新産別「UAゼンセン」への移行を最終意思決定/UIゼンセン同盟定期大会

(2012年09月21日 調査・解析部)

[労使]

民間最大産別のUIゼンセン同盟は19~20日、名古屋市で定期大会を開催した。日本サービス・流通労組連合(JSD)との組織統合による、新産別「UAゼンセン」(2,560組合・136万1,240人見込み)への、組織全体での移行を最終的に意思決定した。また、11月6日の結成に向けた移行手続きや結成までの間、現在の役員体制で業務を遂行するための規約改定等を決定した。さらに「結成準備委員会報告」として、組織・機構や規約・規則、運動方針案や予算案を含む、UAゼンセンの全容が明らかにされた。

過去10年間の構造変化と新産別の課題

2002年9月にゼンセン同盟、CSG連合、繊維生活労連の3産別が統合し、UIゼンセン同盟となってから10周年に当たる定期大会であいさつした落合会長は、「結成当初は組織風土の違いや運営方法の違い等でギクシャクしたこともあったが、運動を継続し積み重ねたことによって、完全なる一枚岩となったと自負できる」と強調した。

一方でこの間、「UIゼンセン同盟の組織の概容はすさまじく変わってきた」とし、現勢116万2,917人 の組織人員を抱えるに至るまでの構造変化として、 (1)繊維関連部会は7.3万人から4.7万人、化学部会は12.1万人から11.1万人、地方部会は14.7万人から8.7万人に減少する一方、流通部会は23.6万人から54.3万人と大幅に、フード・サービス部会は7.9万人から14.1万人、生活・総合産業部会は12万人から15.3万人に増加した (2)パートタイマー等の短時間組合員が結成当時の24.4万人(約3割)から現在は57.8万人(約5割)と大幅に増加するとともに、男女比率が44対56と女性組合員が過半数を占めるに至った (3)300人以下の中小組合員が結成当時の1,886組合・15.9万人から、1,814組合・11.8万人まで減少した (4)2つのクラフト・ゼネラルユニオンが2007年当時の10.5万人から現在は8万人まで減少した――といった特徴をあげた。

そのうえで、落合会長はこうした変化を踏まえて新産別が直面する課題を指摘。まず、現行の6部会制から大括りの3部門制に移行することに触れ、「製造業系の組合員が減少している。日本の製造業全体の傾向だが、モノづくり産業は日本経済の、雇用の生命線であることから、組織力と政策力を付けていかなければならない」とし、「そのためには製造系組合が結集する部門を設置し、産別的な機能を強化していくとともに、国際産別と連携してグローバルな産業政策活動を展開していく必要がある」などと述べた。

また、「流通部門、総合サービス部門は規模が大きく拡大しているが、その構成はパートタイマー等の短時間組合員比率が圧倒的に高く、今後も加速していくことから大きな課題を抱えている」とし、「パートタイマーの組織化は今後も精力的に展開し、その力を背景に『同一価値労働同一賃金』の旗を掲げて活動を進めていかなければならない。そのことが正社員の雇用の安定にもつながる」などと強調した。

さらに、組織強化に関して「女性組合員の能力を活用していくことこそ組織強化の鍵」だとするとともに、「新産別の重点柱の一つは47都道府県支部の強化にある。都道府県支部の主たる活動は、加盟組合のサービス、指導活動と中小未組織の組織化の実績を作ることにあるといっても過言でない」と主張。そのほか、「クラフト・ゼネラルユニオンの組織化のテンポが遅い。賃金、雇用、労働条件の厳しい状況を改善させるためにも、組織拡大で影響力を行使しなければならない」とも述べた。

UAゼンセンの組織の全容が明らかに

大会では、「結成準備委員会 」報告として、JSDと進めてきた協議の到達点として、UAゼンセンの組織体制や運動方針(案)、予算(案)、結成大会の概要などを含めた全容が明らかにされた。

運動方針(案)では、運動の課題として、 (1)全加盟組合の参加・参画 (2)社会的影響力の発揮 (3)男女共同参画社会の実現に向けた運動強化 (4)ワーク・ライフ・バランス社会の実現――をあげ、そのうえで2013~14年度の重点方針に、 (1)組織体制の確立と組織強化・拡大 (2)人材育成・教育機能の強化 (3)産業別労使関係の構築と強化 (4)雇用確保と労働条件向上 (5)政策活動の強化と政治活動 (6)国際労働運動の強化 (7)組合員サービス活動の充実 (8)社会貢献、社会運動の取り組み――を盛り込んだ。

具体的に、 (1)組織関連では、本部・部門・都道府県支部体制の早急な確立や、組織強化の基本的手法としての「目標達成運動」の展開、医薬品・流通、介護・マルチサービス業界等戦略的領域を設定した機動的な組織拡大、当面150万人組織の実現等を打ち出した。また、 (2)人材育成では、年間の中央教育計画を立て加盟組合へ計画的派遣を要請するほか、「教育活動指針」に基づき教育活動を充実させ、「友愛の丘」を総合教育施設に位置付けリーダー育成に積極活用する。

(4)雇用・労働条件では、生産性3原則の考え方と行動の徹底、「合理化対策指針」に則った対応の推進、同一産業内・地域内・社会的な公正労働基準の確立と均等・均衡処遇の実現、労働条件闘争(春の交渉)の組み立て(賃上げ、期末一時金、退職金改定、労災付加給付改定にわたる闘争方針の策定や労働時間短縮、定年延長)等を盛り込み、 (5)政策・政治活動では部門における産業政策実現運動の充実、UAゼンセンとして新たな『地域産業振興とまちづくり政策』(仮称)の策定、『UAゼンセン重点政策』の整理と連合への意見反映、政策・制度実現のための『政策懇話会』設置などをあげた。

運動方針(案)は、その大部分でUIゼンセン同盟がこれまで展開してきた運動を継承し、さらに充実・強化を図る内容となっているが、本定期大会ではあくまで報告として確認するにとどめ、最終決定は新産別結成大会に委ねた。