。「『底上げ春闘』を貫徹させていくために、今日の集中回答日に得られた成果を土台にして広く展開していく。今日が改めて一つのスタートだ」と強調した。

また、連合は同日、集中回答日の結果を受けて、「示された回答内容を、続く中堅・中小労組はもとより、未組織も含めたすべての働く者の賃金引き上げに確実に波及させなければならない」などとする神津中央闘争委員長名の「2016春季生活闘争アピール」を発表した。

KDDIは非正規の月給5,457円の賃上げ

連合は記者会見終了後、回答速報をホームページにアップ。その後、更新を重ね、17日19時には4回目となる速報を掲載している。別記事で紹介する自動車、電機などの金属労協とUAゼンセン、情報労連に加盟するNTTグループ主要8社の組合以外の登録組合の主な回答内容(賃金カーブ維持分を除く賃上げ分)を共闘別にみていくと、インフラ・公益共闘は、通建連合の日本コムシス労組と協和エクシオ労組が、一律1,000円の賃上げを獲得。同連合のミライトグループ労働組合ミライト企業本部労組も平均1,000円相当の賃上げ回答を得ている。

KDDI労組は、正規労働者で総合職一律500円、総合職以外で一律1,000円の賃上げ回答を引きだしたほか、非正規労働者にも月給を平均5,457円引き上げる回答を獲得した。

ANAグループ労組で高額回答の引き出し目立つ

交通・運輸共闘では、航空連合傘下の組合の早期回答引き出しの動きが目立った。JAL労組、JALグランドサービス労組、JALエンジニアリング労組、沖縄エアサポートサービス労組が3月11日に1,000円の回答を引きだしたほか、14日にはANA(全日本空輸)労組が1,500円、ANAベースメンテナンステクニクス、ANAラインメンテナンステクニクス、ANAエンジンメンテナンステクニクス、ANAコンポーネントテクニクス、全日空モーターサービス、ANAケータリングサービス、ANAエアーサポートサービス、ANE成田エアーサポートサービスの各労組が3,000円の賃上げ回答を獲得。ANAウィングスも3,500円の賃上げを得た。そのほか、ANAケータリングサービス労組(賃上げ分2,500円)、ANAエアーサポートサービス(同1,500円)、ANA成田エアサポートサービス(同1,000円)も賃上げ回答を受けている。

また、ANAグループ関連では、非正規労働者の賃金改善の動きも見られる。全日本空輸労組は時給制契約社員の時給を15円引き上げたほか、月給制の雇用延長嘱託社員と継続雇用嘱託社員の月給を800円、部分就労社員の月給を1,125円引き上げる回答を得た。ANAコンポーネントテクニクス労組も契約社員の時給20円の引き上げを獲得。同労組は月給制の基幹契約社員と嘱託社員の賃上げ(ともに月給3,000円)も実現させている。

航空連合傘下ではこれ以外にも、グランドシステム沖縄の労組が2月25日に総合職1,000円、一般職6,000円の回答を得たほか、時給勤務のパートナー職の時給を20円引き上げた。

交通労連では、3月9日に山形交通労組に1,000円の賃上げ回答が出されたほか、16日には三八五労組に1,448円の回答が示されている。

JR関連では、JR連合傘下のJR西労組とJR東海ユニオンが1,000円の賃上げ回答を獲得。JR西労組は、非正規社員(契約、シニア)の時間給についても、5円引き上げた。

明治、キリンビール、レンゴーが2,000円、JTは4,000円の賃上げ回答

化学・食品・製造等共闘では、フード連合の南九州畜産労組がベア6,758円、明治グループ労連明治労組とキリン労連キリンビール労組がともにベア2,000円で収束。全たばこJT労組もベア4,000円で収束した。日本製粉労組も賃金改善原資3,000円の回答を得て収束している。

紙パ連合は、レンゴー労組が賃上げ分2,000円、北越紀州製紙労組が同500円の回答を引き出した。セラミックス連合でも、TOTO労組が2.0%、黒崎播磨が500円の賃上げ分を獲得している。