給与制度の総合的見直し阻止を/自治労の2015春闘方針

(2015年2月4日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体で働く職員を中心に組織する自治労(氏家常雄委員長、約82万人)は1月29、30の両日、都内で中央委員会を開催し、「2015自治労春闘方針」を決定した。方針は、地域の民間給与水準を踏まえて俸給表の水準を引き上げることなどを内容とする「給与制度の総合的見直し」について、引き続き見直し阻止の取り組みを進めるとしている。

挨拶した氏家委員長はまず、公務員の「給与制度の総合的見直し」について言及。「『総合的見直し』の問題点については、繰り返し述べているが、職員のモチベーション低下はもちろんのこと、『賃上げにより経済の好循環をつくる』という政府の経済政策と逆行するものだ」とし、「地域経済にとってはマイナスになることは確実で、地域の民間労働者の賃金への悪影響なども懸念される」と指摘した。

総合的見直しは、人事院が国家公務員に対する2014年の給与勧告で打ち出したもので、地域によっては公務員の賃金水準が民間を上回るとして、俸給表と地域手当の配分の見直しを求めた。国家公務員は今年の4月から実施される。俸給表水準は一律に引き下げられることから、地域手当が従来よりも縮小する地域は、報酬全体の水準は低下することになる。総務省は、地方自治体も、国を踏まえた措置を講じることを求める検討会報告をまとめている。

こうした総合的見直しについて自治労では、2014自治体確定闘争から取り組んでいる。氏家委員長は「約半数の自治体で現在も交渉が継続している」と現在の状況を報告したうえで、2015春闘の前段で第3次統一行動を設定し取り組むことを表明。また、2015人勧期・確定期を見据えた取り組みを春闘期から進めると強調した。

一方、政府で毎年度策定される地方財政計画については、2015年度地方財政計画が前年度比で1.9兆円増加の約85.3兆円規模となったことに対し、「自治労が求めてきた一般財源総額を増額した点は評価できる」、「1兆円の『まち・ひと・しごと創生事業費』が新設され、地方創生の経費が計上されたことは一定評価できる」などと述べる一方、「将来にわたる安定的な財源とは言えず、また、客観的・中立的であるべき経費の算定について、地方創生の成果などに応じて各自治体に配分するとされており、政府の政策誘導=中央集権的な地方創生になりかねない」との懸念も示した。

地方での人口減少の問題がクローズアップされていることについては、「人口減少は古くて新しい課題であり、地域の活性化そのものは大変重要だが、特効薬などない。自治体消滅などという極論に左右されるのではなく、自治体職員が地域の住民とともに、それぞれの地域の現状を冷静に分析、議論し、まちづくりに中長期的に取り組むという地道な努力を積み上げていくしかない」と訴えた。

すべての単組で労使関係ルールの要求提出を

「2015自治労春闘方針」は、2015春闘の重点課題として、①賃金水準の確保・改善に向けた取り組み②地方財政の確立に向けた取り組み③格差是正と公正なワークルールを確立する取り組み――の3点を設定。

賃金水準の確保・改善に向けた取り組みでは、「春闘=1年の賃金・労働条件闘争のスタート」であることを再確認し、「要求―交渉―妥結(協約・書面協定)」のサイクルを定着させることが引き続き重要だとしている。中央委員会で報告された一般経過報告書によれば、2014確定期の交渉では、全単組のうち最終的に85.7%が要求書を提出し、77.7%が交渉を実施。53.9%が妥結に至り、合意を書面化したのは29.0%だった。妥結、書面化の割合は年々、増加している。2015春闘では、すべての単組で、労使関係ルールに関する基本要求書を提出することを徹底するとしている。

自治体最低賃金の確立も

給与制度の総合的見直しへの対応と賃金水準の確保に向けては、まず、総合的見直しで協議中となっている単組・県本部は、引き続きストライキを配置して見直し阻止に取り組むとする。「引き続き検討」とした地域や単組は、2015人勧期をヤマ場とした取り組みスケジュールを確立する。

公務員賃金水準の改善に向けては、県本部は、30歳:24万6,500円(国公行一3-13)、35歳:29万6,900円(国公行一3-40)、40歳:34万9,400円(国公行一4-43)を「到達目標」とし、これを基本に賃金要求基準を設定するとしている。昇格・昇給の運用改善にも力を入れる方針だ。

また、自治体に雇用されるすべての労働者、地域公共サービス民間労働者を対象とする自治体最低賃金を確立するとし、「月額15万1,800円(国公行一1級13号俸・2014年勧告額)以上、日給7,590円(月額/20日)以上、時給980円(月額/20日/7時間45分)以上」として求める。

人事評価制度については、2015年4月から試行が開始される予定だが、まだ評価制度を導入していない単組は、設計段階からの十分な協議と合意を基本にして取り組むとしている。

地方財政に関しては、「無理に財政健全化目標を達成しようとすれば、地方自治体が提供するサービスの充実が困難になることについて留意する必要がある」と記述し、2016年度地財確立に向けた地方自治体法第99条に基づく地方議会決議の採択などを早くから準備することが必要だとしている。

格差是正と公正なワークルールを確立する取り組みでは、非正規雇用労働者の雇用上限撤廃、雇用継続にむけて、2013春闘から展開している集中的な取り組みを継続するとしている。処遇改善では、連合方針を踏まえ、「37円/時間+2%(部下上昇+格差是正分)」以上の賃金改善の確保をはかるとしている。

また、短時間勤務職員制度の実現に向け、引き続き、国会・政府・世論対策を実施するとした。

中央委員会ではこのほか、当面の闘争方針を決定するとともに、第24回参議院選挙に向けた取り組み方針を確認した。