2015年度運動方針と2016春闘の基本方針を確認/生保労連定期大会
(2015年8月28日 調査・解析部)
生保労連(浜田一郎委員長、23万人)は21日、都内で定期大会を開き、2015年度の運動方針を決めた。併せて、2016春闘の基本的な考え方や取り組み課題を含めた「総合生活改善闘争・基本方針」も確認している。
新運動方針は、 (1)生保産業の社会的使命の達成 (2)総合的な労働条件の改善・向上 (3)組織の強化・拡大 (4)生保産業と営業職員の社会的理解の拡大――の4本で構成している。
産業政策の推進や総合的な労働条件の改善・向上を
「生保産業の社会的使命の達成」については、「産別組合としての責任ある行動が一層求められるなかで、生活保障産業の労働組合である生保労連に求められる社会的役割はさらに高まっている」と指摘したうえで、「健全な産業づくりや生保産業の産業別労働組合ならではの活動・政策提言等を通じて、社会に一層貢献し、生保産業の社会的使命の達成を図る」と強調している。
具体的には、生命保険に関する規制改革への対応、保険商品・サービスのあり方の検討、販売ルールの見直し・制定への対応、公正な競争条件確保の取り組みなど、産業政策の推進やチェック・提言機能の強化が主な柱となっている。
「総合的な労働条件の改善・向上」は、「組合員の意識や取り巻く環境が変化していくなかで、安心と働きがいの持てる職場・ルールをつくることが一層求められている」との認識のもとで、「統一闘争を通じた共闘効果・相場形成の発揮、各組合の取り組みに資する情報交換・情報提供などを通じて、組合員の総合的な労働条件の改善・向上をはかる」とする。とくに、営業職員の魅力ある働き方と安心と働きがいのもてる労働条件を実現させる観点で取り組みを進める考えだ。
共感の持てる組織づくりと組合活動の「見える化」も
「組織の強化・拡大」に関しては、「各組合が抱える課題の多様化や組合員の意識の変化が進むなかで、各組合・組合員のニーズを踏まえた、共感の持てる組織づくりが一層重要となっている」なか、「各組合・組合員が抱える課題へのアドバイス機能の強化、組合活動への参加の促進、政策実現に向けたネットワークの強化などを通じて、働く仲間や国民各層との絆・つながりを深め、組織の強化、拡大を図る」構え。産別として、加盟組合との日常的な連携や雇用・組織問題を抱える組合への支援を強化するとともに、ユニオンリーダーの養成や組合活動への女性参画の推進、未組織労働者の組織化などに力を入れる。また、連合運動に積極的に参画し、組合活動の「見える化」を進める。
「生保産業と営業職員の社会的理解の拡大」では、「生保産業と営業職員が果たしている役割を対外的に正しく伝え、その社会的イメージを向上させることは、今後も生保産業が発展し、働く者の働きがい・生きがいを向上させていくうえで必要不可欠となっている」として、広報・PR活動の強化や、地域社会への貢献などを掲げている。
かんぽ生命の加入限度額引き上げに「断固反対」する
浜田委員長はあいさつで、「この1年間の出来事のなかで、とくに印象に残ったもの」の一つとして、産業政策課題について言及した。
まず、郵政民営化について、「自民党による『日本郵政グループ3社の株式上場における郵政事業のあり方に関する提言』が公表され、そのなかでは『かんぽ生命の加入限度額』の引き上げについて示された」ことを指摘。生保労連として、郵政民営化委員会への意見提出や関係者への働きかけ、9,370通の「かんぽ生命の加入限度額引き上げに『断固反対』する職場決議」が提出されていることなどを説明したうえで、「予断を許さない厳しい状況だが、今後も国政・行政に対し、われわれの主張を強く伝える」と強調した。
なお、今大会では、「郵政民営化が『民業圧迫』につながることに『断固反対』する特別決議を採択している。
また、浜田委員長は、「平成26年度同様、27年度税制改正大綱においても生保関連税制に関する記載がなかった」ことについて、「税制に関する議論全体としては課税強化の観点で見直しが進んでいるとの認識」のなかで、「現行制度を維持できたことは一定の評価をしている」と述べた。
2016春闘でも働きがい・生きがいの向上につながる取り組みを
さらに、統一要求基準として18年ぶりに「収入の向上」を掲げた2015春闘にも触れ、「賃金関係では、各組合の粘り強い交渉の結果、営業職員関係では『収入の向上』につながる成果を獲得するとともに、内勤職員関係では多くの組合で『年間総収入の向上』を図ることができた」「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けても、各組合で制度面・運用面ともに着実な前進が図られた」などと評価。「2016春闘でも、働きがい・生きがいの向上につながる総合的な成果が得られるよう取り組んでいきたい」と訴えた。
生保労連の春闘は、営業職員については出来高給体系を基本とする賃金制度・体系を踏まえ、賃金改善を幅広い概念で捉えている。2015春闘では、「営業職員の賃金は比例給要素が大きく、内勤職員の賃金体系とは異なるものの、今般の物価動向が営業活動や営業職員の生活に与える影響などを踏まえ、実質的な収入の向上をはかる」ことをめざした。
10組合が取り組んだ結果、「新契約活動に対する労働評価」(8組合)、「保有・保全活動に対する労働評価」(5組合)、「臨時・特別措置の実施」(7組合)、「施策関係」(6組合)などの回答を引き出した。
生保労連では、「実質的な収入の向上につながる幅広い内容の回答を引き出すことができた」と評価。「今後も賃金制度全般にわたる幅広かつ実効性ある取り組みを推進していく必要がある」などとしている。
一方、内勤職員は、「業界情勢や一般情勢、労働界の動向、組合員の期待感などを踏まえつつ、基準策定に向けた検討を行った結果、統一して月例給与の『賃金水準改善要求』に取り組む状況にないとの認識を確認し、幅広い検討が可能となる『年間総収入の向上』をめざす」こととした。
すべての組合がこの趣旨に沿った要求を掲げ、月例給与(5組合)、臨時給与(12組合)、年収制(3組合)に取り組んだ結果、「年間総収入の向上」になる多くの回答が引き出せたという。生保労連では今後、「賃金改善」の考え方・取り組み方法、要求根拠について、経済環境・社会環境の変化を踏まえた理論補強を進めるとともに、各社の業績や経営課題を踏まえた効果的な取り組み方法について、幅広く検討を行う考えを示している。
大会では、2016春闘の基本的な考え方や取り組み課題を含めた「総合生活改善闘争・基本方針」も確認した。2016春闘では、統一取り組み課題として、 (1)経営の健全性確保 (2)営業職員体制の発展・強化【営業職員関係】 (3)賃金関係(営業支援策の充実【営業職員関係】、賃金改善、人事・賃金制度関係) (4)ワーク・ライフ・バランスの実現 (5)パート・有期契約労働者の処遇改善【内勤職員関係】――を設定する。