政策制度要求提案力の進化や化学・エネルギー労組の結集をめざす方針を確認/JEC連合

(2015年7月29日 調査・解析部)

[労使]

化学・エネルギー関連産業の組合でつくるJEC連合(約11万4,000人、永芳栄始会長)は7月23、24の両日、京都市で第14回定期大会を開き、2015春季生活闘争のまとめを行うとともに、政策制度要求提案力の進化や化学・エネルギーに関連する労組の結集をめざすことなどを柱とする2016年度運動方針を決めた。春闘まとめは、「賃上げの動きが拡大した」と評価したうえで、「2016年には賃上げの動きがあまねくいきわたるように取り組む」などとしている。

賃上げの流れを引き続き、来年につなげていく(永芳会長)

冒頭、あいさつした永芳会長は、今春闘の結果について、「昨年に続く政労使合意により、本年もまた賃上げに向けた空気感が醸成された」などと指摘しながらも、「もちろん、その成果は、それぞれの労使による真摯な交渉プロセスを経て実現されたものだ」と評価した。そのうえで、「依然として消費税増税による物価上昇には届かず、実質賃金は25カ月連続でマイナスとなり、そのギャップは縮まっていない」と述べ、「産業全体を取り巻く情勢や各企業業績を鑑みれば、それぞれに厳しい部分はあったが、声をあげねば何も始まらないのも事実。引き続き、この賃上げの流れを来年につなげていかねばならない」と強調した。

一方、労働法制の動きに関しては、「労働者派遣法は、専門26業種は撤廃され、3年ルールも実質廃止されたことにより、望まぬ派遣労働を渉外にわたり強いられることも法的に可能になってしまった。労働基準法は『高度プロフェッショナル制度』という、一定の年収要件を満たした労働者は、労働時間、休日・深夜の割増賃金等の規定を適用除外とし、いくら残業をしても賃金が支払われないという、過重労働を助長し過労死といったさらなる労働災害を招くような法案が成立しようとしている」などと批判。「このような暴挙には断固反対の立場を貫き闘い続けねばならない」と訴えた。

戦後70周年の年をむかえることについても触れ、「平和で安定した社会があってこそ、安心して働き、生活していける。このことを守るためにも、労働運動はその先頭に立つ必要がある」などと指摘。「労働組合はすべての労働者を包摂し、その雇用と生活を守り、格差や貧困を解消し、社会正義を追及する、まさに『人間の安全保障』の担い手であるといっても過言ではなく、だからこそ団結する権利が保障されている」「労働組合が求める『平和』とは、武力を背景とするものではなく、対話や相互理解によって実現していくものであることも再認識する必要がある」などと説明したうえで、「働くものが手を携えてその役割を果たしていくことが今求められている。社会の課題を他人事ではなく自らの問題として共有し、その積み重ねによって大きな運動のうねりを作り上げていこう」と呼びかけた。

賃上げ額6,581円(2.08%)、年間一時金は5.18カ月に

今春の賃上げ交渉の回答状況(6月3日現在)をみると、昨年同時期より8組合多い207組合が回答を引き出している。そのうち、108組合がベースアップなどの賃上げ分を獲得しており、こちらは前年同期より37組合増えている。回答額は、定期昇給分を含めた加重平均で6,581円(2.08%)、賃上げ・ベア額は同1,467円で、それぞれ前年を176円、120円上回った。年間一時金は、加重平均で161万651円(5.18カ月)となり、昨年(163万7,794円、5.16カ月)とほぼ同水準だった。

こうした回答状況について、まとめは、「2014年で春闘が再起動、2015年には賃上げの動きが拡大した」と評価したうえで、「2016年には賃上げの動きがあまねくいきわたるように取り組まねばならない」と強調。「賃上げによってこそ企業業績が向上する、という考え方を広く定着させていくことが大切。人への投資こそ、付加価値向上に向けた正しい道だという認識を労使が共有すべきだ」などと問題提起している。

化学・エネルギー労組や共通項の多い個別産別との連携を

2016年度の運動方針は、産業政策を中心とする政策制度要求の提案力の進化や、産業別組織の強化・拡大の推進などが柱になっている。

政策制度活動では、産業政策活動の推進と各地域での諸課題等に対応していくため、友好関係にある国会議員で構成する「JEC連合政策フォーラム」を拡充して活動を強化する考え。業種別部会や地連、他産別との連携も図っていくとしている。

産業別組織の強化・拡大については、化学・エネルギーに関連する労組の結集をめざすなかでネットワークづくりに主体的に取り組むこととし、国際産業別組織の日本組織であるインダストリオール・JAF(インダストリオール日本化学エネルギー労協)加盟産別や、広がりのある産業として共通項の多い個別産別との連携をはかる。

具体的には、ゴム連合、紙パ連合、セラミックス連合、化学総連、JEC連合の5産別で構成する情報交換連絡会の枠組みのなかで、産業政策を中心に共同での要請活動に取り組むほか、「連合の化学・食品・製造グループにおいて同規模であり、運動の基調や活動に共通点の多い」フード連合と、より広い連携に向けた可能性を探る。また、インダストリオール・JAFの産別括りを中心に、共通して取り組むことが可能な事項(機能)について連携できるよう模索していくとしている。

なお、役員選挙では、永芳会長を再任。黒田正和事務局長は退任し、新事務局長に吉田直浩氏(日本化薬)が選ばれた。