2012春闘が実質的にスタート/連合と経団連の春闘をめぐる懇談会

(2012年01月25日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)と経団連(米倉弘昌会長)は25日、都内で懇談会を開催し、これから本格化する春季労使交渉をめぐって意見交換した。連合側は、中小企業での賃金の格差是正の必要性などを強調し、定期昇給にこだわった交渉をしていきたいと主張。経団連側は、労働条件をめぐって一律の対応は困難だとし、あくまでも個別企業ごとに解決していくべきだと反論した。

連合側は会長、会長代行、副会長、事務局長らが出席。経団連側は、会長、副会長、事務総長らが顔を揃えた。

賃金水準を維持する原資として定昇にこだわる/連合

懇談会のなかで連合側は、中小企業の労働条件について触れ、中小企業は賃金、一時金、退職金のどれをとっても大手との格差があると指摘。「賃金の引き上げ幅は大手の定昇よりも低いものの、現行賃金水準を維持する原資として定期昇給にこだわった交渉にしたい」と今春闘に向けての抱負を伝えた。また、定期昇給の実施について、「そもそも習熟度の向上に基づいて実施されるものであり、入社時からの社員との約束事だ」と述べて、定期昇給の負担の重さを主張する経団連側をけん制した。

非正規雇用については、「多様な働き方をすべて否定はしないが、多様な働き方であっても均等・均衡処遇は守られなければならず、正社員との理不尽な差別があってはならない」と強調した。また、政治や労使の役割に関連して、「労使で将来を見極め、労使が納得性を持たないといけない。経団連のような企業のトップが集まる団体であれば、日本を将来どうしていくのかということを言及していくべきだ」と意見した。

あくまで個別企業での解決を/経団連

こうした連合側の主張に対し、経団連側は、まず中小企業の労働条件について、中小企業の役割は震災時のサプライチェーンの寸断時の対応をみても重要だと考えているが、業種によっても状況は異なり、一律に議論していくことは難しいと指摘。あくまで個別企業で解決していくべきだと主張した。

非正規雇用の問題については、今のままで良いとは思っていないと言及する一方、正社員へ転換するケースも増えており、正社員と非正規社員を合わせたトータルで人件費を考えていかなくてはいけないと主張。また、法律や規制で非正規雇用の活用を縛っていくべきではないということも併せて述べた。

また、経団連側は、春闘をめぐる情勢認識について、グローバル化の認識で労使に違いがあるとコメント。競争に勝つ観点やグローバル化に適した人材を育成していくことの必要性を訴えた。さらに、現場力も大事だが、適正な配分も考えなくてはならないとし、教育や労働環境の整備、福利厚生といった面での取り組みをあげて、人への投資は実践しているとも訴えた。

なお、エネルギー確保の問題については、連合側は再生エネルギーも大事だが、化石エネルギーも重要だと指摘。原油価格が上昇している状況では労使で一致した取り組みが必要だと発言した。一方、経団連側は、電力確保の問題から国内空洞化を懸念しているとして、先を見越した対応を労使で行うことが必要だと強調。安価に電力を賄うことも必要だとして原子力発電の必要性を訴えた。