神津会長、来賓の日銀総裁ともに、賃上げの必要性を強調/連合の新年交歓会

(2016年1月6日 調査・解析部)

[労使]

連合の新年交歓会が5日、都内で開かれた。挨拶した神津里季生会長は、これからスタートする2016年春季生活闘争に向け、月例賃金での賃上げの必要性を強調。日本銀行の総裁として初めて来賓挨拶した黒田東彦総裁も賃上げについて言及し、「賃金の上昇は日本経済の持続的な成長の観点から不可欠だ」などと述べた。

「すべての企業で、月例賃金での賃上げを」(神津会長)

神津会長はあいさつで、今季闘争について、官民対話の内容や最近の経団連会長の発言内容に触れたうえで、「儲かっている企業が一時金で対応するだけでは、経済の好循環につながらない」と指摘。「政労使がそれぞれ責任を持って、共通の認識を持たないとデフレ脱却は夢のまた夢になる」としたうえで、「この2年間、一定の成果をあげてきたが、まだまだ不十分だ。すべての企業で、月例賃金での賃上げがなければならない」と月例賃金での賃上げの必要性を強調した。

さらに、来賓の黒田日銀総裁を意識して、「デフレ脱却を日銀だけに任せておけばいいということではない。世の中全体での力合わせがなければならない」と述べるとともに、「経営者のすべてのみなさんには、このことを他人事と考えないでいただきたい。石橋を叩いて、結局、渡るべき橋を渡らないということにならないでほしい」と経営側に注文をつけた。

「賃金の上昇は持続的な成長に不可欠」(黒田総裁)

来賓として、塩崎恭久厚労相、黒田日銀総裁、経団連の工藤泰三副会長(日本郵船会長)、民主党の岡田克也代表が順にあいさつした。

塩崎大臣は、今春闘に向けて「(賃上げの)内容をどう決めるのかは経営者のみなさまのご判断だが、われわれは経済再生最優先、そして、雇用拡大、賃上げでずっと連合の味方をしてきたつもりだ。今年の3巡目の賃上げについても安倍総理が要請しており、最低賃金もずっと上げてきて、これから3%ずつ上げて1,000円を目指すことになっている」などと発言した。また、今通常国会で審議することが予定される法案のうち労働基準法の改正について「みなさま方のご関心も高いところであり、しっかりと連合のみなさまのご意見を承りながら成立を期していきたい」と述べた。

黒田総裁は2年連続の出席。昨年はあいさつをしなかったが、今回総裁として初めてあいさつに臨んだ。「日本銀行は2%の物価安定の目標の早期実現を目指し、大胆な金融緩和を行っている。2%の物価上昇は必ず実現する」と強調。「日本経済がデフレという長期の底から抜け出し、持続的に成長し、子どもや孫さらにその先の世代まで生活水準を落とすことなく暮らしていけるためには物価上昇が必要。しかし、私たちは、物価がただ上がればよいと考えているわけではない」としたうえで、「そもそも2%の物価上昇は、それに見合った賃金の上昇がなければ、持続的可能ではない。歴史的にみても物価と賃金は、連動しており、賃金の上昇は日本経済の持続的な成長の観点から不可欠だ」と持論を展開した。

経団連の工藤副会長は、今後、人口が減少していくなかでは、女性や高齢者の活躍とともに、生産性の向上が喫緊の課題だと述べたうえで、「その延長線上に賃金アップがある」と強調。また、「連合とは課題を共有しているし、課題を一緒に解決していくことが重要だ。けっして、企業と組合は対立する関係にはなく、日本経済の競争の源泉だ」と述べた。

なお、交歓会の直前に、神津会長と逢見事務局長が年頭会見した。神津会長は、「賃金の底上げを何とか実現したい」と強調し、47都道府県すべての地域でのフォーラムの開催により、「社会により開かれた春闘」を展開したいなどと語った。