平均賃上げ要求基準を4,500円に――JAM討論集会

(2009年12月9日 調査・解析部)

[労使]

機械金属の中小企業を中心に組織するJAM(河野和治会長、約40万人)は12月4、5の2日間、静岡県熱海市で「春季生活闘争中央討論集会」を開き、来春の賃上げ闘争方針案を議論した。方針案の柱は、 (1)賃金構造維持分の確保 (2)企業内最低賃金協定の締結 (3)時間外割増率の引き上げ。連合中小共闘の方針を踏まえ、賃金構造分の目安として、平均賃上げ要求基準を4,500円と設定した。ベースアップについては、統一要求を見送り、「必要に応じて、構造維持分を確保した上で500円以上の改善是正を要求」として、単組の個別対応となった。討論集会での議論を踏まえ、来年1月14~15日に開かれる中央委員会で正式決定される。

「雇用維持と賃金水準の低下阻止を最優先に」

あいさつした河野会長は、「中小企業の置かれた厳しい経営環境を踏まえ、雇用を守ること、共闘体制を強化して賃金水準の低下を阻止することを最優先に取り組む。いわば、緊急避難的措置として、個々の企業状況への対応は単組ごとの判断に拠ることとする」と述べ、ベースアップの統一要求見送りについて理解を求めた。そのうえで、「企業が永続的に発展するためには、労使の信頼関係が基礎となる。人はコストではなく、企業が有する最大最強の資産であり、これを生かすのが経営者の仕事。今回は賃金のみならずとくに厳しい環境であり、労使の信頼関係に基づく協議が行われなくてはならない」と訴えた。

具体的な要求案をみると、賃上げについては、賃金構造維持分が把握できている単組では維持分を確保するとし、構造維持分の推計ができないところでは、目安として「4,500円以上」を平均賃上げ要求基準として設定。一方、ベースアアップについては、人材確保に向けた初任給の引き上げや賃金分布の歪みの是正などの必要に応じて、賃金の改善・是正「500円以上」に取り組むこととし、各単組の個別の判断にゆだねている。個別賃金要求では、高卒直入30歳で260,000円、35歳で305,000円を標準労働者要求基準としている。

企業内最低賃金要求では、18歳以上最賃や全従業員最賃、年齢別最賃のいずれかの協定締結を求めている。設定基準については、18歳以上最賃で、正社員の月例賃金を所定内労働時間で割り戻した時間額としており、企業内に働く非正規、未組織労働者を視野に入れた均等処遇を求める要求となっている。時間外割増率の引き上げについては、時間外労働が月45時間を超える場合の割増率50%引き上げを目指し、最低でも25%を超えた率とすることとしている。一時金要求では、年間5カ月基準とし、最低到達目標を4カ月としたうえで、「個々の企業状況への対応を含む取り組みは、単組毎の対応に拠ることとする」として、個別対応の余地を残す方針となっている。

非正規労働者に対する処遇改善も要求として掲げており、直接雇用の非正規労働者に対しては、賃金、安全衛生、育児・介護休業等の処遇・雇用環境に関する何らかの改善に取り組む。派遣労働者については、派遣契約の内容、労働条件、派遣元における社会保険の加入状況などの点検活動を強化する考えだ。

闘争の前段での、賃金や企業経営などの実態把握を重視。2月上旬まで全単組訪問オルグを実施して、実態把握を徹底する。そのうえで、「賃金に関する何らかの要求提出を指導し、雇用問題が発生し、雇用確保を最優先せざるを得ないと判断される単組については、地域組織、本部と連携した取り組みを行う」としている。

討論では、ベア統一要求見送りについて、「昨年は、厳しくても内需拡大のためにベア積まなければという理屈で取り組んだ。中小が交渉のときに欲しいのは、この理屈だ。『単組に応じて』とかでなく、賃金はこうあるべきとか、それをめざそうということで団結できる方針を出すべき」「昨年は『ベア要求』をなんとか取り組んだ。今年は一転して『ベア要求なし』では闘争が組めない。昨年は『ベア要求』したからこそとれたところもあった」との意見が続出。一時金についても、「一時金について『単組毎の対応に拠る』では弱い。4カ月は守るというようなものがないと闘いにくい」「会社側から『JAMの方針も会社の状況に応じてといっている』と言われて、はじめから交渉にならない」など、より積極的な方針をもとめる意見がでた。