地域ベースに社会的運動へ/JAMの中期方針
金属機械関係の中小企業を多く組織するJAM(会長・河野和治、39万人)は8月28日、東京・浅草のホテルで第11回定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めるとともに、今後10年の運動を見渡す中期的考え方を確認した。運動方針の柱は、(1)仕事に誇りをもてる「ものづくり産業」再構築 (2)仕事と生活が調和する働き方の実現 (3)組織の拡大・強化、地方活動・地協活動の強化④政策実現のための政治活動の強化――の4つ。中期的考え方の「JAMこれからの10年に向かって」では、社会的な労働運動の構築がうたわれ、地域をベースに、労働相談から職業紹介、職業訓練、経営相談まで対応する、中小企業・労働者の総合的な拠り所づくりや、地域横断的な労働協約の締結のよる社会的影響力のある労使関係の確立などが、今後の議論素材として挙げられている。
向こう2年間の運動方針の具体的な課題は、「雇用安定協約の締結や事前協議の徹底による雇用の確保」「企業内最低賃金協定締結の推進や労働条件情報の共有化による労働条件の点検・底上げ」「法定最低賃金制度の拡充や企業再編での労働者保護法制の強化などによるワークルールの確立」「地協を軸とする日常活動強化や有期労働者の組織化などによる組織の強化・拡大」など。ワークルールの確立では、労働者派遣法の改正について、直接雇用原則や労働者保護の強化、派遣先責任の強化などとともに、「物の製造業務」への派遣禁止を明確に打ち出している。組織強化では、昨年から全単組を対象に実施している、組織運営や日常活動のヒアリング調査を踏まえ、きめ細かく単組活動の強化に取り組む考えだ。
「キーワードは労組の社会性」
中期的考え方「JAMこれからの10年に向かって」では、JAMのめざす方向について、「単組の力を集めて社会運動につなげ、社会の中のJAMとしてあるべき社会の実現をめざす」と定め、単組による現場の運動力を高めることで、運動の社会化を狙っている。具体的な活動については、今後、議論するとしているが、中小労働者に労働・生活相談をはじめ、職業紹介、職業訓練、労働者供給事業を一体となって提供し、中小企業経営者の経営相談なども受け付ける総合的な中小企業の拠り所づくり構想を提起。このほか、「社会的影響力のある労使関係の確立をめざす、地域横断的な労働協約の締結による労働条件の地域ミニマムづくり」「地域・学校への出前授業を通じたものづくり教育推進」――などを議論の素案として提起している。斉藤書記長は討論の中で、「労組の社会性がこれからのキーワード。そのために単組力の向上をめざす」と強調し、現場での運動の活性化の重要性を訴えた。
あいさつで河野会長は、「ものづくりの現場では数字に表れない経営資源の評価が重要。わが国のものづくりは、会社と従業員との信頼関係の中で生まれた普通の人の創意・工夫に支えられてきた」と分析。そのうえで、「信頼関係の基礎は労使関係。強い競争力の原点は働く者を大切にする経営であり、ゆるぎない労使の信頼関係だ」と述べ、信頼関係に基づく労使関係の強化を訴えた。また、地域での運動展開について、「どのように優れた方針であっても、単組に伝わり、実践され、結果が出なければ運動は広がらない」と述べ、地協活動の活性化による運動の社会的拡大を訴えた。
秋の労働協約改訂交渉に向けた方針では、労働時間管理体制の徹底や年休取得促進とともに、所定内2,000時間以下などをめざす「労働時間に関する指針」に基づく労働時間短縮の取り組みを最重点課題と位置づける。また、裁判員制度のかかわる特別休暇の確立や労基法、育児介護休業法などの法律改正への対応も課題としている。
役員改選では、河野和治会長、斉藤常書記長を再任した。
(調査・解析部)
2009年
9月2日