7割の単組が賃金改善分を獲得/自動車総連の定期大会

(2015年9月9日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連(相原康伸会長、約76万人)は3、4の両日、千葉県千葉市で定期大会を開催し、2015年総合生活改善の取り組み総括などを確認した。2015春闘で賃金改善分を獲得した単組は全体の7割に達し、獲得額も平均で1,625円と昨年を上回った。2016年の取り組みに向け、相原会長は「総連全体の底上げを通じ、デフレ脱却と持続的成長への道筋に繋がり得る要求基準と取り組み方について様々な角度から検討を深めたい」と述べた。

15年春の取り組みを総括、改善分の平均額は1,625円

2015年総合生活改善の取り組みの最終的な要求・回答状況(8月31日午前9時現在)をみると、賃金については全体で1,113単組が要求し、うち、1,084単組が賃金改善の要求を盛り込んだ。賃金改善分の要求額の単純平均は5,881円で、業種別にみると、【メーカー】6,000円、【車体・部品】5,668円、【販売】6,077円、【輸送】5,317円、【一般】5,635円となっている。

要求したすべての単組で交渉は終わっており、賃金改善分を獲得した単組数は804(獲得率:約72%)で、賃金改善分獲得額の単純平均は1,625円。業種別では、【メーカー】3,000円、【車体・部品】1,435円、【販売】1,668円、【輸送】1,839円、【一般】2,041円という結果となった。

賃金改善分獲得額について、企業規模別でみると、【3,000人】2,653円、【1,000~2,999人】1,551円、【500~999人】1,627円、【300~499人】1,531円、【300人未満】1,584円となっている。

昨年と比べると、賃金改善分獲得単組数は728(獲得率:約66%)で、獲得金額は1,161円だったことから、単組数、金額ともに昨年を上回っている。賃金獲得金額は、業種別、規模別双方とも、すべての区分で昨年比プラスとなっている。

一時金については全体で1,086単組が要求し、要求月数の平均は4.73カ月(昨年比0.02カ月増)。すべての組合が回答をうけ、回答月数の平均は4.32カ月(昨年比0.02カ月減)だった。

非正規労働者2万3,000人について処遇改善に取り組む

自動車総連は、賃金の取り組みでは個別ポイントでの絶対水準要求にも力点を置いているが、今年の取り組みで平均方式での賃上げ額と並列要求できた組合は全体の3割にとどまった。企業内最低賃金協定の取り組みでは、協定締結組合数がさらに増加。闘争方針では締結額の要求基準を「15万6,000円以上」としていたが、締結できた単組の締結額を平均すると15万6,300円となった。

非正規労働者の処遇改善では、自動車総連は今回はじめて、直接雇用の非正規労働者の賃金について原則として賃金改善分を設定する方針を掲げた。総連内では現在、1,085単組が直接雇用の非正規労働者を抱えているが、このうち賃金・一時金などの処遇改善に取り組んだのは509単組(取り組み率:約47%)だった。自動車総連の冨田珠代・副事務局長は大会のなかで、取り組んだ単組における取り組み対象の非正規労働者数は、組合員でない労働者も含めて2万3,000人に及ぶとして、「社会的な役割は一定程度果たすことができた」と総括した。

反省材料は「規模間格差の拡大傾向」(相原会長)

同日、大会開始直前に会場で会見した相原会長は、今春闘での賃金改善分の平均額が1,625円となり、獲得組合数が7割に達した最終結果について、リーマン・ショック前の比較的、景気が改善した2006~08年のなかで最も獲得率が高かった08年でも54%だったと説明し、「7割の獲得率となったことは大きな前進だ」と強調した。

ただ、その一方で、2年連続で改善分を獲得できなかった単組が215組合にのぼったことや、改善分の獲得額の昨年対比を規模別にみると、「3,000人以上」は約1,000円増となっているのに対し、それ以外の規模では500円程度の増加にとどまっていることをあげ、「規模間でみると格差が開いた。この点は反省材料だ」とコメントするとともに、「これらの点は2016年の取り組みで何とかしないといけない」と話した。

相原会長は、大会での挨拶では2015年の取り組みについて、「すべての単組が様々な視点を総合勘案し、6,000円以上の賃金改善分を設定、直接雇用の非正規労働者についても、原則、賃金改善を設定するとの要求基準とした。ひとかたまりとなった金額を掲げ、意義ある起点から確固たる2歩目を踏み出すことができた一方、中堅・中小労組の取り組みでは、懸命な交渉の結果、14年の賃上げ回答実績からの着実な積み上げを獲得した一方で、産業内の格差は拡大傾向にある現実を真摯に受け止めなければならない」と指摘。

2016年の取り組みの検討に向け、「不確実性の高まる世界経済、物価動向など日本経済の状況、人手不足の強まる労働需給、業種実態を含む産業情勢など、諸情勢に対する共通認識づくりがまずは重要だ」と述べたうえで、「要求基準の策定にあたっては2014年および15年の要求基準に盛り込んだこだわりどころや、残された課題を踏まえつつ、自動車総連全体の底上げを通じ、デフレ脱却と持続的成長への道筋に繋がり得る要求基準と取り組み方について、連合・金属労協の論議と並行し、様々な角度から検討を深めたい」と述べた。

自動車総連では、昨年の定期大会で2年にわたる運動方針を決定していることから、今回の大会では、前半期の活動を報告し、確認した。

また、役員の改選年が、自動車総連が偶数年、連合が奇数年となっており(ともに任期は1期2年)、現行では連合とズレが生じていることから、改選年を合わせるために2016年に行う改選の役員任期を1年とする規約改定を行った。

大会ではこのほか、来年行われる参議院議員選挙の組織内候補の必勝決議を行った。