賃金実態の把握が今後の課題/JAM中央委員会

(2012年05月30日 調査・解析部)

[労使]

中小の機械金属労組を多く組織するJAM(眞中行雄会長、約38万8,000人)は29日、都内で第21回中央委員会を開き、2012年春季生活闘争の中間総括などを確認した。5月17日現在で、4,338円(単純平均)の妥結実績となった賃上げ交渉について、「厳しい環境のなかでも頑張っている」などと評価する一方で、賃上げ結果の差が広がっている100人未満規模の単組の約3割で賃金実態の把握ができていない点に着目。「非正規や中小労働者の所得改善のために、賃金実態の把握に取り組む」ことを今後の課題にあげた。

JAM中央員会/メールマガジン労働情報 No.821(2012年05月30日 調査・解析部)

5月17日現在の賃上げ集計によると、回答を引き出した1,055組合のうち993組合が妥結しており、妥結額(単純平均)は4,338円。昨年の同一組合実績を6円下回るが、ほぼ前年並みの水準となっている。回答を引き出した組合(賃金構造分が明確な単組)のうち、賃金改善を獲得したのは180組合(改善分の平均976円)で、賃金構造維持分を確保した組合も394あった。その一方で、57組合が構造維持分を確保できなかった。

一時金については、半期の回答を引き出した599組合のうち529組合が妥結。妥結額は59万9,836円(月数は1.94カ月)となっており、同一組合の前年比較では1万1,903円プラスだった。年間では、回答を引き出した354組合中309組合が妥結し、妥結額は111万938円(同4.13カ月)。同一組合での前年比較は2万6,389円プラスとなっている。

眞中会長はあいさつで、こうした内容に触れ、「超円高やヨーロッパの金融危機など取り巻く環境の厳しいなかにあっても、『賃金をこれ以上下げない』『状況が整えば過去の低下分を1,500円づつ復元していく』という基本方針を各単組の交渉に反映し、勢力的な交渉を展開した。厳しい環境のなかでも頑張っているという結果だ」などと評価した。

100人未満規模の約3割で賃金実態が把握できていない

賃上げ集計を規模別にみると、300人以上の規模の妥結額が5,000円を超えている一方で、100~299人規模は4,558円、100人未満は3,958円で4,000円割れしているなど、規模間の格差が鮮明になっている。

回答を得た単組の賃金実態の把握状況にみると、回答の内訳が把握できていない組合の割合は、300人以上の単組で10.5%。これに対し、100~299人の割合は21.2%、100人未満では31.5%に跳ね上がっていた。さらに、賃金構造維持分がわかっている場合とわからない場合の回答額を比べると、「賃金改善の獲得にせよ、賃金構造維持分を確保するにせよ、賃金実態の把握による賃金構造維持分の把握が、交渉における大きな力になっていることが明らか」だという。

中間総括は、「非正規労働者や中小企業労働者の所得の改善をめざしていくために、賃金実態の把握に基づく課題に取り組む必要がある」と指摘。今後の課題として、 (1)賃金制度がないところでは、賃金構造を明らかにし、賃金構造維持分確保の取り組みに加えて、賃金制度および賃金カーブの整備をめざす (2)すべての単組は、30歳または35歳の一人前労働者あるいは標準労働者の水準を情報開示し、全体で賃金水準の社会的相場をつくっていく取り組みを強化する (3)賃金構造維持分を明示できている単組で、個別賃金が情報開示できていない単組では、情報開示もできるよう取り組む――ことなどをあげている。

また、2011春闘から掲げている、賃金水準の低下が認められる単組などが1,500円以上の水準引き上げをめざす取り組みについては、「7,500円を中期的に賃金改善・是正していこうとの方針を出して2年目であり、今年の評価をしていかねばならない」(藤川慎一副会長)として、賃金全数調査から追跡して把握するとした。

78組合が定年延長の検討に着手

一方、60歳以降の雇用確保の取り組みについては、今春闘で「577単組が取り組み、再雇用が多いが、78単組は将来を見据えた定年延長の検討に着手している」(眞中会長)など、一部で進展がみられるものの、現状は「関連法案が審議中で、労使協議が止まっているところが多い」ことなどから、中間総括は「情報開示活動を進め、今年の労働協約の最重点課題として統一的な取り組みを展開する態勢を整える必要がある」と強調している。