傷んだ雇用と労働条件の復元を/連合が13春季生活闘争方針を決定

(2012年12月21日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長、約669万人)は20日、都内で中央委員会を開き、2013春季生活闘争方針を決定した。すべての組合が賃上げ・労働条件の改善のために1%を目安に配分を求める。個別絶対賃金水準の重視や、これまでのエントリー方式をやめ、すべての構成組織が非正規共闘に参加することなどが今回の方針の柱。

「賃金デフレが、最大の原因」

写真・あいさつする古賀会長、連合第64回中央委員会

あいさつした古賀会長は、2013春季生活闘争に向けて、「デフレの原因について、世間では需給ギャップや日銀の金融政策、円高による輸入デフレ、人口減少による構造デフレなど様々な説が流布しているが、私たちは、賃金デフレが最大の要因だと考えている」と強調。「人件費の削減で利益をあげる、現場でがんばり生産性があがっても総額人件費は増やさないという配分の歪みこそが、日本社会全体の成長の足を引っ張っている」と述べて、近年の企業の労働側に対する配分抑制のスタンスが経済成長の足かせになっているとの持論を展開した。

また、今春闘の最大のテーマは、「『傷んだ雇用と労働条件』の復元によってデフレスパイラルの危機を回避することだ」とし、「とりわけ、この間、しわ寄せが集中している非正規労働者と大企業の関連企業や下請企業で働く労働者、中小・零細企業の労働者への配分を改善させ、底上げをはかることが重要だ」と強調した。

各組合での今後の要求策定に向けて、「雇用や労働条件は、『私』の問題であるとともに、『私たち』の問題であり、その維持・向上のために労働組合があることを意識喚起し、『私たちの要求』を練り上げてほしい」と呼びかけるとともに、「そのために、大手企業の組合は関連企業や下請企業の支援を徹底して行っていくことを要望する」と大手・親企業労組のサポートも求めた。

賃上げ・労働条件改善に1%を目安に配分を

方針では、「傷んだ雇用・労働条件」の復元をはかっていくため、労働条件の底上げや復元などを通じて、「すべての労働組合は賃上げ・労働条件の改善のために1%を目安に配分を求める取り組みを進める」とうたった。連合では、「『賃上げOR労働条件』ではなく、『賃上げand労働条件』だ」と説明しており、昨年より、賃上げにもウェートを置いた書きぶりとなっている。

賃上げについては、「賃金カーブの維持分を確保し、所得の生活水準の低下に歯止めをかける」とした。加えて、昨年と同様、低下している賃金水準の中期的な復元・格差是正、体系のゆがみ等の是正に向けた取り組みを進める。

賃金の個別絶対水準を重視しているのが今回の方針の特徴の1つ。「規模間格差や男女間格差の実態把握とその是正をはかることや、正社員と非正規社員との均衡・均等処遇の実現をはかるために、従来以上に個別銘柄の賃金水準を重視した取り組みを進める」としている。引き上げ幅にとらわれ、例えば、絶対水準が低い中小が大手の引き上げ幅と同じ水準を獲得することに満足すると、大手との格差はいっこうに埋まらないからだ。連合では、「要求方式は平均方式でも個別賃金方式でもいい。自らの賃金制度・賃金構造を把握したうえで、個別賃金実態を把握し、それをふまえて絶対額水準を意識した取り組みをしてほしい」としている。

はじめて最低到達水準値を示す

そのため、中小・地場の取り組みでは、中小労組を抱える構成組織が参画する「中小共闘」での「最低到達水準値」を、賃金下支えのために今回初めて設定した。30歳を19万円、35歳を21万円としており、これらが必要な生計費を満たす年齢ごとの最低水準だとしている。中小の全体の賃上げ要求としては、「基本的な労働条件としての月例賃金を重視し、賃金カーブ維持分と賃金引き上げ分(1%相当)を求めていく」としている。中小共闘が、賃金カーブ維持分が算定困難な組合に向けて示す賃金カーブ維持分は、4,500円となっている。

非正規労働者の処遇改善などのために設置する「非正規共闘」は、今回はエントリー方式ではなく、すべての構成組織が参画して取り組む。具体的な取り組みでは、組合員の労働条件改善を、未組織労働者や地域での時給相場にも波及させていくことを狙い、「地域別・職種別時給の実態値」を示し、全体の個別水準の引き上げをめざす。

なお、方針の討議では、質問・意見は1つもなかった。

最大のヤマ場は3月13日~14日

連合は中央委員会終了後、同会場で「2013春季生活闘争 共闘連絡会議 第1回全体代表者会議」を開催し、回答引き出しゾーンについて、最大のヤマ場を3月13日~14日とすることを確認した。また、第1先行組合の回答ゾーンを3月11日~15日、中小集中回答ゾーンを3月25日~29日などとすることも確認した。

中央委員会には、民主党の輿石東幹事長が来賓としてあいさつした。選挙結果について、「おわびの言葉さえも見つからない」などと陳謝した。古賀会長は冒頭のあいさつのなかで今後の労働者保護法制の揺り戻しへの懸念も示し、「『人』を『モノ』や『金』と同列に論じるのは言語道断であり、使用者にとって使い勝手がよいだけの雇用・労働の規制緩和は進めるべきではない。これまでは、連合の委員が参画して行きすぎた議論に歯止めをかけてきたが、今後は不透明だ」と発言。審議会で法案化するという基本を順守させるとともに、「私たちの運動の力を背景に拮抗力を働かせることも必要であり、その強化に取り組まなければならない」と述べた。