組織運営を部門別から業種別主体に/基幹労連定期大会

(2012年09月12日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼や造船重機、非鉄金属の組合で構成する基幹労連(神津里季生委員長、約25万人)は6・7の両日、宮城県仙台市で定期大会を開催し、向こう2年間の運動方針を決めた。2003年に鉄鋼労連、造船重機労連、非鉄連合の統合により発足して以降、旧産別の枠組みである鉄鋼、造船重機、非鉄の3つの部門を核に活動を展開してきたが、今後、業種別の運営を中心軸にすることを確認した。役員改選があり、神津委員長(新日鉄)、工藤智司事務局長(三菱重工)を再任した。

春闘期には部門ごとに「連絡会」設置も

基幹労連は連合発足以前、総評、同盟等に所属していた3つの産別が旧ナショナルセンターの枠を超え、2003年9月に統合して発足した。組織運営では統一的な枠組みを前提にしながらも、春闘や産業政策の取り組みの経緯を踏まえ、鉄鋼、造船重機、非鉄の3部門にいずれにも分類できない特別部門を加えた4部門による組織運営を基本としてきた。

統合に当たって、「当面は部門運営を行う」とし、段階的にこの過渡的措置からの脱却を図ってきたが、結成10周年を控え、さらなる産別一体的な運営をめざすため、「業種別部会を活動の中心軸」とすることを決めた。

業種別部会としては、これまで部門の下に設けられた業種別部会の枠組みを踏襲。鉄鋼総合、普通鋼、特殊鋼、フェロアロイ、二次加工、鉄鋼一般及び鉄鋼関連、総合重工、造船、機器およびエンジニアリング、非鉄総合および非鉄関連となる。業種別部会運営の強化に向けて、本部体制も見直し、各部会には事務局長補佐を配置することにした。

一方、春闘では鉄鋼や重工の総合組が交渉をリードする構造は継続することが予想されることから、大会の質疑では「部門内の情報交換が薄れる」との危惧も出された。こうした声を受け、運動方針では2年サイクルでの賃金交渉となるAP春季取り組みでは、必要に応じて業種別部会の情報を横通しするため、部門ごとに「連絡会」を設けることも盛り込んでいる。

2012年の春季取り組みと今後の課題も議論

今春闘で基幹労連は2年サイクルの交渉である「AP12春季取り組み」の結果、新日鐵など鉄鋼総合組合では、定昇実施のみとなったが、両立支援関連の原資投入では筋道をつけた。また、2年を1つの単位に3,000円の賃金改善原資を要求した三菱重工などの総合重工組合では、「今次交渉では応じられない」として、具体的な回答には至らなかった。

こうした動向の一方、ここ数年、業種別部会ごとに総合組合との格差是正に向けた賃金改善取り組みは拡大してきている。今季交渉で業種別組合は「労働条件の底上げ・格差改善」を要求趣旨に据え、3,000円を目安に部会ごとに要求を設定した。大会報告によると、賃金改善を要求した組合は245組合で4分の3は具体的回答を引き出せなかったものの、4分の1で賃金改善の実施(26組合)またはその目途をつける回答を引き出したとしている。

年間一時金については、57組合で昨年水準を上回って妥結したが、半数の組合が前年実績を下回った。「生活を考慮した要素」として基礎的な課題としている「年間4カ月」については、約7割の組合が確保したとしている。また、力を入れているボランティア休暇については、制度の新設や既存の制度の充実・改善に52組合が取り組み、39組合で前進回答を引き出したと報告された。

質疑では重工部門から賃金改善について「(今次交渉では応じられないは)決してゼロ回答ではなく、状況を見て取り組んでほしい」(住重労連)の要望が本部に出され、本部は「2013年の格差改善の取り組みは積極的に支援する」と答弁。また、業種別部会では個別賃金実態調査の結果などを活用し、たとえば総合の90%を目標にするといった指標を設けて賃金改善の取り組みを後押しするとの考えを示した。

政策実現に向けて組織内候補の当選めざす

写真・あいさつする神津委員長、檀上のようす

大会冒頭のあいさつで神津委員長は、混迷を深める政治動向について言及。組織内からも民主党の政権運営に対する不信感がひろがっているものの、「私たちは政権交代をしたこの数年の意義、大きな流れの意味合いを見失ってはならない。そして、野田政権が実現している『決められる政治』の価値を見失ってはならない」と強調した。そのうえで、社会保障と税の一体改革関連の法案を成立させたことについて、「この意義は計り知れないものがある」と評価する一方、「あのまま漫然と自民党政権が続いていたら一体どうなっていたのか」「第3極に吸い込まれていくのは選挙目当ての人たちであり、本物と偽物を見極めなければならない」などと呼び掛け、ぶれない運動の重要性を訴えた。

今後予定される国政選挙の候補者推薦に当たっても、「基幹労連の政策に本当に賛同しているのか否か、日ごろの言動との関係も含めて精査していく」とし、当面は来年7月に行われる参院選挙で再選をめざす組織内候補の当選に向け、各組合がさらに活動を強化するよう求めた。