トヨタ労組など大手自動車メーカーは3,000円の改善要求/自動車総連傘下の要求動向

(2016年2月19日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連(相原康伸会長、76万人)に加盟する大手自動車メーカー11労組が17日、今季労使交渉の要求書を、一斉に会社側に提出した。賃金改善分などの賃上げ要求額は、トヨタ労組をはじめすべての大手労組が3,000円で揃った。一時金では、トヨタ労組が年間7.1カ月と7カ月台の要求、富士重工労組などが6カ月台の要求となっている。

自動車総連では、トヨタや日産など大手自動車メーカーの11労組と、部品メーカーの総連加盟労組でつくる部品労連を代表する1労組の計12労組で「拡大戦術会議登録組合」をつくっている。部品労連からは昨年に引き続き日本特殊陶業労組が登録されている。拡大戦術会議登録組合は、交渉力の強化と相乗効果を狙い、要求提出日と交渉日、回答日を揃えて会社側との交渉に臨む。今後、拡大戦術会議登録組合は各週の水曜日に交渉を行い、金属労協(JCM)の集中回答日である3月16日に一斉に回答を引き出す。

トヨタ労組の要求は賃金制度維持分7,300円含む1万300円

拡大戦術会議登録組合の要求内容をみていくと、賃金では、平均賃上げ方式でトヨタが「1万300円(内、賃金制度維持分7,300円)」、日産が「平均賃金改定原資(9,000円)」、本田技研が「3,000円」(賃上げ分)、マツダが「賃金引き上げ3,000円」、三菱自工が「賃金改善分3,000円」など、表記の仕方は異なるものの、12組合すべてが3,000円の引き上げを要求した。

主要組合の一時金要求月数は平均6.08カ月、昨年を0.15カ月上回る

一時金(年間)では、トヨタが唯一、7カ月台で7.1カ月(昨年要求は6.8カ月)。6カ月台は、富士重工「5.0+1.0+0.5カ月」(計6.5カ月、昨年要求は計6.0カ月)いすゞ6.2カ月(同6.0カ月)、日野6.0カ月(同6.0カ月)、ヤマハ発動機6.1カ月(同5.8カ月)、日本特殊陶業「4.0+2.0+0.8カ月」(計6.8カ月、同計6.7カ月)の5労組となっており、このほかの労組は、日産が5.9カ月(同5.7カ月)、本田技研が「5.0+0.8カ月」(計5.8カ月、同計5.9カ月)、マツダが5.7カ月(同5.5カ月)、スズキが5.8カ月(同5.8カ月)などとなっている。

12組合の要求月数を平均にすると6.08カ月で、昨年を0.15カ月上回る。大手メーカー11労組だけでみると、昨年比0.15カ月増の6.01カ月となっている。

自動車総連によると、今回の各登録組合の要求月数を昨年の要求月数と比べると、昨年を上回ったのが7組合、同水準が4組合、下回ったのが1組合だという。また、昨年妥結月数との比較では、上回ったのが8組合、同水準が3組合、下回ったのが1組合だとしている。

格差是正と底上げに向けての土台づくりができた/相原会長

同日、拡大戦術会議登録組合の要求提出後に本部で会見した相原会長は、昨年は自動車総連が6,000円以上を賃上げ要求基準に設定するなか、6,000円を超える引き上げ額を要求した組合が全体の1割程度だったが、「今回、3,000円を超える額を要求する組合は1割を上回るとみている」と報告し、「格差是正と底上げに向けての土台づくりができた。期初に想定していた形で要求・交渉に入ることができた」と評価した。

また、今後の交渉に向け、「デフレ脱却を合い言葉に取り組みを推進したい。ただ、デフレ脱却は経済好循環実現に向けた手段であり、豊かな労働市場づくりに近づいていけるような運動をしていきたい。賃上げによってデフレを脱却するとともに、デフレに戻させないようにするための交渉を展開する」などと抱負を述べた。

また、相原会長は、賃上げの要求額が昨年から下がっているなかでの今回の交渉について、「気をつけなければいけないのは、昨年の要求額との差に揃う形で回答も下がってしまうことで、これは何としても避けなければならない」と強調。「今日、足並みを揃えて要求提出することができた。できる限り隊列を崩さないで集中回答日に向けて交渉を追い上げていきたい」と語った。

産業内で生み出した付加価値を循環させる「WIN-WIN 最適循環運動」を展開

自動車総連では今回の春闘で、自動車産業の「現場力の底上げ」を図るとして、産業内で生み出した付加価値を末端のサプライヤーや販売等も含めた産業のバリューチェーンに循環させる「WIN-WIN 最適循環運動」を展開していくことを打ち出した。この運動の狙いや考え方を経営側にも理解してもらうため、すでに日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、自動車販売店協会連合会には、それぞれとの「産業労使会議」で説明し、意見交換を行った。1月25日に開かれた部品工業会との会議では、同運動について共同で推進していくことで合意したという。

自動車総連は3月に日本陸送協会と会議をもつ予定。総連加盟の各グループ労連は、労連が主催する労使懇談会などで経営者への理解活動を展開するとしている。

相原会長は「産業レベルではこの運動を展開する問題意識を労使で共有化できた」とし、「具体的な運動の柱出しをこの1カ月で進め、3月16日の回答日には、何らかの評価測定ができるような形をとりたい」と話した。

拡大戦術会議登録組合の要求提出状況/自動車総連HP新しいウィンドウ