重点政策に均等待遇原則の法制化など/連合が中央委員会で確認

(2015年6月5日 調査・解析部)

[労使]

連合の中央委員会が3日、岩手県盛岡市で開かれ、向こう2年間の政策・制度要求および2016年度の重点政策、2015春季生活闘争中間まとめなどを確認した。政策の柱の1つである雇用・労働関連では、均等待遇原則の法制化や解雇の金銭解決制度の導入阻止を盛り込んでいる。また、古賀伸明会長が10月の定期大会で退任する意向を表明した。

古賀会長が10月の定期大会での退任を表明

冒頭のあいさつで古賀会長は春季生活闘争について、「賃上げを起点とした新たな好循環のサイクルを継続して回していくために、すべての組合が月例賃金と中小企業や非正規雇用の『底上げ・底ざさえ』にこだわった」と振り返ったうえで、交渉を通じて「マクロ的な観点での賃上げや人への投資の必要性などについて一定の理解が進んだこと」を成果にあげ、「今後の取り組みにつなげていかなければならない」と総括した。

連合の中央委員会2015年6月

また、あいさつの最後で自らの進退に触れ、「連合の事務局長を4年、会長を6年務めたことになる。10年を節目として退任させていただく」と述べ、会長職として3期目の満了となる10月の定期大会で辞任する意向を表明した。古賀会長は松下電器労組及び電機連合の委員長を経て2005年に連合事務局長に就任した。

特別条項つき36協定の上限時間およびインターバル規制の法制化を

連合は2年ごとに政策・制度の要望事項を「要求と提言」としてまとめ、このなかから毎年度の重点政策を絞り込んでいる。向こう2年間の継続的な政策課題では、冒頭に東日本大震災からの復興・再生をおき、復興財源の確保や雇用ミスマッチ解消に向けた就職支援強化を求めている。このほかの柱としては、「持続可能で健全な経済の発展」「雇用の安定と公正労働条件の確保」「安心できる社会保障制度の確立」など7本を掲げる。

このうち、重点政策の1つである雇用・労働政策では、労働時間制度と労働者保護ルールに関連して、最重点として①特別条項つき36協定を適用する場合の上限時間の法定化および「休息時間(勤務間インターバル)規制」の導入、②解雇の金銭解決制度導入などの解雇規制緩和反対、③過労死問題やいわゆる「ブラック企業」問題等への適切な対処に資する労働行政の充実・強化――を打ち出している。また、雇用の安定と能力開発の充実・強化として、労働者派遣法における派遣期間制限の撤廃などの阻止と労働者保護の視点からの法改正とあわせて、雇用形態にかかわらない均等待遇原則の法制化を最重点政策とした。

これらの政策については、秋の臨時国会や来年の通常国会での政策実現を目ざして、関係省庁への要請とあわせて民主党などと連携しながら具体的な取り組みを進める。

「賃上げや人への投資」の必要性が今後につながる大きな成果

春季生活闘争の中間まとめでは、交渉経過について、マクロの観点での月例賃金の引き上げが必要であるとの組合の主張に対して、「経営側は総論として理解しつつ、ミクロの支払能力論にもとづく主張が続き、交渉は難航したが、労働組合のマクロの視点での粘り強い主張と、最大の経営資源である人財の活性化をはかる必要性を訴える中で、昨年に引き続き月例賃金の引き上げの回答を得ることができた」と分析。こうした交渉経過や5 月11 日現在で昨年同期に比べて607 円(0.17 ポイント)増となっている回答結果を踏まえて、「マクロ的な観点での賃上げの必要性や、人への投資の必要性」などについて、今次交渉を通じて「一定の理解が進んだ」(古賀会長のあいさつ)として、「今後の取り組みにつながる大きな成果であると受け止める」と総括している。

中間まとめは4月末までの取り組み状況を受けたものであることから、これ以降の交渉結果を踏まえて組織討議を進め、7 月16 日の中央執行委員会で最終まとめを確認する予定だ。

次期参院選の基本方針と戦後70年で「平和に向けた特別決議」も確認

中央委員会では来年7月に実施予定の第24回参議院選挙への対応に関する基本方針を決めた。連合ではすでに現行制度になってから過去最多となる12構成組織からの組織内候補の擁立を決定している。方針では12人の全員当選を掲げ、民主党を基軸に「再び二大政党的政治体制の一翼を担うため、反転攻勢の足がかりとしなければならない」と強調。連合推薦については連合との政策協定を締結した政党に属する候補者及び個別に政策協定を結んだ者とし、選挙区では地方連合会の推薦申請に基づいて推薦するとしている。

また、民主党以外の政党公認予定候補者の推薦については「今後の情勢の変化が生じた場合、必要に応じ補強方針にて提起する」としている。

中央委員会の最後に「戦後70年を迎えるに当たって」と題する平和に向けた特別決議を採択した。決議文の冒頭に「連合は基本目的の1つに、主権在民、基本的人権、恒久平和を基調とする日本国憲法の理念に沿った自由、平等、公正で平和な社会を実現することを掲げ、結成以来四半世紀に亘り、国民とともに平和運動を進めてきた」と表明。平和運動として取り組んできた核兵器廃絶による世界の恒久平和の実現(広島、長崎)、在日米軍基地の整理・縮小(沖縄)、北方領土の早期返還(根室)に向けた「平和4行動は、今や地域を代表する平和運動の中核となっている」とこれまでの経過を振り返る。

一方、「安倍政権は国民的合意形成や立憲主義の原則を軽視し、国民の懸念に答えないまま安全保障法制を推し進めようとしている」と批判する。そのうえで、戦後70年にあたって「もう一度真正面から向かうべきは、日本が他の国々、とりわけアジア諸国の人々に与えた苦痛と悲しみ、そして、多くの日本国民が戦場に散り戦禍に倒れた事実」とし、「それぞれの地域で語り継がれてきた戦争の歴史を将来の世代につなげていく責務がある」と強調。「平和を希求する願いをすべての働く仲間と共有していこう」と呼びかけている。

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