賃金構造維持分の確保が高レベルに/JAMの春季交渉総括
機械金属関係の中小企業を多く組織するJAM(会長・河野和治)は5日、東京・駿河台の総評会館で第15回中央委員会を開き、今春の賃上げ交渉の総括を確認するとともに、近く行われる衆議院議員選挙に向けた組織体制づくりなどを申し合わせた。調査・解析部末現在で、4,250円(単純平均)の妥結実績となった賃上げ交渉について、「回答組合のうち、賃金構造維持分を確保した割合が、ここ数年で最も高いレベルで推移した」などとして、「『賃金引き上げ相場の下支え』を牽引する役割を果たした」と評価している。
賃上げ相場の下支え役果たす
あいさつした河野会長は、「産別平均の定昇額や中核組合を中心とした回答状況の情報開示により、中小労組や未組織労働者への相場波及が図られた」と述べ、09闘争で発足した共闘連絡会議など連合台での共闘強化の取り組みを評価。経済危機下で展開した賃上げ交渉について、「今回の交渉ほど労使の隔たりが大きかったことはかつてなく、従来培ってきた労使の信頼関係の質が問われ、今後につながる労使関係の強化が求められることとなった」と振り返った。また、政治情勢について、「雇用不安や所得の減少が深刻化し、国民生活は厳しさを増している。『労働を中心とした福祉型社会』への転換をめざし、民主党・新政権の樹立に向けて取り組を進める」と強調し、総選挙での政権交代を訴えた。
4月末現在の賃上げ集計によると、回答を引き出したのが825組合、うち733組合が妥結しており、妥結額(単純平均)は4,215円と、昨年同期を877円下回る結果となった。厳しい交渉環境を反映し、妥結組合は4割程度にとどまり、例年6~7割が妥結しているのに比べて大幅に解決が遅れている。回答を引き出した組合のうち、ベースアップを獲得したのは11.6%(昨年同期37.8%)で、賃金構造維持分を確保したのが42.6%(同12.1%)。昨年同期の実績と比べ、ベア獲得の割合は大きく落ち込んだが、賃金構造維持分確保の割合が伸びて、構造維持割れの増加をかろうじて小幅にとどめており、「『賃金引き上げ相場の下支え』を牽引する役割を果たした」としている。
政権交代実現の必勝決議を採択
次期総選挙に向けた選挙活動については、「政権交代を実現する衆議院選挙必勝決議」を採択し、組織の総力をあげた選挙体制づくりを確認した。決議は、「今日の日本に不況をもたらし、希望を奪ったのは自公連立政権だ」と現政権を批判し、「われわれは、もう我慢できない。自公政権を打倒し、民主党政権で我が国に希望を取り戻そう」と強調。総選挙で、組織内候補の当選をめざし、「全組織を挙げた熱い取り組みをこの政治決戦にぶつけよう」と訴えている。
このほか、夏の大会に向けて議論する向こう2年間の運動方針について、「『ものづくり産業』における人材育成と雇用確保」などを柱とする運動方針骨子を確認。また、今年はJAM結成10週年に当たることから、今後10年を見通す中長期的方針も合わせて議論することを決めた。齋藤常書記長は、「JAMが何をめざすのか。何をやるのか。社会運動につながる運動を考えたい。そうでなければ、持続的な運動とはならない」と述べ、活発な議論を呼びかけた。
(調査・解析部)
2009年
6月10日