賃金低下の組合は1,500円以上の改善をめざす/JAMの2012春季生活闘争方針

(2012年01月25日 調査・解析部)

[労使]

機械金属関連の中小労働組合を中心に構成する産別労組であるJAM(眞中行雄会長、38万8,000人)は20日、都内で中央委員会を開催し、賃金構造維持分の確保を基本とする「2012春季生活闘争方針」を確認した。賃金の是正・改善については、ここ数年間に賃金構造維持分を確保できず、賃金水準の低下が認められる単組などが、昨年に引き続き1,500円以上の水準引き上げをめざす。

あいさつした眞中会長は、2012年春闘に向かうスタンスについて「連合方針にもあるように、東日本大震災によって被災した地域の復興・再生をなし遂げると同時に、デフレスパイラルや少子高齢化など日本の構造的な問題解決に向けての安定成長に回帰させる取り組みにしなければならないとの考えに立ち、まずは現行賃金水準を下げない、賃金制度のないところは制度化に向けた準備をする、中期的視点にたって下がった賃金水準を戻していく、これらの取り組みを基本に据えたい」と強調した。

近年の所得回復をめざす

闘争方針は、基本的に昨年と同様の内容となっている。しかし、JAMではマクロの経済状況などは昨年よりも厳しいとみており、方針は、「交渉の基本的なスタンス」のなかで「2012年春季生活闘争のポイントは、取り巻く環境が昨年以上に厳しい中で、昨年と変わらない要求を掲げ、交渉し、成果を引き出すことにある」と明記。賃金・一時金については、「この間の所得低下の回復をめざす取り組みを行う」とし、賃金構造維持分の確保を基本としたうえで、賃金是正・改善を含む要求を行うなどして、1%を目安とする配分の是正をはかるとしている。

具体的な要求内容をみると、賃金水準の維持では、 (1)賃金制度のあるところでは賃金構造維持分を確保する (2)賃金制度はないが、賃金実態の把握に基づいて推計できる場合は、その相当分を要求し、確保する (3)賃金制度がなく、賃金構造維持分の推計もできない場合は平均賃上げ要求基準で4,500円以上の要求を行う――とした。

賃金の是正・改善については、ここ数年間で、構造維持分を確保できなかった単組や、賃金制度がなく妥結額が4,500円未満の単組で賃金水準の低下が認められる場合に、中期の是正目標を定め、1,500円以上の水準引き上げをめざす。1,500円以上という内容は昨年方針と同様。例えば、賃金水準の点検後、ある組合で低下分が4,500円と確認された場合には、3年かけて是正し、7,500円なら5年かけて是正していくという考え。JAMの組合員賃金全数調査によると、300人未満の単組では2000年~10年で7,245円の低下がみられるという。また、構造維持分を確保してきた単組でも、賃金分布の偏りや歪みなどが生じていれば、賃金改善・是正の要求を組み立てる。

個別賃金での標準労働者要求基準は、高卒直入社の30歳で26万円(所定内賃金)、35歳で30万5,000円(同)とした。

60歳以降の賃金水準は月例ベース22万円など3つの目安で

企業内最低賃金協定の取り組みでは、協定を締結していない単組で、 (1)18歳以上最賃協定 (2)年齢別最賃協定 (3)全従業員最賃協定――のいずれかについて協定締結を要求する。

一時金は、年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とし、最低到達基準を年間4カ月または半期2カ月とする。

高齢者の継続雇用の協定締結の取り組みでは、希望者全員の65歳までの雇用を確保するとする「65歳までの雇用・所得確保に向けた当面の方針」に基づいて取り組む。60歳以降の賃金水準については、 (1)年収ベースで月当たり28万円 (2)月例賃金ベースで22万円 (3)月例賃金ベースで55~59歳の平均額の60%――のいずれかを目安にして要求する。28万円は総務省の家計調査をベースにした数字で、22万円はJAMの賃金全数調査をベースに算出した。

要求提出は、2月21日までにすべての単組が行うとした。統一回答指定日は3月13日と14日としている。