ベア5,500円を統一要求/私鉄総連拡大中央委員会

(2015年2月4日 調査・解析部)

[労使]

大手私鉄やバスなど約230の労働組合が加盟する私鉄総連(藤井一也委員長、11万4,000人)は3日、都内で第2回拡大中央委員会を開催し、2015年の春季生活闘争方針を決定した。賃上げの統一要求では、月額基本給1人平均2.0%(定期昇給相当分)プラス5,500円(ベースアップ分)の引き上げを求める。

政治に頼ることなく、労使の責任で春闘を展開する/藤井委員長

藤井委員長は冒頭の挨拶で、「現在、様々な産業で人手不足が生じている。安定した賃金・労働条件を確保しなければ、優秀な人材は他の産業に流れてしまう。決算の内容が思わしくないからといって、人件費を削るという安易な発想ではこれからの時代を乗り切っていけない」と賃上げの必要性を強く訴えた。

さらに「首相が賃上げ要請したからといって、簡単に賃上げされるものでないことは昨春闘の結果をみても明白だ。政治の力に頼ることなく、労使の責任で春闘を展開して欲しい」と述べた。

私鉄・バス組合の統一要求では、各組合員の現行基本給を1人平均で、定期昇給相当分2.0%プラス生活維持分及び生活回復・向上分(ベア分)として5,500円の引き上げを求める。ベア分は、昨年より1,800円の増額となった。

年間臨時給(一時金)については、「賃金の後払い」的な性質を持つことを踏まえ、生活防衛、年間収入確保などの観点から、2014年度の協定月数の堅持を求める。年間5カ月に満たない組合については、5カ月を要求することを基本とし、最低でも3カ月分の確保をめざす。

一方、ハイヤー・タクシーの専業組合では、1人当たりの年間原資を18万円とし、月例賃金と年間臨時給の引き上げを求めていく方針を固めた。月例賃金については、基本給を1人平均2.0%(定昇相当分)プラス生活維持分及び生活回復・向上分(ベア分)として5,500円の引き上げを求める。年間臨時給は、年間5カ月分を基本目標とした上で、年間原資18万円から月例賃上げ要求額の12カ月分を控除した額を最低基準に、昨年度協定額に積み上げる。

契約社員やパートなど非正規労働者の時間給については、「60円以上」を基本に改善を求める。

春闘方針の討議では、関西地連から「賃上げ統一要求では、消費税増税の影響を物価上昇分からは除くとする私鉄総連の方針に対し、一部の組合員から疑問の声があがっている。これまで連合では、税と社会保障の問題は、個別労使の交渉では解決しづらい問題であることから、政府に対する政策・制度実現要求の中で意見を反映していく方針を採ってきた。その方針は理解するものの、今後、私鉄総連として、意見反映に向けて、どのように取り組んでいくかを明確にしなければ、組合員の理解は得られないのではないか」との意見が出された。

これに対し、執行部は「これまで私鉄総連では、税制について、連合の集会や民主党、社民党との懇談会の場で税制に関して意見を表明してきた。また、連合では、現在、次年度に向けた政策・制度要求をとりまとめており、その中で、納税者の立場に立ったわかりやすい税制の実現など、社会保障と税の一体改革を着実に推進するための方策についてもふれている。産別としての意見もこの中に盛り込んでいくよう努力したい」と答弁した。

交通政策の実現に向けた要求項目も決定

一方、中央委員会では、今後の交通政策の実現に向けた要求項目も決定した。交通政策基本法では、地方公共団体が国との適切な役割分担を踏まえて、地域の実情に応じた交通施策を策定・実施する責務がうたわれているが、その実現に向け、「交通基本計画」を市町村レベルまで周知するとともに、各地方自治体に交通政策を担当する窓口を創設することなどが要求に盛り込まれた。