賃金構造維持の完全実施を/金属労協の2010闘争方針

(2009年12月4日 調査・解析部)

[労使]

自動車や電機、鉄鋼、造船などの産別で構成する金属労協(IMF・JC、200万人)は1日、都内で協議委員会を開催し、2010年の春季交渉に向けた賃上げや労働時間短縮などの要求の枠組みを示す「2010年闘争の推進」を決めた。賃上げ要求では、賃金水準の低下に歯止めをかけるため、賃金制度に基づく定期昇給(賃金構造維持分)の完全実施を求めていく方針を確認。西原浩一郎議長はあいさつで2010闘争について「雇用の安定・確保と雇用創出を最重視する」ことと、「賃金水準・家計収入の落ち込みに歯止めをかけ、内需の底支えを図る」ことを強調した。

留意すべきは雇用とデフレ

冒頭、西原議長は金属産業のおかれた現状について「全体として、生産・収益面で一時期の極めて深刻な事態からは底を打ちつつあるとの感はあるが、業種・企業ごとの回復状況には大きなばらつきがあり、特に中小企業では総じて深刻な状況が継続している。特に直近の急速な円高基調で推移する為替動向には、恐怖さえも覚える」との見解を表明。「円高の進行は、デフレをより進行させるとともに、金属産業の雇用にも重大な打撃を与えかねない」として、政府に対し、「円高に対抗する断固たる財政・金融政策を求める」と述べた。そのうえで、2010闘争にあたり、「特に留意すべきは1点が雇用、2点がデフレの問題だ」と強調。「産業・企業状況を踏まえながら、協議・交渉などを通じて雇用の安定・確保と雇用創出を最重視した取り組みを進める」とともに、「賃金水準・家計収入の落ち込みに何としても歯止めをかけ、内需の底支えを図らねばならない」と訴えた。

賃金水準の維持・確保に全力を傾注

賃金の具体的な取り組みは、「環境の厳しさを踏まえ、JC全体で賃金改善に取り組むことは困難と判断した」ことから、賃金水準の維持・確保に全力を傾注することとした。賃金制度が確立されているところは、その完全実施による制度運営と賃金水準の維持・確保に取り組み、賃金制度が未整備のところでは、賃金実態を把握して賃金維持水準の確保を図る。そのうえで、条件の整う組合はJCがめざす「あるべき水準」を踏まえ、格差是正などの課題解決に向けた賃金改善に取り組むとしている。

また、金属産業にふさわしい賃金水準の実現をめざした、「おおくくり職種別賃金」の取り組みでは、基幹労働者(技能職35歳相当)の「あるべき水準」として、09年闘争と同様に、(1)目標基準(めざすべき到達水準):基本賃金で33万8,000円以上(2)標準到達基準(標準的な労働者が到達をめざす水準):同31万円以上(3)最低到達基準(全単組が到達をめざす水準):標準到達基準の 80%程度(24万8,000円程度)――の3つのポイントを示している。

賃金の底上げにつなげる取り組みも強化

一方、2010闘争では、企業内最低賃金協定の締結促進と水準の引き上げの取り組みを強化する方針も打ち出した。企業内最低賃金協定は、「組合員の賃金の底辺を支えるとともに、産業別最低賃金に連動し、同じ産業で働く未組織労働者の賃金の底上げにも寄与する」(西原議長)ことから、水準を高卒初任給に準拠する水準に引き上げるべく取り組みを強めてきた。しかし、現行の締結率は43%に過ぎず、協定締結組合の平均水準も月額15万2,918円にとどまっている。「高卒初任給は製造業平均が15万8,500円、JC登録64組合の平均も16万552円で乖離がある」(若松英幸事務局長)として、2010年闘争では「月額15万4,000円以上の締結をめざす」構えだ。

なお、一時金要求は年間5カ月を基本に、今年はとくに獲得実績が4カ月に満たないケースが増加していることから、最低でも4カ月確保にこだわる。このほか、改正労働基準法に対応した時間外割増率の引き上げや、非正規労働者の労働条件改善と組織化などにも取り組むとしている。集中回答日は3月第3週の方向で検討する。