組織拡大を推進して組合員11万人をめざす/フード連合定期大会

(2012年09月12日 調査・解析部)

[労使]

食品産業関係の労働組合(中小が約8割)で組織する、フード連合(江森孝至会長、292組合・約10.5万人)は10日、東京・有明で定期大会(中間年)を開催し、今春闘の総括を行うとともに、第4次組織拡大実施計画に基づく組織化の進捗状況等を確認した。組織拡大では、レアールパスコベーカリーズ労組(1,200人強)や、テーブルマーク労組(250人弱)など、新たに6単組が加盟した。今後、組合員11万人の実現をめざして取り組みを強化する考えだ。

「パート労働者の組織化はもう先送りできない」(江森会長)

あいさつした江森会長は、当時の食品連合と食品労協が大同団結して結成(2002年11月)されたフード連合が、本大会で10周年という節目を迎えることに触れ、「これまでの10年からこれからの10年に向かって、新たな一歩を踏み出していく大会だ」などと述べた。

そのうえで、組織人員が、結成当時の10万3,941人から、2005年には9万4,951人まで落ち込んだものの、直近では10万5,196人(うちパート等8,310人)まで回復したことに触れ、「グループ企業とパート労働者の組織化を重点的に取り組んだ成果と受け止めている。結成当時はゼロだったパート組合員が、現在では1割近くなった。この1年間で21単組から2,955人の組織拡大実績があったが、その約3分の1に当たる978人はパート労働者だ。もうパート労働者の組織化を先送りすることはできない」などと指摘。一方、「食品製造業で働く労働者は約132万人と言われるが、フード連合は1割も組織していない」とし、「昨年決定した運動方針の最重要課題である、組織拡大のさらなる推進に向け取り組みを強化していく必要がある。11万フード連合が実現できるよう、本部としても全力をあげる」との考えを強調した。

27組合がベア・賃金改善を獲得

大会では、 (1)賃金の引き上げ (2)一時金の安定確保 (3)企業内最低賃金の協定化と水準の引き上げ (4)労働時間の短縮 (5)パート等の組織化と処遇改善――の5つを統一要求課題に設定し、プラス1で「公的年金受給空白期間への対応」に取り組んだ、2012春闘を総括した。

賃金の引き上げ結果(6月30日最終集計)は、平均方式で昨年を64円上回る5,376円。同一組合比では5,399円(1.85%)と昨年を81円(0.05%)上回り、さらに300人未満では昨年比66円(0.04%)増の4,012円(1.66%)などとなった。こうした結果について、「今次春闘の厳しい環境のなか、要求趣旨にこだわってベア・賃金改善を獲得した組合が、昨年とほぼ同数の27組合あったこと、金額比較で195組合中150組合(76.9%)が昨年の実績(並み)かそれ以上であったことは、生活基盤の確保ができたと捉え評価できる」と総括した。

一時金は厳しい交渉結果に

一時金については、年間夏冬型の妥結結果(95組合)で、昨年より0.31カ月少ない平均4.92カ月となった。同一組合比(90組合)でも平均4.97カ月と、昨年を0.27カ月下回った。また、年間で最低目標4カ月以上を獲得した組合は、95組合中75組合(78.9%)にとどまり、金額比較では149組合中、昨年の実績(並み)かそれ以上だったのは85組合(57.0%)と厳しい交渉結果となった。総括では、「業種等にバラつきはあるが、震災後の復興度合いの影響が直接、業績に出ている企業、被災した工場等の損失や食品風評被害で売上げが大幅に減少した企業、放射性物質の検出等で回収を余儀なくされた企業の影響等で昨年を大きく下回った」などと分析した。

依然として2,000時間以上が100組合以上

一方、2015年3月までに2,000時間未満の合意をめざす「時短200ゼロ」の取り組みについて、今春闘では69組合が取り組み、うち16組合が一定の成果を上げた。総括では、「1日休日を増やすことで、組合員の賃金の時給換算で800~1,000円程度の改善になる。所定労働時間の短縮は実質的な賃金水準の向上にもつながる」と評価する一方、「依然として2,000時間以上が100組合以上ある」ことなどを指摘した。

また、パート等の処遇改善をめぐっては、取り組んだ77組合(昨年69組合)中、49組合(同46組合)が妥結に漕ぎ着けた。その中では、賃金改善分500円を獲得した組合や、準社員の賃上げ4,000円を獲得した組合、特例一時金を獲得した組合など、全体として22組合が一定の成果を上げたことが報告された。

さらに、公的年金受給空白期間への対応については、全体の40%以上に当たる138組合が交渉を展開した。結果、法改正の動向を睨みながら「継続交渉」となった単組が大半を占めたものの、3組合が65歳までの継続雇用の設定条件を廃止するなど前進。「秋に向け、継続した取り組みが重要」などと総括した。

このほか、春闘総括では連合が「有志共闘」で初めて取り組んだ、集中回答指定日前の公表について、「春闘全体に対する充分な相場形成への波及効果があったかどうか疑問が残る面がある」(江森会長)とし、「前倒しの公表は慎重に対応する必要がある。連合の果たすべき役割と責任、指導性を求めるとともに、回答指定日の意義など組織内で充分検討する必要がある」などとした。

質疑・討論では環太平洋経済連携協定(TPP)問題について、「参加することになれば、さとうきび・てんさい等の畑作から加工、流通まで、関連業者の存続が危ぶまれる危機的事態となる。フード連合として今後、どのような対策を検討しているか」(糖業部会所属の複数単組)といった指摘があった。これに対し、フード連合としては、「実質的な日米FTAであるTPPではなく、ASEANを中心としたアジア重視の枠組みの経済連携協定が国益にかなう」というスタンスを貫くことを基本に、「TPPを慎重に考える国民会議」などと連携しながら、引き続き取り組んでいく方針を確認した。