「昨年を上回る継続的な賃上げを実現」と総括/金属労協の2015闘争の中間まとめ

(2015年6月17日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5つの産別労組でつくる金属労協(JCM、議長=相原康伸・自動車総連会長)は、5月28日に開いた第6回中央闘争委員会で、今春闘の中間まとめにあたる「2015年闘争評価と課題(中間まとめ)」を確認した。「中間まとめ」は、「賃上げ獲得組合、賃上げ額ともに昨年を上回る継続的な賃上げを実現することができた」とし、「賃金の底上げを図ることにつなげることができた」などと総括している。

平均賃上げ額は前年を444円上回る1,770円

金属労協では今春闘において、2002年闘争以来、13年ぶりに具体的な要求額を闘争方針に掲げ、「6,000円以上」の賃上げ獲得をめざした。

最終的な回答の全体集計をみると、回答を引き出し、かつ、賃金構造維持分が明確な1,918組合のうち、1,850組合(96.5%)が賃金構造維持分を確保した。このうち、賃上げを獲得したのは1,417組合で、賃上げ額の平均は1,770円と前年同時期を444円上回った。賃上げ額を規模別にみると、1,000人以上が2,268円、300~999人1,807円、299人以下が1,623円となっており、いずれの規模でも前年同時期を上回る額となっている。

また、賃上げを獲得した組合の割合は、回答を引き出した組合の64.1%で、前年同時期を6.0ポイント上回っている。同割合を規模別にみると、1,000人以上が91.0%(前年同期72.1%)、300~999人が82.4%(同68.5%)、299人以下が56.1%(同50.4%)と、すべての規模で賃上げ獲得割合が高まっている。

これらの結果をうけて「中間まとめ」は、「前年同時期との比較で、賃上げ獲得組合、賃上げ額ともに昨年を上回る継続的な賃上げを実現することができた」とし、「マクロの視点を重視した賃上げを行い、JC共闘として明確な賃上げ基準を示して共闘を強化したことで、賃上げを獲得する組合が拡大し、賃金の底上げを図ることにつなげることができた」と総括した。

一方、賃金格差の是正と底上げの取り組みについては、「共闘強化の結果、賃金の社会性を重視し、人材確保や『人への投資』の観点から、原材料の高騰や価格転嫁の困難さから経営が厳しい中にあっても、賃上げを実施する企業が少なくなかったなど、成果を得ることができた」と評価しつつ、中小労組の結果について、「大手の結果には及ばないものの、先行する組合の賃上げ獲得が波及し、相乗効果によって、賃上げを獲得する組合が増加した」としている。

企業内最低賃金協定の締結など「JCミニマム運動」については、37組合が協定額の水準を引き上げ、引き上げ額の平均が1,871円と前年同時期を106円上回ったことから、「賃金の底上げに向けて、労働組合に課せられた一定の社会的責任を果たすことができた」と総括した。

一時金の水準は「企業ごとのバラツキが大きくなった」

一時金は、大手を中心とする集計登録組合では平均獲得月数が5.29カ月で、前年同時期を0.18カ月上回った。中堅・中小登録組合は、金額が確定した144組合でみると平均獲得月数は4.88カ月となり、前年同時期の実績を0.13カ月上回った。金属労協では最低獲得水準を年間4カ月に設定しているが、4カ月を下回った組合は10組合で、前年同時期から6組合減少した。「中間まとめ」は「一時金の水準は、企業ごとのバラツキが大きくなった」とし、5割程度の組合が前年実績を上回ったものの、前年実績を下回った組合の割合も増加したことから、「2極化」していると現状を分析した。

賃上げや雇用などについて交渉・協議した非正規労働者の取り組みについては、「非正規労働者の賃金・労働条件改善に取り組む組合が増加した」と評価し、賃上げについては、組織化している非正規労働者が取り組みの中心となったものの、「未組織の非正規労働者の賃上げにつながっている組合もみられる」としている。

来年の2016闘争に向けては、「この2年間の取り組みをさらに前進させ、継続的な賃上げによる勤労者生活の維持・改善、経済の好循環実現と金属産業の基盤強化に資する賃上げを図るべく、議論を尽くしていく」とし、「生産性と物価の動向をはじめ、日本経済の状況、勤労者の生活実態、金属産業の動向、企業収益などを十分に精査していく」などと記述している。

金属労協では7月下旬に開く常任幹事会で最終まとめを確認し、9月に開催する定期大会で報告する予定。

▽関連リンク (金属労協HP)