09春季生活闘争の中間まとめを確認/連合・中央委員会

[労使]

連合(髙木剛会長)は2日、都内で中央委員会を開き、「2009春季生活闘争の中間まとめ」を確認した。髙木会長は、「労働組合の最大の課題の一つである労働条件決定にナショナルセンターが関与しないパターンはあり得ない」などと主張。闘い方についても、「経営側の不条理な強弁には時には組織をあげて闘う必要がある」などと言及した。

写真:連合第55回中央委員会

ナショナルセンターの関与なしはあり得ない

冒頭、髙木会長はあいさつで、「今年の闘争は多くの教訓を残した」としたうえで、春闘における労使交渉のあり方について「労働条件決定の過程への連合の関与は不必要あるいは最小限でよく、産別・単組主体で良いとする考え方を肯定する立場に立つことはできない」と指摘。「闘争の中にもいろいろなステップやステージがあり、ナショナルセンターのもこの流れの中で応分の役割を求められる」などとして、「労働組合の最大の課題の一つである労働条件決定にナショナルセンターが関与しないパターンはあり得ない」と強調した。

今年、結成20周年を迎える連合は、現在、産別書記長クラスによるプロジェクトチームで労働運動のさらなる役割発揮に向けた改革論議を行っており、春闘の進め方や連合、産別、単組の役割分担についても「いろいろな意見があり、改革論議のなかで議論すべしとの要請もある」という。こうした声を受けて、あえて自らの考え方を示した格好だ。

団体行動権、争議権を想定した戦術、戦略も

また、髙木会長は「労働組合側の交渉力、経営側への拮抗力という点で、組合側の交渉の相対的力量が低下してきている」とも指摘した。

「昨今は労働組合側が経営側の主張や論理に対して物判りが良すぎるといった批判も聞こえてくる。団体交渉は多面的な要素が複合的に係わっている側面があり、単純に物判りが良い悪いの話しではないが、時には経営側の主張に強弁があるケースもあるはずで、その場合に組合側が経営側の主張に押さえ込まれるといった受け止め方をされることが問われているのではないか」と問題提起。「徒に好戦的になりストライキ指向の運動論を唱導するつもりはない」としながらも、「労働組合には団体行動権、争議権という言葉があることを想定した戦術、戦略があることも再認識する必要がある」と訴えた。

常識的な日本の解雇要件

さらに、正社員の解雇が難しいから非正規社員を増やすとの経営側の主張に対し、「正規雇用の解雇の難しさの原因に、(解雇の必要性などの要件を定めた)整理解雇の四要件の存在を挙げるが、果たしてこれがそんなに理不尽なものなのか。極めて常識的な論理に基づく四要件だと思うし、逆に言えばこれに基づいた解雇は認められるということだ」と反論。「これをもっとやりやすくすべきだという主張は、労働者の首を簡単に切れるようにしろと言っているに等しく言語道断。邪な考えは一蹴しなければならない」などと厳しく批判した。

このほか、労働者派遣の改正について、「連合としては、『一般業務の登録型派遣は禁止すべき』との考え方で一致している」として早期の改正実現に向けて取り組む姿勢を強調。最低賃金の引き上げ問題に関しても、「最賃の引き上げは低所得家計の改善という点で即効性の高い手段。経済状況が悪いことを理由に、今年は引き上げは無し、といった経営側の主張が既に聞こえてきているが、格差社会の是正の観点から今年も最賃をある幅で引き上げていくことを休む訳にはいかない」などと主張した。

交渉の進捗が遅れ、内容も厳しい回答・妥結状況

連合が5月29日に公表した09春闘の回答・妥結集計(5月27日時点)によると、組合員一人あたりの賃上げ額は、3,386組合の平均で4,925円(定昇分込み)。昨年同時期(08年5月21日時点)の集計(組合数4,309組合、引き上げ額5,432円)をみると、未だに4割超が交渉中で、交渉が難航している状況がうかがえる。

また、昨年と比較できる2,689組合の賃上げ額は4,996円となっており、前年同期を額で729円、率で0.25ポイント下回っている。

中間まとめは、全体については、「最後まで、連合全体が粘り強い交渉を展開したことは、運動の前進」「全体として、賃金カーブ維持のための財源を確保し、ベアを獲得した」などと一定の評価しながらも、連合がめざした「物価上昇に見合うベアの獲得によって、『組合員の実質生活を維持する』『消費の拡大、内需主導型経済への転換』『労働分配率の歪みを是正』するとの闘争方針からは、決して満足のいくものではなく厳しくうけとめなければならない」と総括している。

また、中小労組の回答引き出しに関しては、「例年になく遅れており、回答の内容も厳しい」としたうえで、格差改善のためには労働条件の取り組みだけではなく、取り引きの適正化、公契約運動、中小企業対策等の政策・制度面の含めた一層の強化が必要だ」などと分析。パート労働者の待遇改善では、「処遇改善に取り組む組合数(2,152組合)が大幅に増加したことや、時間給の改善等着実な前進がみられた」「重点的項目として設定した正社員への転換制度等にも前進がみられた」などと評価した。

来春闘には、具体的な賃金指標の設置を

今春闘からスタートさせた「共闘連絡会議」の取り組みについては、「結集した38産別は、相互に連携を持ちつつ足並みを揃え、ヤマ場に向けて取り組みを展開した意義は大きい」などとしたうえで、「今次闘争では産業ごとの賃金指標を参考として提示したが、(これによっては運動の推進は難しいため)今後はそれとは別に具体的な(共闘連絡会ごとに代表銘柄を設置するなどの)運動に結びつく賃金の水準について検討を行う」としている。

来春闘の方針策定に向けた課題としては、経済・雇用動向などの闘争を取り巻く環境は厳しい局面が続くとの前提に立ったうえで、(1)内外需バランスの取れた経済へ転換させる(2)正規・非正規労働者の処遇バランスの実現(3)雇用と所得のバランスの確保(配分の歪みの是正)――の三つバランスをどのように取るかかが課題になると指摘。それを踏まえたうえで、「非正規労働者との均等・均衡処遇の確保や労働時間短縮の取り組みを含め、2010闘争をどのように組み立てるか、検討を進める」としている。

組織拡大は直近半年間で約4万7,000人

一方、中央委員会では、一昨年の大会で確認した「組合づくり・第4次アクションプラン21」の第3期(08年10月~09年3月)集計を報告した。

それによると、昨年10月から今年3月までの半年間の組織拡大実績は4万6,963人。連合が掲げた目標(07年10月~09年9月の2年間で65万人)に対する現時点での到達率は、24.9%にとどまった。

構成組織の取り組み状況は、20組織から新規組織化で89組合(1万6,674人)、9組織から未加盟組織16組合(2,183人)、企業再編による組織化で10組織から2,832人など。うち、重点ターゲットであるパートや派遣、契約労働者等の組合化は2万1,550人で、総拡大実績の47.9%を占めた。なお、地方連合会に設置されている地域ユニオンの拡大は、75組合1,738人が報告されている。

こうした状況について高木剛会長は、「内容は大変残念なもの。『労働』をめぐる課題が山積するなかで労働組合への期待が高まっているにもかかわらず、組織拡大が進まないのは何故か、私たち自身の努力不足が最大の原因ではないのか、と思わない訳にはいかない」などと強い危機感を示した。

このほか、中央委員会では、労働者保護の視点での派遣法改正や有期労働契約の労働者保護ルールの法整備などを盛り込んだ「2010年度連合の重点政策」や、来年1月から組合員一人あたり月額10円を引き上げる予定だった連合会費改定の当初案を変更し、2011年、2012年に段階的に5円ずつ引き上げる「連合運動を支える財政基盤の確立」に関する組織討議などを確認した。

中央委終了後には、総決起集会を開催

中央委員会終了後、「衆議院選挙・都議会選挙勝利6.2連合総決起集会」が開かれた。集会であいさつした髙木会長は「なんとしても政権交代を勝ち取るとの気概を込めて、この選挙に臨みたい。選挙は負けたら何もならない。選挙こそ勝たなければ何も残らない。今度の選挙は正念場。乾坤一擲の闘いだ」などと檄を飛ばした。また、集会には民主党・鳩山由紀夫代表、社民党・福島みずほ党首、国民新党・自見庄三郎副代表もあいさつに駆けつけ、決意を語った。

(調査・解析部)
2009年 6月3日