水準回復分を含めて賃上げ要求基準を4%に設定/自治労の2016春闘方針

(2016年2月3日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体の職員などでつくる自治労(川本淳委員長、約81万人)は1月28、29の両日、都内で中央委員会を開催し、2016春闘方針を決定した。国家公務員の「給与制度の総合的見直し」に準じる形で地方自治体職員の月例給も俸給が2%引き下げられていることを踏まえ、同分の回復分に連合方針の2%程度を加えた、4%程度を賃上げ要求基準に掲げた。

公務員賃金を巡るこの間の情勢を振り返ると、人事院が昨年8月、国家公務員の給与について、月例給・一時金ともに2年連続で引き上げる勧告を実施。例年はそれを受けた給与法の改正が年内の国会で行われるが、今回は、秋の臨時国会が見送られたため、給与法の改正が年明けにずれ込んだ。政府は1月4日に改正案を閣議決定。1月20日に改正法は成立した。これにより、国家公務員の月例給・一時金は昨年4月に遡及して引き上げられることになる。

地方の状況に目を移すと、県人事委員会勧告は、月例給については全都道府県で引き上げとなり、一時金は据え置きとなった高知を除いて引き上げとなった。本俸を2%引き下げて、地域手当の支給率を再設定した国の「給与制度の総合的見直し」に準じた見直しについては、2015年4月から実施の自治体に加えて、2014年に勧告が見送られた自治体においても勧告がなされた。

自治労の2015確定闘争の状況をみると、要求書の提出は1,207単組(79.7%)で、労使交渉実施が1,016単組(67.1%)。昨年11月16日の週をヤマ場に取り組んだものの、国の給与法改正の遅れの影響をうけ、年内に妥結に至ったのが486単組(全単組比率で32.1%)、継続協議が344単組(同22.7%)となっている。妥結したなかで、年内改定を獲得した単組は61単組で、多くの組合が、国の給与法改正の年越しの影響をうけ、「国の動向を踏まえ改定する」との回答にとどまる結果となった。

人勧期・確定期まで見据えた賃金改善の取り組みを進める

2016春闘方針は、連合や連合内の公務員連絡会の方針を踏まえ、「実質賃金の水準改善にこだわって戦略的に取り組みを進める」とし、「2015年給与制度の総合的見直しによる2%の回復分に、連合の掲げる『底上げ・底支え』『格差是正』分の2%程度を加えた、4%程度を賃上げ要求基準として踏まえ、人勧期・確定期までを見据えた賃金改善の取り組みを進める」と明記。非正規労働者については「時給1,000円以上の確保をはかる」と掲げた。

春闘における重点課題として、 (1) 公務員賃金の改善と改正地方公務員法に対する取り組み、 (2) 地方財政の確立と公契約条例制定に向けた取り組み、 (3) 格差是正と公正なワークルールを確立する取り組み――の3本を設定。賃金の改善では、春闘を1年の賃金・労働条件闘争のスタートであることを労使確認し、「要求-交渉-妥結(協約・書面協定)」のサイクルの定着を図るとしている。また、年間を通じた基本的な労使関係のルールを確立することを目的として、全単組で「労使関係ルールに関する基本要求書」を提出する。

地域間格差の是正と自治体労働者の生活保障に即した賃金引き上げを/川本委員長

2015確定闘争については2月1日~9日を交渉ゾーン、2月10日を統一行動日に設定。これを2016春闘と連動させ、4%程度を賃上げ要求基準を踏まえながら今年の人勧期・確定期までを見据えて賃金改善の取り組みを進めるとしている。なお、2016春闘での要求書は、自治労が作成した「自治体単組の要求モデル」を参考にして組み立てる。同モデルによると、到達目標は30歳で24万3,599円、35歳が29万5,740円、40歳が34万5,348円となっている。

挨拶した川本委員長は「この間の給与制度の見直しで、都市部と地方部の自治体労働者の賃金格差は拡大してきた。全国の自治体で同様のサービスを提供している実態等も踏まえ、自治労は昨年の定期大会で、地域間格差の是正および自治体労働者の生活保障にも即した引き上げを求めていく方針を決定してきた。地方公務員を取り巻く情勢は依然として厳しく、地域間格差の是正を図っていくことは、そう簡単な課題ではないが、節々に統一闘争をしっかりと配置し、地域間の連携を図りながら、粘り強く、戦略的に取り組みを進めたい」と強調した。

非正規労働者10万人の組織化を

公契約条例制定の取り組みでは、これまで27の自治体で条例が制定されている(最も新しいのは兵庫県加東市、2015年6月)。本部は引き続き、連合などと連携して制定に取り組むほか、県本部や単組は春闘要求書提出時に制定を自治体当局に求めるとしている。

格差是正と公正なワークルールを確立する取り組みでは、非正規労働者や臨時・非常勤職員等について、年度末の雇い止めや雇用上限撤廃などの取り組みを強化。処遇では、2016春闘で掲げる自治体最低賃金(月額15万4,300円以上、日給7,720円以上、時給1,000円以上)の確保を図るとしている。また、自治労では非正規労働者を10万人組織化する方針を掲げているが、2月~5月を仲間づくり行動月間に設定するなどして、意見交換・交流の場を設けるとしている。