非正規労働者などの処遇改善と組織化に力点/連合定期大会
結成20周年を迎えた連合(676万1,000人)は8,9の両日、東京・有楽町で第11回定期大会を開き、非正規労働者や中小零細企業労働者の処遇改善や組織化の推進などに力点を置く向こう2年間の運動方針を決定した。役員改選では、古賀伸明会長、南雲弘行事務局長をそれぞれ選出した。
20年間の運動は総じて道半ば
今大会で勇退した髙木会長は冒頭のあいさつで、バブル経済崩壊後のリストラや規制緩和による非正規労働者の急増、貧困問題の深刻化、組合組織率の低下などの問題をあげ、「労働という切り口で見た日本の動静は、好ましい方向に向かっているとはとても言えない。時代のなせるわざという側面はあったとはいえ、連合の20年間の運動が順調だったとは言えず、総論的に評価すれば道半ばという状態と思っている」などと指摘。さらに、自身が会長を務めた直近4年間の取り組みについては、労働分配率の反転や非正規労働者の処遇改善、組織拡大などを進めてきたものの「いずれも確固たる成果を得るにいたっていない」と述べた。
「ストップ・ザ・格差社会」の浸透などの成果も
そのうえで、(1) 「ストップ・ザ・格差社会」キャンペーン運動の浸透(2) ホワイトカラーイグゼンプションの導入阻止(3) 最低賃金40円の引き上げ(2007~09年の3年間)(4) 地域協議会の体制整備の推進――の取り組みを「成果と言ってよいかも知れない」と振り返った。
そして、「(労働組合の)社会的存在としての役割の強化が今もいろいろな観点で期待されている」として、国民の生活安定や諸権利の改善、平和を維持する運動などに言及。今後は、「来年の参院選でいま一度勝利し、衆参両院で安定多数を確保してこそ、初めて政権交代が完遂する」と呼びかけるとともに、雇用対策の強化を訴えた。
鳩山首相が来賓あいさつ、「雇用問題の解決に全力を傾注」
大会には来賓として、鳩山内閣総理大臣、長妻厚生労働大臣、輿石民主党代表代行、福島社会民主党党首、亀井国民新党副代表らが出席。鳩山首相は連合衆院選前に結んだ政策協定について、「一つひとつ着実にこなしていく政権にならなければいけない。その思いを、特にこの秋から冬にかけて厳しくなる雇用問題の解決に向けて、全力を傾注していきたい」などとあいさつ。長妻厚労相も雇用問題に関して「内閣一体となって雇用の安定を図り、また失業された方の生活の安定を図りながら、一日も早く働く場を確保できるよう全力で取り組む。医療、介護、環境などの新分野における雇用創出にも努めていく」などと述べた。
非正規問題を労働運動の中心的課題に
今定期大会で確認した「2010~2011年度運動方針」は、「すべての働く者の連帯で、希望と安心の社会を築こう!」をスローガンに掲げた。(1) 社会の底割れに歯止めをかけるために、雇用の確保・創出や政策制度の実現に全力を傾ける(2) 「地域に根ざした顔の見える運動」をさらに前進させ、地域で働く労働者が抱える諸問題への対応力を強化する(3) 社会の安心・安定のために労働組合が不可欠なインフラとの認識に立ち、組織拡大を進める――ことを運動の力点に設定。非正規労働者や中小零細企業で働く労働者の処遇改善と均等処遇や働き方の改革によるワーク・ライフ・バランスの推進、労働者代表制の法制化などによる集団的労使関係の再構築などに取り組む。
なかでも、非正規労働者の労働条件底上げと組織化を「労働運動の中心的課題」と位置づけ、社会的運動として展開する。具体的には、2年前の前回大会で発足した非正規労働センターをすべての地方連合会に非正規労働センターを設置。組織化を中心とした活動強化や、非正規雇用問題を社会的課題として浮上させていくためのキャンペーン活動などを行っていく。
めざすべき社会像などを示した提言を報告
また、大会では、今後めざすべき社会像などを示す「連合結成20周年にあたっての提言」が報告された。提言は、日本社会が底割れし、将来不安が高まる現状を踏まえ、「労働を中心とした福祉型社会」の必要性を強調。「社会からの期待に応えられる存在であり続けることをめざす」として、(1) 労働者本位の政策決定を担う存在(2) 職場で地域で「振り返ればそこにある」存在(3) 労働市場全体に対する労働条件決定に強い影響力を持つ存在――の3つの役割・機能を強化する、とした。
そのうえで、(1) 「1000万人連合の実現」-労働組合のある職場・地域の拡大、集団的労使関係の再構築(2) ディーセントワークの確立とワーク・ライフ・バランス社会の実現(3) 単組、産別、ナショナルセンターの機能強化(4) 労働教育の推進と組合リーダーの育成(5) 幅広い層の参加による社会に開かれた運動の推進――から成る「5つの中期プラン」を提示。今後10年の間に行うべき、それぞれの実現に向けたアプローチも記載した。
例えば、(1) については、派遣労働者や請負労働者に対する組織化戦略の確立や、中小零細企業の組織率の10%台への引き上げ、公務員の労働基本権の回復など。(2) は、最低賃金の全国平均1000円の達成や時間外労働割増率50%の引き上げ、就労生活支援給付制度の恒久化の実現など。(3) は、構成組織の包括的労働協約の100%締結、労働者供給事業や能力開発・職業訓練事業の検討と連合としての実施の是非、ナショナルセンターの役割の徹底追求など。(4) は、義務教育段階から労働教育を教育課程に位置づけることや、大学への寄付講座の拡大など。(5) では、政策実現のためのNPO等他団体との連携や、経済団体・消費者団体との社会的対話の促進などを打ち出している。
非正規・雇用問題の取り組み強化を要請
討論では、非正規労働者を中心とする雇用問題に関し、「非正規労働者の多くは社会保障の網から漏れており、格差だけでなく将来不安も抱えている。組織化を進めていかなければ、これらの課題は進んでいかない」(サービス・流通連合)、「連合は派遣法改正やセーフティネット構築に向けて尽力してきたが、事態はさらに悪化するものと思われる。就労支援給付制度の恒久化などセーフティネットの充実、実現が喫緊の課題だ」(JR総連)、「(公務職場の)非常勤職員は行政サービスの運営に欠かせない存在となっているが、低賃金、不安定雇用で働いているのが実態。加えて、法的位置づけが曖昧で、パート労働法も適用されない問題もある。組織化と処遇改善に向けた運動を進めると同時に、と法制度の抜本見直しを求めていく」(自治労)、「派遣村で明らかになった派遣切りの惨状を二度と繰り返さないためにも、一刻も早く派遣法を改正すべき」(全国ユニオン)などの意見が出た。
また、JAMは雇用情勢の悪化に伴い、構成組織の過半数が雇用調整助成金を受けている現状を踏まえ、「(同制度の)制度拡充と同時に、確実に継続して実施していくこと、そのための財源確保を求めたい」と発言。自動車総連からも、「雇用対策へのさらなる強化は急務。足下の雇用を何としても維持、確保し、働く者の生活を最大限守るために全力を傾注していかねばならない」と訴えた。
政権への政策対応や春闘に関する意見も
一方、連立政権の政策への対応については、国公連合が「国家公務員の総人件費二割削減や国の出先機関原則廃止などは、構成組織と国民に大きな影響を及ぼすもので、組合員の不安を呼んでいる」などと発言。JR連合は、CO2の25%の削減目標について「ハードルは高いが総力をあげて取り組む必要がある」としつつ、「高速道路無料化は環境面とか安全面、公共交通の雇用面でかなり大きな影響が確認されている」として、慎重な検討の必要性を指摘した。
春闘のあり方に関しては、基幹労連から「春闘の成果が国民全体のものとして共有される構造が消え去っている。目に見える形での思い切った取り組みが不可欠だ」として、「例えば2年を一つの単位として捉え、前半年を国民全体の課題、後半年は各産別固有の課題を中心に取り組む方式の導入」を提案した。このほか、「2010春闘でも引き続き連合の強力なリーダーシップを発揮して欲しい。JR連合はベースアップにこだわる取り組みを進めており、基本的な姿勢は変わらない」(JR連合)との声もあった。
古賀会長、南雲事務局長を選出
今大会では役員改選があり、新会長に前事務局長の古賀伸明氏(電機連合出身)を、事務局長に南雲弘行氏(電力総連出身)をそれぞれ選んだ。会長代行には徳永秀昭氏(自治労委員長)と女性初の代行となる岡本直美氏(NHK労連議長)選出された。
なお、大会では連合会費の単価(現行50円)を改定し、2011年、2012年に段階的に5円ずつ引き上げる「連合運動を支える財政基盤の確立に関する方針」を確認。「雇用の維持拡大」「核兵器廃絶と世界の恒久平和」「第22回参議院選挙の必勝」に取り組む特別決議もそれぞれ採択した。
(調査・解析部)
2009年
10月14日