自動車メーカー労組が6,000円の賃上げ要求を一斉に経営側に提出/自動車総連の拡大戦術会議登録組合

(2015年2月20日 調査・解析部)

[労使]

トヨタ、日産、ホンダなど、自動車総連に加盟する自動車大手メーカーの労働組合は18日、今次労使交渉における要求書を一斉に経営側に提出した。自動車総連が設定した「6,000円以上」の賃上げ要求基準も踏まえ、11ある完成車メーカー労組の賃上げ要求額は6,000円で足並みが揃った。一時金では、トヨタ労組が昨年要求と同様、年間6.8カ月を要求。11メーカーのうち4組合が6カ月以上の要求月数となった。

自動車総連では、トヨタ、日産、本田技研、マツダ、三菱自工など11の完成車メーカーの労働組合に、部品・車体部門を代表する1つの部品メーカー労組を加えた12組織で「拡大戦術会議登録組合」を形成。拡大戦術会議登録組合は、要求日、交渉日、回答日を統一させて交渉を進めることで、共闘機能を高めて労使交渉を展開する。自動車総連が統一要求提出日に設定していた18日、拡大戦術会議登録組合の12組織は一斉に、経営側に要求書を提出した。なお、部品メーカーからの登録組合は、4年ごとに入れ替わることになっており、今年は、昨年までの日本発条に代わって日本特殊陶業が登録されている。

トヨタ労組は賃金制度維持分7,300円含む1万3,300円を要求。

平均賃上げでの要求額をみると、完成車メーカー11労組の賃金引き上げ幅は6,000円もしくは6,000円相当と結果的に統一した形となり、「賃金改善分6,000円」を要求した日本特殊陶業労組を含めて、拡大戦術会議登録組合の賃上げ要求額は6,000円で揃う結果となった(本記事の下端リンク先の自動車総連HPに要求一覧表が掲載されている)。すべての拡大戦術会議登録のメーカー組合が2年連続で賃金改善の要求を掲げることになったのは、2001年以来14年ぶりのこと。

各メーカー別にみていくと、トヨタ労組は賃金制度維持分の7,300円を含めた1万3,300円を要求。なお、同労組は昨年の交渉では1万1,300円(賃金制度維持分7,300円含む)を要求し、経営側の回答は1万円(同)だった。日産労組は、平均賃金改定原資として1万2,000円を要求。同社の場合、賃金制度の形態上、賃金制度維持分と引き下げ分を明確に峻別することができないが、6,000円相当の引き上げ要求となっている。定昇相当分が労使確認されている本田労組は、賃上げ分のみの6,000円の引き上げを求めた。

一方、一時金の要求内容をみていくと、トヨタは昨年の要求月数と同じ年間6.8カ月、日産は昨年要求より1カ月多い5.7カ月、本田は昨年同様の「5.0+0.9カ月」、マツダと三菱自工がともに5.5カ月(昨年要求に比べマツダは0.2カ月、三菱は0.5カ月それぞれ増)となっており、それ以外のメーカーは、スズキ=5.8カ月、ダイハツ=「5.0+0.5カ月」、富士重工=「5.0+1.0カ月」、いすゞ=6.0カ月、日野=6.0カ月、ヤマハ発動機=5.8カ月、日本特殊陶業=6.7カ月となっている。

6組合が非正規労働者の処遇改善要求を掲げる

要求の全体の動向について、昨年要求および実績と比較すると、要求どうしの比較では、昨年を上回るのが6組合、同月数が6組合。昨年実績との比較でも、昨年を上回るのが6組合、同月数が6組合となっている。

今回の交渉では、自動車総連ははじめて、直接雇用の非正規労働者の賃金について、原則として賃金改善分を掲げることを要求基準のなかに盛り込んだ。その結果、拡大戦術会議登録組合のうち、6組合が今回はじめて、賃金や一時金などの具体的な処遇改善の要求を掲げることになり、通年での取り組みなども含めれば、すべての登録組合で処遇改善を求めていく状況となった。

製造業以外の産業にも底上げの流れを加速させる/相原会長

同日、会見した自動車総連の相原康伸会長は、今後本格化する労使交渉に向けて、「何としても、デフレ脱却に向けた2015闘争の取り組みを力強く前進させたい。2015年は経済の好循環の分水嶺であるきわめて重要な年だ。総力をあげてわれわれの要求に込めた思いを最後まで粘り強く訴え、前進を図りたい」と抱負を述べるとともに、傘下の部品・車体、輸送、販売、一般部門も含めた「全体の底上げにも全力で取り組みたい」と強調。さらに、「製造業以外の産業にも、底上げの流れを加速させる自動車総連の役割を自覚したい」などと述べた。

日本自動車部品工業会に底上げ・底支えの特別要請を実施

また、連合が最重要課題に位置付ける中小の格差是正・底上げの取り組みについて、相原会長は、「中小の取り組みは今年の最重要課題だ」と強調。「中小が全国の経済、雇用を支えている。中堅・中小の底上げなしにデフレ脱却はできない」と話すとともに、賃金の底上げや底支えなどへの協力を求める特別要請を今月、日本自動車部品工業会(JAPIA)に対してはじめて行ったことを紹介した。

さらに相原会長は、「2014の取り組みでは、それまではベアに後ろ向きだった企業労使、とくに小さい規模の企業でも、ベアに踏み込んだところが少なくなかった。規模にかかわらず、底上げができたのではないか。ただし、デフレを2015年だけで一掃するのは難しく、限られた時間は少ない。(賃金の引き上げに向けた)2本目の取り組みとなる今年、スピード感をもってデフレから抜け出していくためにも経営側に回答を求めていきたい」などと話した。

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