5,000円の要求目安を提示/連合の2010闘争方針

(2009年12月4日 調査・解析部)

[労使]

連合は3日、都内で中央委員会を開き、「2010春季生活闘争方針」を決めた。すべての組合が定期昇給に相当する「賃金カーブ維持分」の確保に取り組む。その際、賃金制度未整備の中小労組などには、5,000円の要求目安を初めて示した。古賀伸明会長は、「どんな職場においても、賃金水準の低下を食い止め、維持・改善する」などと訴えた。

連合中央委員会

すべての労働者を対象に処遇の維持・改善を

古賀会長はあいさつで、2010年闘争の取り組みについて、(1)全労働者を対象とした春季生活闘争の推進 (2)賃金水準維持の取り組みの徹底 (3)雇用の安定・創出に向けた取り組みの強化 (4)共闘連絡会議の体制強化 (5)政策・制度との連携強化――の5つの柱をおくと説明した。そのうえで、「すべての労働者を対象に処遇の維持・改善に取り組むことを柱の一つにした。連合が非正規雇用労働者を含む、組合員でない労働者も対象に、取り組みの柱として方針を作成したのは初めてである」と強調。「どんな職場においても、正規・非正規を問わず、賃金水準の低下を食い止め維持・改善する取り組みを推進したい」などと述べ、すべての労働者を対象とする春季生活闘争を2010年からスタートするとの意気込みを示した。

また、具体的な賃金水準維持の取り組みでは、「賃金水準の低下を阻止するため、産別の指導を前提としながら、賃金制度が未整備の組合に1歳・1年間差の社会的水準5,000円を初めての試みとして提起した」ことを紹介。さらに「これにより、賃金制度がある職場は『カーブ維持』、賃金制度がない職場では『5,000円』、パート等労働者は『時給30円引き上げ』を求めることで、全体として『賃金水準維持・改善』を図る」と主張した。

大手はカーブ維持分の財源開示を

闘争方針は、「賃金水準の低下を阻止するため、賃金カーブ維持分の確保をはかる」ことを提起。このなかで、5,000円の基本目標を初めて示した。これについて、團野久茂副事務局長は、「定期昇給制度があり、賃金カーブ維持分を労使確認できているところはその財源を取りに行くが、賃金制度が未整備でカーブ維持分がわからない組合は、5,000円を目標に取り組む」と説明。さらに、「(賃金制度の整っている)大手組合は、自分たちの持つ制度上のカーブ維持の財源の開示して欲しい。連合は少なくとも3月10日ぐらいまでに財源報告を求め、それを把握・整理したうえでその財源を中小に渡したい。そして、産別指導の下で全体が賃金カーブ維持分を取りに行き、全体として賃金水準を維持する」考えを明らかにした。

なお、中小共闘の方針は、賃金カーブの算定が困難な組合の賃上げ要求目安を「5,000円以上(賃金カーブ確保相当分目安4,500円+賃金改善分500円以上」に設定。パートタイム労働者等の待遇改善に関してはパート共闘が、地域別最低賃金の引き上げや成果配分、正社員との格差是正などを勘案して、(1)絶対額1,000円程度(2)(埼玉県で時間給920円などとしている)連合の県別リビングウェイジを上回る水準 (3)時間額30円程度の引き上げ(定昇込み)――のいずれかに取り組む方針を提示している。09春闘同様、「昇給ルールの明確化」や「一時金の支給」「正社員への転換ルールの明確化・導入」なども求めていく。

このほか、すべての組合が取り組むべき課題(ミニマム運動課題)として、「企業内最低賃金の協定の締結拡大と水準引き上げ」や「総実労働時間の短縮」、「時間外・休日労働の割増率の引き上げ等による雇用の安定・創出」なども掲げている。

政策・制度実現を「車の両輪」で

一方、古賀会長は、賃金水準の維持・改善と併せて、政権交代を受け、政策・制度実現の取り組みを2010闘争の「車の両輪」と位置づけたことも強調した。政権交代により、連合が求めてきた「雇用と生活のセーフティネットの拡充」や「生活者重視の予算配分」が実現する可能性も大きくなっているだけに、春季交渉期における政策制度要求の実現に向けた取り組みを一段と強化する構え。古賀会長は、「ナショナルセンターとして、社会的キャンペーンの展開をはじめ、経営者団体などとの意見交換、政府との政策協議、2010年度予算での生活関連法案に関わる民主党などとの連携を図る」と訴えた。

賃金水準維持の方針を支持

討議では、賃金水準維持の方針を支持する意見があがった。電機連合は、「交渉は相当厳しいものが想定されるが、賃金水準の維持は組合員の生活を維持することに加え、内需の底割れを防ぎ、日本経済の回復に寄与する重要な取り組みだ」と発言。JAMも、「年々低下し続けてしまった賃金水準を守りきるために、構造維持分の確保に向けた取り組みを強化したい」としたうえで、賃金制度の確立についても「まず賃金の現状を把握し、分析し、将来を見据えた労使協議が開始できるよう、それぞれの実情に合わせた賃金制度の確立に向けた検討もさらに強化していきたい」と決意表明した。自動車総連からは、「連合方針を踏まえ、産別として要求方針の詰めの議論を行うが、全ての組合で賃金カーブ維持分に徹底的に拘ることと、組合員の努力・頑張り、格差是正、賃金体系是正への対応などの観点を踏まえ、賃金改善に取り組む組合の下支えをすることの2点を包含するものとしたい」などと述べた。