基準内賃金および成果手当6,000円(平均)の改善要求を決定/NTT労組
(2015年2月18日 調査・解析部)
NTTグループの労働者でつくるNTT労働組合(17万3,000人)は13日、都内で中央委員会を開き、グループ主要8社に対して、基準内賃金および成果手当6,000円(平均)の改善を求めることなどを柱とする、2015春季生活闘争方針を決定した。冒頭であいさつした野田三七生委員長は、「昨年に引き続き、月例賃金の改善を含む『総合生活改善闘争』に挑戦したい。今次春闘における月例賃金の改善は強い社会的要請であり、内外からその結論が注視されている」などと強調した。
「経済の好循環」実現のための政策として賃上げが必要不可欠/野田委員長
野田委員長はあいさつの中で、今次交渉の考え方として、「過去の統計を見ても物価上昇局面で月例賃金は必ず上昇しているということを認識する必要がある。このことは、個人の消費マインドを高めて内需を拡大し、企業の収益を高めるという『経済の好循環』を実現するには、取り得る政策として賃金の引き上げが必要・不可欠であることの証左だ」などと強調した。
そのうえで、「日本における名目GDPのこれまでの推移と、NTTの収益が見事に連動していることを考慮すれば、会社側は『デフレからの脱却』と『経済の好循環』を実現するための、月例賃金の改善や非正規労働者の労働条件の改善が、自らの企業活動にも跳ね返る重要な課題として認識すべきだ」と指摘。さらに、「民営化30年を経て、NTTグループは次代に向け飛躍するための正念場の時期にある。それを推し進める源泉が『人財』であることも、労使の共通認識であると確信している」などと述べた。
なお、6日に持株会社が公表した「第3四半期連結決算」によれば、地域通信事業における徹底した業務効率化や、データ通信事業における売上拡大およびグローバルビジネスの着実な成長により、「営業収益」は対前年比で1,573億円増の8兆1,825億円と増収を達成。一方、「営業利益」は同742億円減の9,109億円と減益になったものの、進捗率は80%を上回っており、「各社の事業動向に濃淡はありつつも、NTTグループ全体の経営動向としては、概ね順調に推移している」(高橋政士事務局長)状況となっている。
非正規を含め基本賃金等の2%相当の改善を
中央委員会では、今季闘争方針の柱に、①過年度物価上昇分や生産性向上等を加味した賃金改善等、②「底上げ・底支え」に向けた非正規労働者の労働環境改善、③労働時間規制によるワーク・ライフ・バランスの実現――を据えることを決定した。
賃金改善等の要求については、基準内賃金および成果手当6,000円(平均)の改善を目指す。その考え方について、高橋事務局長は、「連合・情報労連の方針を踏まえ、①物価上昇局面、②非正規労働者の『底上げ・底支え』、③NTTグループ全体としての経営状況、④これまでの組合員・社員の事業への貢献、⑤新たな事業領域に向けた『人財への投資』等を総合的に勘案し、非正規労働者を含めた働く仲間の基本賃金等の2%相当の改善を求めることとする」などと説明した。
特別手当・一時金については、主要8社に対し、昨年要求水準を基本に要求する。要求方式は、「年間臨給方式」による「NTTグループ統一モデル(40歳・一般資格1級)の基準内賃金」を基本とした。なお、昨年の要求水準は、NTT東西・ファシリティーズ、コムウェア、持株会社が134万5,000円、コミュニケーションズが134万5,000円+αなどとなっている。
非正規労働者の労働環境改善にも力点
非正規労働者の労働環境の改善に向けては、①通勤費の実費化や慶弔休暇の設定等、これまでの論議経緯を踏まえて企業本部が要求すること、②期間の定めのない雇用形態等、雇用の安定につながる仕組みづくりに向け、企業本部労使間で論議を行うこと、③特別手当・一時金については昨年要求水準を基本に、制度化等を含めて企業本部が要求すること――などを決めた。
また、賃金水準の「底上げ・底支え」に向け、情報労連が「要求書」を提出する新たな枠組みによる、「情報労連最低賃金協定」の締結維持・拡大を目指すこと、NTT労組としても交渉のバックアップを含め、これまで以上に情報労連と連携して取り組むことなども確認した。
主要8社に勤務間インターバル規制の導入等を要求
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けては、主要8社に対し、「休息時間の確保に向けた仕組みづくり(いわゆる勤務間インターバル規制の導入)等」の要求を行うほか、「年休の取得促進等」を通じ、総労時間短縮の取り組みを強化するとした。
中央委員会の終了後、中央本部は主要8社、各企業本部は各社に対して要求書を提出。従来通りストライキ権の確立を含めた闘争体制で(2月18~26日にストライキ批准一票投票を全組合員で実施)、連合が設定する最大のヤマ場(3月18日)を意識し決着を目指す。
中央委員会ではこのほか、次期定期全国大会に向けた取り組みの一環として、海外勤務者の増加に伴い事業対策的課題や組織的課題に対処する必要があるため、「グローバル枠組み協定」の締結に向けた検討を進めること、また、「東日本大震災」の教訓を活かした「危機管理体制」の確立に向けて「危機管理マニュアル」を策定することなども確認した。