JR三島・貨物の経営安定と組織活動に注力/国労の闘争方針

(2012年02月01日 調査・解析部)

[労使]

国鉄労働組合(石上浩一中央執行委員長、組合員数:14,000人)は1月28日、都内で拡大中央委員会を開催し、2012年春闘でベア5,000円の統一要求を行うことなどを盛り込んだ当面の闘争方針を決定した。長年にわたる中心的課題だった「JR不採用問題」解決後初の中央実行委員会では、依然経営基盤が脆弱なJR三島(北海道、四国、九州)とJR貨物の経営安定化や組織拡大にも力を入れていくことを確認した。

87年に旧国鉄が分割・民営化される際、国労などの組合員だった職員の多くがJRで採用されなかった「JR不採用問題」について、2010年4月に政府から、組合員1人あたり平均2,200万円の解決金を支払う和解案が示された。組合及び支援者団体側もこれを受け入れ、国労が昨年7月に開催した定期大会で、25年にもおよんだJR不採用問題の解決を宣言している。

冒頭の挨拶で石上委員長は「JR各社との和解を活かし、組織拡大を可能にする条件は全職場に広がっている。全組合員・各機関が組織拡大への自信と展望を作り上げながら、国労の存在意義を高め、健全な企業の発展と働き甲斐のある職場づくりのために全力をあげなければならない」と訴えた。

闘争方針では、今後の重点課題のひとつとして、経営基盤が弱く、完全民営化の目処が立っていないJR三島・貨物の経営安定に向け、政府に対し、恒久的な支援策を求めていくことを確認した。

JR三島・貨物は経費削減を進めており、国労ではこれが輸送障害や重大死傷事故にもつながっているとしている。1月16日には、JR瀬戸大橋線(JR四国)で電車が立ち往生し、乗客が5時間にわたって閉じこめられるという事故が発生。パンタグラフに塩分が付着し、車体に過電流が流れたのが原因だった。過去に同様の事故が発生したJR西日本では、部品の一部に電気を通さないものに替えるなどの対応策をとっていたが、JR四国では予算不足からこれを怠っていたという。

各社に対しては、固定資産税の減免措置など一定の支援策がとられているものの、「抜本的解決策となっておらず、引き続き安全・安定輸送を支える継続的・恒久的支援策が必要だ」として、国会議員への要請行動を強化する方針を示している。

2012年春闘方針については、JR各社の経営状況や組合員アンケート調査などを踏まえ、5,000円のベアを要求する。定期昇給の完全実施や初任給の改善、第二基本給制度の廃止も求める構えだ。