勤務医による労組を設立/全国医師ユニオン

[労使]

病院の勤務医などでつくる全国医師連盟(全医連、黒川衛代表、820人)は7日、都内で集会を開き、勤務医が個人加盟する労働組合「全国医師ユニオン」を5月に設立したことを報告した。医師だけが参加する全国規模の労働組合は初めて。勤務医の労働条件改善などに取り組む。

全国医師ユニオンは先月16日、8人の勤務医で結成された。当面の課題として、(1) 過労死を招く過剰労働をなくす (2) 当直を時間外勤務と認めさせる (3) 主治医性を担当医制に変えさせる――ことをあげる。長期的にはEUの労働基準を目標に活動を進めるとともに、複数の医師が勤務する全医療機関にユニオンの支部をつくり、医師のナショナルセンターとして労働環境改善で役割を果たすことを掲げている。

こうした運動課題について、同ユニオンの植山直人代表(老人保健施設「みぬま」嘱託内科医)は集会後の会見で、「月80時間以上の時間外労働は過労死との関連性が強いとされているが、多くの医師がこれを越える労働を半強制的に行わされている現状がある。当直はほとんどの病院で時間外勤務として認められていないが、これは厚生労働省の見解からみても労働の内容からみても時間外勤務だ。また、主治医と言われると、『24時間365日あなたは私の主治医です』となるが、ヨーロッパなどをみると夜間は夜間勤務の医者がいて、主治医だけに頼る形ではない。信頼関係の問題もあるので非常に難しいが、こういう意識を変えていかなければ、医師の労働環境は改善しない」などと現状を説明した。今後、地域医療機関の現状に配慮し、現場の医師の声を反映させながら、各政党や関係省庁などへの働きかけを行う考えだ。

同ユニオンは11月に定期大会を開く予定で、それまでは「会員を募るなどの組織体制の確立を最優先」としながらも、会員を支援する仕組みづくりを進めるという。具体的には、労働環境の改善のための相談活動や会員が働く職場での団体交渉、社会保険労務士や弁護士を紹介するシステムの構築などを実施。組合員が過労で倒れた場合には家族の相談にのるとともに弁護士費用の援助(100万円を上限)などの取り組みも行う。また、「医師労働の基礎知識」をまとめたパンフレットや、会員の労働時間が一目でわかる「ユニオン勤務記録手帳」などの発行も予定している。

組合員については当面、300人の組織化をめざして、全国医師連盟の会員に加入を呼びかけていく方針。上部団体には加盟しないが、自治労や日本医労連など他業種の労働組合との連携は模索する構え。医療従事者を組織する他労組との二重加盟も容認するとしている。

(調査・解析部)
2009年 6月10日