看護職員の6割以上が始業前、約7割が終業後に残業/日本医労連調査

(2015年3月25日 調査・解析部)

[労使]

病院や診療所、福祉施設などの職場で働く労働者・労働組合でつくる産業別組織の日本医療労働組合連合会(日本医労連、約17万人)は20日、「2014年秋・全国一斉退勤時間調査」結果を公表した。それによると、医療・介護現場では看護職員の6割以上が始業前、約7割が終業後に残業を行うなど、長時間労働が依然としてみられ、始業前の8割以上、終業後の約6割は、残業代を一部あるいはまったく請求していない実態が浮き彫りになった。

とくに若年層で残業代を請求できていない実態が浮き彫りに

調査は、昨年10月~12月末にかけ、加盟組合の組合員や職場の労働者を対象に実施し、1万3,459人(31県99施設)から得た回答を集計したもの。

回答者の職種は、「看護職員」が半数超を占め(54.6%)、次いで事務職など「その他」が16.3%、「医療技術職(リハビリ以外)」が11.4%、「リハビリ」が8.5%、「介護職」が7.4%、「医師」が1.0%などとなった。

また、年齢については「30代」が27.2%でもっとも多く、これに「40代」(21.8%)、「50歳以上」(20.1%)、「25~29歳」(14.3%)、「24歳以下」(9.4%)などが続いた。

集計結果によると、(調査回答日の)始業前に時間外労働を行った割合は、6割以上。「看護職員」では73.6%にのぼり、「その他」でも43.5%などとなった。年齢別にみると、始業前の時間外労働を行った割合は「24歳以下」(76.6%)が高く、これに「25~29歳」が68.1%で続いた。

一方、終業時間後に時間外労働を行った割合は約7割で、「看護職員」で63.3%、「医師」で76.9%などとなった。また、2時間以上の時間外労働を行った割合は、看護職員が7.5%で、「医師」では21.8%にのぼった。

こうした時間外労働に対して、「残業代を請求しているか」尋ねると、始業前については73.3%が「請求していない」、8.6%が「一部している」などと回答した。また、終業後については「一部している」が36.7%でもっとも多かったものの、次いで「全額請求している」が27.2%、「請求していない」が23.2%となった。

これを年齢別にみると、「全額請求している」割合は、「24歳以下」で始業前6.0%、終業後21.4%、「25~29歳」で始業前6.7%、終業後26.2%にとどまっており、とくに若年層で請求できていない実態が浮き彫りとなっている。

そうした背景について、日本医労連では「教えてもらっている身で残業代を請求するなんてとんでもない、といったような雰囲気を感じているのではないか」などとみている。

実際、残業代の請求を「一部している」あるいは「していない」人を対象に、全額請求していない理由を尋ねると、「請求できない雰囲気がある」(25.7%)との回答がもっとも多く、次いで「請求できると思わなかった」(9.0%)などの順となった。なお、同設問に対しては「その他」(25.0%)のほか、「無回答」(37.1%)も多い。この点について、日本医労連では「これ以上、詳しいことは分からないが、理由が書き難い、書いたことを知られたくない、といった事情もあるのではないか」と話している。

残業時間の解消には30人病棟で約4人の増員が必要

調査結果を用いて、日本医労連では不払い残業代を試算している。それによると、一人当たりの月額で、始業前の時間外労働については2万1,000円、終業後では3万9,000円の計6万円になるとした。

一方でもし、時間帯ごとに適性な人員配置がなされていれば、本来的にこれほどの残業時間が発生することはないとして、残業時間から人員の不足数も試算。その結果、看護職員30人の病棟で残業を解消するには、約4人の増員が必要になるとした。

こうした結果を受け、中野千香子・委員長は「この間も、5局長連名通知や6局長通知などを出していただいたが、2009年の前回調査と比較しても、医療・介護現場の長時間労働は改善されていない実態が明らかになっている」などと指摘。日本医労連では引き続き、看護300万人体制(「めざすべき看護体制の提言」)など大幅な増員とともに、長時間労働や夜勤回数の制限、勤務間インターバルといった法的な規制等による勤務環境の改善を強く求めていくことにしている。