15%の病院で「過労死ライン」超える36協定締結―医師ユニオン調査

(2009年12月2日 調査・解析部)

[労使]

地域の拠点とされる1,091病院の約15%にあたる168病院で「過労死ライン」とされる月80時間以上の時間外労働を定めた36協定が結ばれていた。勤務医らでつくる全国医師ユニオン(植山直人代表)らがまとめた「医療機関における36協定全国調査結果」で、こんな実態が明らかになった。

調査は、大学附属病院、国・公立、労災病院、赤十字病院、済生会など地域における拠点とされる全国の主要病院1,549カ所を対象に、全国医師ユニオンと全国医師連盟が合同で実施したもの。2008年末から09年初頭に、全国の労働基準監督署に直近一年半の間になされた36協定の開示請求を行い、開示された1,091病院の協定を集計・分析した。同ユニオンでは、「開示されなかった458病院は、この一年半の間に、協定の締結が行われなかったものと解される」としている。

医師かどうかの判別不能が3割――所定外45時間以下の協定は54%止まり

調査結果によると、開示された1,091病院の36協定のうち、職種欄が黒塗りされ、医師について協定が結ばれているか否かの判別ができなかったものが約3割みられたという。「医師」または「医師を含む」と明記されていた協定は57%だった。

協定の内容に目を移すと、1カ月の延長時間を法律で定められている月45時間以下と定めた病院は全体の54%に過ぎない。他方、いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の時間外労働を定めた協定が15%もあった。月80時間を超える36協定を締結する病院は、41都道府県におよび、とりわけ東京の都立病院はすべてが月120時間とされていた。参考までに、1カ月当たりの時間外労働でもっとも長いものは月200時間だったという。

労基署による速やかな改善指導を

調査結果を受けて同ユニオンは、(1)もっとも長時間労働である医師が36協定を結ばずに働かされている実態は、極めて重大な違法行為(2)多くの病院の当直業務が32時間連続労働をしている現状を考えれば、医師に関する1カ月の時間外労働時間が45時間以内という協定内容は全く守られておらず、これも重大な労基法違反(3)多くの病院で80時間を超える36協定がみられ、120時間以上という36協定も少なからず存在することは重大な問題――などと指摘。こうした問題について、労基署による速やかな改善の指導を求めている。

労働基準法では、使用者が原則1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせることを禁じている。この法定労働時間を超えて労働をさせる場合には、労使で「36協定」を締結しなければならない。時間外労働の上限時間は月45時間だが、特別条項として、「一時的突発的に時間外労働を行わせる必要があるもの」に限り、45時間を超える協定が認められる。