介護報酬改定で処遇改善進んだが、7割が不満/NCCU定大調査結果

[労使]

UIゼンセン同盟傘下の日本介護クラフトユニオン(NCCU、63分会・約5万6,000人)は16日、千葉県・浦安市で定期大会を開き、(1)業界との協議による集団交渉(2)賃金政策を基本とした要求、労使時間管理委員会の設置等による労働条件の整備と向上(3)本来のクラフト型による個人組合員拡大キャンペーン――などを柱とする2010年度の活動方針を決定した。また、今年4月に実施された初の介護報酬引き上げ改定による処遇改善の調査結果を明らかにした。

「介護労働にふさわしい賃金水準の議論を」(河原会長)

あいさつした河原四良会長は、9年前の介護保険制度の導入以来、初の引上げ(3%増)となった介護報酬改定について、「地殻変動が確実に起こっている。これは自然発生的に起こったものではなく、NCCUをはじめとする関連団体が、慢性的な人手不足状態の原因がどこにあるのか、地道に訴え続けてきた結果が現れたものと確信している」と述べた。また、政府が09年度補正予算の中で、10月から「介護職員処遇改善交付金」の支給を決定した点にも触れ、「民主党のマニフェストにある4万円増を含め、処遇改善につながる政策は大いに歓迎する」などと述べた。

そのうえで、「しかし、ただ上げれば良いというのは、弱者救済の施しの政策の匂いがしないでもない。誇りある介護労働にふさわしい賃金は、どのくらいの水準かの議論が抜け落ちている」などと指摘。さらに、4月の介護報酬改定が、組合員の処遇改善に具体的にどう反映されたかを初めて集約した独自の調査結果に触れ、「処遇改善は一歩前進だが、組合員の7割は不満という内容だ。介護業界に働くすべての従事者の賃金水準は、全産業平均を下回ってはならないという、われわれの賃金政策に基づく主張を改めて確認したい」と強調した。

月給制の三分の二、時給制の半数超が処遇改定に不満

大会で公表された09年処遇改善緊急調査報告は、初の介護報酬の引上げ改定を受けて行われた09賃上げ闘争の結果、処遇改善が賃上げの形で必ずしも波及しているとは言い切れない実態が浮き彫りになった。

調査は8月時点で、組合員4,000人規模を対象に実施。月給制1,085人(回収率約55%)、時給制937人(約46%)――からの回答をまとめた。それによると、09年3月時点と比較した平均賃金水準は、月給制で6,475円(3.3%)増の20万4,085円。ただ、職種によるバラつきが大きく、例えば看護師で1万4,176円(5.8%)増の25万7,770円、事務職では7,782円(4.7%)増の17万3,398円――などと平均を大きく上回る一方、訪問系介護員(ヘルパー)は5,622円(3.4%)増の16万9,491円、施設系介護員(入所型)で5,480円(3.0%)増の18万8,062円、入浴オペレーターでは2,497円(1.2%)増の21万2,182円――などとなっている。

同じく、時給制でも、看護師で53円(3.5%)増1,566円、施設系介護員(入所型)で27円(3.1%)増909円――などで3%を超えたのに対し、訪問系介護員(ヘルパー)の身体介護では10円(0.7%)増1,334円の微増にとどまる一方、逆にケアマネジャーは49円(3.2%)マイナスの1,475円になるなど、ばらつきが目立つ結果となった。こうした結果に対し、月給制の66.6%(未回答を除くと71.0%)、時給制の53.5%(同58.2%)が「不満」だとしている。

さらに09年4月以降、賃金改定以外に実施された取り組みを聞いたところ(択一式)、月給制で468人、時給制で359人が「何も実施されていない」と回答。これに「職員の研修が充実した」(月給制141人、時給制173人)、「非正規から正規への登用機会が確保された」(以下同98人、21人)や「昇格・昇給・昇進のための要件が明確にされた」(86人、54人)――などが続く。しかし、介護従事者の処遇改善に向け、さらなる「介護保険制度の見直しや介護報酬の改善」(743人、619人)や、「国による政策上の支援」(668人、585人)――が必要だとする指摘が多い。

この結果を受け、陶山浩三事務局長は、「そもそもの賃金水準が低いため、月給制平均では結果として3.3%上昇したようになっているが、6,500円程度の賃上げは一般企業の定昇分を下回る。組合員が依然、不満に思うのは当然であり、政権交代を追い風に、政府への働きかけをいっそう強力に行なわなければならない」と総括した。  

(調査・解析部)
2009年10月21日