向こう2年間の新運動方針を決定/JP労組定期全国大会

(2015年6月23日 調査・解析部)

[労使]

日本最大の単一労組である日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員約24万人)は17~19日、石川県金沢市で定期全国大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。2015年度半ば以降の株式上場の準備が進められるなか、日本郵政グループの新中期経営計画への対応などを重要課題に掲げた。今年4月から本格実施されている「新たな人事・給与制度」については、導入状況をチェックするとともに、必要な見直しに取り組む。組織拡大では、「安定的に25万人組織を維持しつつ、さらに30万人組織に向けて取り組む」としている。

労組としてのチェック機能を最大限に発揮していく

日本郵政グループは、昨年2月に公表した中期経営計画の内容を、株式上場スキームや低金利の継続等の経営環境の変化を踏まえて見直し、今年4月1日、2015~2017年度の3年間を展望した「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」(以下、新中期経営計画)を策定。将来にわたって「トータル生活サポート企業」として発展していくことなどを打ち出した。

新中期経営計画は、経営の基本コンセプトとして、①主要三事業の収益力と経営基盤の強化②ユニバーサル・サービスの責務の遂行③上場を見据えたグループ企業価値の向上――の3点を中期的なグループの経営方針としつつ、現在、グループが直面している①さらなる収益性の追求②生産性の向上③上場企業としての企業統治と利益還元――の新たな3つの課題の克服をめざすとしている。

これに対し、JP労組は、「上場後のグループの姿を内外に明確にしたことは一定評価する」などとしたうえで、「今後は、この新中期経営計画を着実に実行し、グループを成長・発展させていくことを強く求めていくとともに、必要な交渉・協議に全力で取り組み、チェック機能を最大限発揮していく」としている。

緊張感のある労使関係と信頼関係を構築して郵政事業の発展に努力する
(小俣委員長)

小俣利通委員長はあいさつで、「今年の秋頃に株式上場という郵政事業の歴史的大転換、誰も経験したことのない未知の世界に歩み出すことになる。厳しい市場競争のなかにおいて勝ち残っていかなければ、組合員の雇用の確保と家族の生活を守っていくことはできない」と指摘した。

「経営のチェック機能となる労働組合の役割は極めて重要。緊張感のある労使関係と信頼関係を構築して、郵政事業の発展に努力することが、お客さま、利用者の皆様の信頼という財産を築き上げることになる」と述べる一方で、「その過程や結果において、私たち労働者の処遇、労働条件や労働時間の犠牲の上に成り立つことは到底容認できるものではない」などと強調。「上場企業として当たり前のことを、すべての職場で徹底させることが、組合員との信頼関係を構築していく最大の責務だ」として、適正な勤務時間管理をはじめとする労働環境の整備と労使確認した規則等の順守の徹底を求めていく姿勢を表明した。

新人事・給与制度の納得性の向上や必要な見直しに取り組む

日本郵政グループは昨年来、「新たな人事・給与制度」の導入を進めている。新制度は、役割を基軸としたコース別の人事体系を設定するとともに、原則、勤務地や職務内容が限定される「(新)一般職」の働き方を新設するもの。給与制度では基本給に毎年の査定で昇降する成果給部分を盛り込み、査定については賞与や退職金にも反映する仕組みにして、中長期的な報酬にもメリハリをつけることなどが柱になっている。

昨年度からコース制への移行とそれに基づく人事評価、(新)一般職への登用などを実施。さらに今年度からは、①新給与体系への切り換え②渉外営業社員の役割成果給の圧縮と営業手当の引き上げ③ポイント制退職手当の導入――などが行われる。

方針は、こうした導入の状況を注視しつつ、「人事・給与制度に関する必要な見直しに取り組む」とした。また、「人事評価結果のフィードバックに関する苦情処理制度を新たに設けた趣旨に基づき、納得性の向上に取り組む」ことも明記している。

安定的に25万人組織を維持しつつ30万人組織に向けて取り組む

一方、組織拡大に関しては、「安定的に25万人組織を維持しつつ、さらに30万人組織に向けて取り組む」方針を打ち出している。

6月15日現在、「組織数は24万1,916人となり、過去最高の組織数を刻むことができた」(小俣委員長)ものの、当面の目標としている「25万人の早期達成」には届いていない。JP労組によると、定年・勧奨退職や期間雇用社員も含めた中途退職数は年間で1万人超。組合員の純増にはそれを上回る組織拡大が必要になる。方針は、「新規採用等の加入率や未加入者および期間雇用社員のさらなる拡大行動を徹底し、正社員93%以上、期間雇用社員40%以上の組織率を確実なものとする取り組みが必要」と指摘している。

このほか、大会では、「安倍政権が推し進める安全保障関連法案に断固反対し、恒久平和を希求することを誓い合う」などとする特別決議を採択。役員改選では、小俣委員長、窪田義明書記長が再任された。