すべての組合で賃金構造維持を確保する/金属労協が2013闘争方針を決定

 

(2012年12月12日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連や電機連合など、連合に加盟する5つの金属産別労組でつくる金属労協(JCM、西原浩一郎議長、約205万人)は7日、都内で協議委員会を開き、2013春季労使交渉に向けた闘争方針である「2013年闘争の推進」を確認した。勤労者生活を守り、着実な景気回復を図るために「すべての組合で賃金構造維持分を確保」するとともに、産業実態にふさわしい成果配分を求める組合や産業間・内の賃金格差の解消をめざす組合は「積極的に賃金改善に取り組む」とした。

「人材力を守り、高める」

写真・協議委員会のようす、あいさつする西原議長

主催者としてあいさつした西原議長は、2013闘争に向けたスタンスについて、「交渉環境は総じて、厳しさと不透明感・不確実性が高まるなかでの取り組みとなることを認識した上で、産業・企業が直面する危機を乗り越え将来展望を切りひらくための原動力であり、国際競争力の礎ともなる国内事業基盤の維持・強化を根っこから支える人材力・現場力を守り高めるために不可欠な『人への投資』を求めることとした」と説明した。

賃金については、「日本を支える基幹産業である金属産業の位置づけにふさわしい賃金水準をめざすことを基本とし、特に賃金水準絶対額を、より重視した取り組みとする必要がある」と述べたうえで、「基本的労働条件たる月例賃金の水準低下を阻止し、組合員の生活を守る観点から、賃金構造維持分確保をJC共闘における絶対的使命とする」と強調。さらに、「デフレの進行をくいとめるための賃金水準の下支えは、連合春季生活闘争において、一定の社会的波及力をもつ金属労協の妥協できない社会的使命でもある」と述べて、春闘におけるJCMの役割の重さもあわせて強調した。

具体的な取り組みの内容をみていくと、賃金では、「勤労者生活を守り、着実な景気回復を図るため、すべての組合で賃金構造維持分を確保し、賃金水準を維持する」とした。賃金構造維持分を確保するために、毎年、経営側に要求する必要のある組合は、賃金構造維持分を明確に把握し、現行の賃金水準を確保するように取り組むとしている。

中期的に「あるべき水準」への到達をめざす

賃金改善については、JCMでは「技能職35歳相当」という大くくりな職種別銘柄での「あるべき水準」を示して、中期的に同水準への到達をめざしている。あるべき水準は、 (1)各産業をリードする企業の組合がめざすべき水準である「目標基準」 (2)全組合が到達すべき水準である「到達水準」 (3)全組合が最低確保すべき水準である「最低基準」――の3段階で設定しており、その額(基本賃金)は「目標基準」が33万8,000円以上、「到達基準」が31万円以上、「最低基準」が24万8,000円程度(到達基準の80%程度)となっている。

これらの指標なども参考しながら、「中堅・中小企業を含めた金属産業の総合力を高める観点」で、「基幹産業にふさわしい賃金水準確立に向けた適正な成果配分、産業間・産業内の賃金格差等解消をめざす組合は、積極的に賃金水準に取り組む」としている。一方、中小企業では、賃金制度が未整備で、それが賃金水準低下の要因の1つになっているとして、すべての組合が賃金実態の点検に努めるなど賃金制度の確立に向けて取り組むとした。「2013年闘争の推進」を提起した若松事務局長は、2011闘争では999組合が賃金改善を要求し333組合が改善分を獲得、12闘争では1,107組合が要求して351組合が獲得した。13闘争でもこの流れを大事にしたい」と述べた。

一時金は今年も5カ月以上要求が基本

一時金の要求は、「年間5カ月以上を基本」とし、企業業績にかかわらず、最低獲得水準を4カ月と決めた。企業内最低賃金では、すべての企業連・単組が協定締結を図る。企業内最賃の水準は、「高卒初任給に準拠する水準に着実に引き上げていく」とし、15万4,000円以上もしくは、月額1,000円以上の引き上げに取り組む。JCM内での締結率は現在4割程度にとどまっており、若松事務局長は、締結を大手や中堅だけでなくサプライチェーン全体に波及させていきたいとしている。

60歳以降の就労確保では、「働くことを希望する者全員について、経過措置を利用せず、年金満額支給開始年齢と接続する65歳までの雇用を確保し、働きがいのある就労制度を構築する」とした。60歳以降の就労者は組合員化を図る。

闘争日程について、回答のヤマ場となる大手の集中回答日は例年、3月中旬に設定されるが、今回については今月20日に開催する戦術委員会で決定するとしている。