賃金水準引き上げの要求基準を9,000円に設定/JAMの2015春闘方針

(2015年1月21日 調査・解析部)

[労使]

金属・機械関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(眞中行雄会長、約36万人)は20日、都内で中央委員会を開催し、2015年春季生活闘争方針を決定した。賃金構造維持分に加える賃上げ水準引き上げの要求基準について、過年度物価上昇分と生活改善分を加味し9,000円と設定。是正が必要な場合はさらに1,500円以上を加えて要求するとした。

実質生活を守る数字として組合員総意の要求を/眞中会長

挨拶した眞中会長は、2015春闘について、「昨年にも増して重要度を増し、連合は『賃上げ』『時短』『政策・制度』を3本柱に掲げ、『デフレからの脱却、経済の好循環の実現』に向けた取り組みを展開している。昨年末に開催された政労使会議での合意事項として経団連は『賃上げに最大限努力している』としているが、具体的な賃上げについては個々の労使が責任をもって取り組まなければならない」と強調した。

こうしたなか、円安により輸入原材料を使った商品の値上げが相次いでいることを例にあげ、「生活を圧迫するのは明白だ」と指摘しながら、「こうした環境や中小企業にまで改善は及んでいないという企業業績はあるものの、生活実態を踏まえJAMとしては実質生活の維持の観点から9,000円のベア要求とした。統一要求日には昨年の43%を超える結集をお願いする。ベア要求の9,000円は連合や金属労協の方針からすると若干高めの数字となっているが、実質生活を守る数字として自信を持って組合員との意思疎通を図り、組合員総意の要求としてほしい」と呼びかけた。

「過年度物価上昇分と生活改善分」に該当する引き上げ率を3%に

JAMが賃金水準の引き上げ要求を設定するのは2年連続。2014春闘では、過年度物価上昇率を1%、生活改善分が0.5%で、引き上げが必要な率を合計の1.5%と考え、JAMにおける平均所定内賃金が約30万円であることから、その1.5%分として4,500円を引き上げ額に算出した。今回は、「過年度物価上昇分と生活改善分」に該当する引き上げ率を3%とし、同様の平均所定内賃金約30万円に対する額として9,000円とした。

また、JAMでは、賃金水準の低下がみられる単組においては5年かけて、7,500円分の賃金低下を是正していく取り組みを進めており(よって毎年1,500円以上を是正する)、賃金是正が必要な組合は9,000円の水準引き上げにさらに1,500円以上の要求を加えていくことも要求基準とした。

方針は今回の取り組みの基本的スタンスとして、「賃金の底上げと経済の好循環を実現していくためには、企業に偏重する富みの分配構造を変えていくために、『人への投資』という観点を、労働組合から積極的に主張していく」と記述している。

平均賃金要求と併せて毎年掲げている個別賃金要求基準については、標準労働者の現行水準に9,000円を上乗せしたものとするとし、具体的には、高卒直入者の所定内賃金・30歳の要求水準を26万9,000円、35歳を31万4,000円としている。

また、各年齢ポイントでクリアすべき水準としている「JAM一人前ミニマム基準」について、18歳=15万6,000円、20歳=17万円、25歳=20万5,000円、30歳=24万円、35歳=27万円、40歳=29万5,000円、45歳=31万5,000円、50歳=33万5,000円と設定した。

賃金制度がない場合は1万3,500円、是正が必要な場合は1万5,000円以上で

なお、JAMは中小労組を多く抱えているため、賃金制度がない組合や、賃金構造維持分を把握できない組合も少なくないが、賃金構造維持分が推計できる組合は9,000円(是正が必要な場合はさらに1,500円以上を加える)の引き上げ額を要求し、賃金制度がなく構造維持分の推計もできない場合は、1万3,500円を平均賃上げ要求基準とし、是正が必要な場合は1万5,000円以上を要求基準とする。

企業内最低賃金協定の取り組みに関しては、18歳企業内最低賃金協定を締結していない単組ではまず協定締結と年齢別最賃協定の締結を図る。各年齢別の協定額は18歳=15万6,000円、25歳=16万4,000円、30歳=19万2,000円、35歳=21万6,000円と設定した。

一時金要求は昨年と同様、年間5カ月基準または半期2.5カ月基準とし、年間4カ月または半期2カ月を最低到達基準とした。

闘争体制については、統一要求日における要求集約活動を徹底するとともに、3月内解決に向けた取り組みを強めるとしている。統一要求日は2月24日で、統一回答指定日は3月17日及び18日(金属労協集中回答日)とした。