6,000円以上の引き上げを統一要求基準とする闘争方針を決定/電機連合の中央委員会

(2015年2月4日 調査・解析部)

[労使]

電機連合(有野正治委員長、約62万人)は1月29、30の両日、横浜市で中央委員会を開催し、開発・設計職基幹労働者を要求ポイントとする賃金水準引き上げの統一要求基準を、6,000円以上とする2015闘争方針を決定した。産別統一闘争を展開する中央闘争組合について、今回の闘争から村田製作所労連が加わることもあわせて確認した。

電機連合では、本部と、日立製作所、東芝、パナソニックなどの大手組合で構成する中央闘争組合で「中央闘争委員会」を設置。中闘組合はスト権を中央闘争委員会に委譲し、要求から交渉スケジュール、回答まで足並み揃えて取り組む統一闘争を行う。産別全体としては、中闘組合が引き出した回答を、グループ加盟の各組織や、準大手組合で構成する拡大中闘組合、地場の主要労組へと相場波及させる取り組みを展開する。

実質賃金の低下に歯止めをかけるために昨年を上回る賃金水準改善が必要/有野委員長

今回の方針では、賃金水準引き上げと産別最低賃金(18歳見合い)の引き上げ、一時金を中闘組合の「統一要求基準」に据えた。賃金水準引き上げでは、開発・設計職基幹労働者(30歳相当)の個別ポイントで6,000円以上引き上げることを要求基準とした。企業内賃金のミニマム基準である産業別最低賃金(18歳見合い)については、現行の協定水準は15万6,500円となっているが、4,000円引き上げて16万500円にすることを求める。一時金は昨年と同様、年間5カ月分を中心とし、産別ミニマムを年間4カ月に設定した。

挨拶した有野委員長は今回の要求設定について、「今次闘争は昨年と比較し、政府見通しでも3.2%と物価上昇が顕著であり、そのことが消費低迷や景気の失速につながっていること、さらに実質生活の低下を招いていることに何としても歯止めをかける意味でも、昨年を上回る賃金水準改善が必要だとの判断によるものだ」と説明。

交渉のポイントについて、昨年末の政労使会議の合意内容や経団連の経営労働政策委員会報告の内容にふれながら、「実際の個別企業労使交渉になれば、いままでどおり経済合理性が強調され、合成の誤謬が繰り返されることが懸念される」「労働組合としては産別労使交渉や各企業との交渉を通して労働組合としての考えを強く主張し、要求実現に全力を尽くしていくことが重要だ」と強調した。

電機連合は2014闘争では、賃金水準引き上げの要求基準に4,000円以上を掲げ、2,000円の引き上げを獲得した。今回の6,000円以上という要求額は、現行の個別賃金要求方式となってからでは1998年以来(7,000円)の高水準となる(ただし、このときの要求ポイントは35歳技能職)。

電機連合では、賃金決定の要素として1)生活実態、2)業績動向、3)雇用情勢、の3項目を据えているが、今回の6,000円以上の設定理由について、「連合と金属労協の賃上げ方針である2%以上を考慮し、内部で議論して決定した」(野中孝泰書記長)と説明。

同日、中央委員会の直前に会見した有野委員長は、「電機連合加盟組合の基準内賃金の平均はほぼ30万円なので、その2%となると6,000円となる。額のほうがわかりやすいし、格差改善に取り組むことができる」と述べるとともに、「物価上昇を考えると昨年を下回る要求はありえなかった」と論議過程を振り返った。また、「昨年は相場感のないなかで、交渉につっこんでいった。今年は昨年実績がスタート時点になる。もちろん経営側はそれがスタートとは思っていないだろう。いずれにしても昨年よりも電機連合が重要な役割を担っていることは間違いない」と語った。

年齢別最賃の引き上げ幅を4,000円で統一して一律の底上げを

一方、統一的に取り組むものの、スト行使を背景としない統一目標基準の取り組み項目では、製品組立職基幹労働者(35歳相当)の賃金水準引き上げや年齢別の最低賃金、初任給で要求基準を設定。製品組立職基幹労働者の賃金水準引き上げの要求基準は、「開発・設計職の水準改善額に見合った額」とし、額では設定しなかった。その理由について電機連合では「技能職の賃金体系は各社で異なる」(野中書記長)と説明している。

25歳最低賃金については、現行水準を4,000円引き上げ、17万9,500円とするよう求める。40歳最低賃金については、同様に現行水準を4,000円引き上げて22万6,500円とすることを要求する。

高卒初任給では、現行水準を3,000円引き上げ、16万1,500円とするよう求めるとし、大卒初任給については、4,000円引き上げて21万1,000円とするよう要求する。各年齢別最低賃金の引き上げ幅はすべて4,000円で統一されており、電機連合では、同額の引き上げ額を構えることで「一律の底上げを狙っている」と説明する。なお、高卒初任給の引き上げ幅を3,000円としているのは、「企業内最低賃金よりも引き上げ幅を小さくして、高卒初任給と企業内最低賃金の格差を縮小させるため」(野中書記長)だ。

このほか、金属労協のJCミニマム(35歳)である21万円を方針に取り込み、「技能職群(35歳相当)ミニマム基準」とした。

統一闘争強化に向け新たな指標を設定

今回の闘争では、統一闘争を強化する目的から、はじめて「政策指標」と「ベンチマーク指標」を設定した。今回、電機連合では、統一闘争を、「何としても守るべき領域」と「各組合が業績や処遇実態を踏まえ、主体的に処遇改善に取り組む領域」の2つの領域に整理。

何としても守るべき領域は、賃金の引き上げや一時金、最低賃金が該当し、これまでどおり、闘争行動を背景に取り組む。一方、主体的に処遇改善に取り組む領域は、各組合が「達成プログラム」を立て、それに向かって段階的に到達をめざす。「政策指標」はその際の目標となる指標であり、今回、電機連合では、賃金水準の政策指標を提示。開発・設計職基幹労働者では、「必達基準」を25万円、「到達基準」を27万円、「目標基準」を31万円、「中期的にめざす目標基準」を35万円と据えた。

一方、製品組立職基幹労働者については、「必達基準」を21万円、「到達基準」を25万円、「目標基準」を29万円、「中長期的にめざす目標基準」を32万円とした。各組合は、達成できていない基準をめざして、春の闘争も含めて通年的に取り組むことになる。

「ベンチマーク指標」は、各組合が自分たちの置かれた位置を確認するための指標。同指標は、本部が各労働条件項目について毎年、電機連合加盟組合の実態調査をもとに提示する。

中闘組合に村田製作所労連が加わる

今回の闘争から、電機部品大手の村田製作所労連が中央闘争組合に加わることになった。これで中闘組合は、日立グループ連合、東芝グループ連合、パナソニックグループ労連、三菱電機労連、全富士通労連、NECグループ連合、シャープグループ労連、富士電機グループ連合、OKIグループ連合、明電舎、パイオニア労連、安川グループユニオン、村田製作所労連の13組織となった。村田労連が中闘に加わることの効果について有野委員長は、「電機加盟組織にはもともと部品メーカーが多く、これにより、中闘組合の回答が、拡大中闘や地闘組合に属する部品メーカー組合に波及することを期待できる」と話している。

中央委員会での闘争方針の討議では、「日本経済の再生と働く仲間の思いを踏まえたこの電機連合方針をいかに経営側に理解してもらうかが重要」(東芝グループ連合)、「昨年は、電機の統一闘争が日本全体の相場形成に役割を果たしたと感じた。マクロ論議を個別労使交渉に持ち込むのはたいへんなことだが、それによって相場形成を図れるのは組合しかない」(三菱電機労連)、「個社に戻れば、交渉は経団連のいうような簡単なものにはならない。しかし、統一闘争の枠組みで賃金全体を上げていくことについてしっかり議論していかなければならない」(日立グループ連合)などの意見表明があった。

加盟組合は、2月19日までに要求を提出する。