雇用安定・創出に向けた取組み強化を共同で要請/連合・日本経団連

[労使]

連合(高木剛会長)と日本経団連(御手洗冨士夫会長)は3日、悪化する雇用情勢への具体的な取組み強化を求める「雇用安定・創出に向けた共同提言」をとりまとめ、麻生太郎首相をはじめ、河村建夫内閣官房長官、舛添要一厚生労働相に対して共同で申し入れを行った。提言は、雇用調整助成金の拡充・強化など、雇用セーフティネットの強化に向け、政労使での合意形成を求めている。これに対し舛添厚労相は、3月中に何らかの政労使合意を得るべく協議したいなどと応えた。

申し入れの柱は、(1) 雇用調整助成金の拡充・強化 (2)公共職業訓練の拡充 (3)ハローワークの機能強化 (4)「就労支援給付制度(仮称)」の創設 (5)政労使一体による「ふるさと雇用再生特別交付金」などの雇用創出事業実施 (6)セーフティネット拡充や雇用創出策についての政労使合意の形成――の5点。

雇用調整助成金の拡充・強化については、現行 200日となっている1年間の支給限度日数の撤廃・緩和や助成率、教育訓練費の拡充などを求めるとともに、迅速な手続きに向けた環境整備を図るべきだとしている。

公共職業訓練の拡充については、民間ニーズを十分に踏まえた訓練内容の充実や訓練期間の長期化、人材が不足している分野や新規の雇用創出が期待される分野に対応した訓練メニューの開発などを求めている。

ハローワークの機能強化では、地域・産業による雇用情勢のばらつきが大きいことから、ハローワークの全国ネットワーク機能を強化するための体制整備を求め、生活相談からキャリアカウンセリング、職業紹介までできる総合的なワンストップサービス拠点を早急につくるべきだと提起している。

新設を求めている「就労支援給付制度(仮称)」は、雇用保険の給付を受給できない人を対象に、公的職業訓練を受講する期間中の生活を保障する制度で、年長フリーターや長期失業者などに対する支援策強化を狙ったもの。

政労使一体となった雇用創出事業については、緊急の課題である雇用の受け皿づくりの事業に、企業労使がアイデアや人材の面で参加できる体制整備を求めている。具体的には、「ふるさと雇用再生特別交付金」によって各地方自治体に設けられた雇用創出のための基金に対して、企業や労働組合が拠出できる仕組みを設けることなどが盛り込まれている。

舛添厚労相はこの申し入れを受け、政労使の合意形成については、「3月中をめざして協議したい」と述べ、河村官房長官も「政労使の枠組みで方向性が出れば幸いだ」などと応えており、今後、議論が詰められることとなっている。

そのほか、共同提言は、今までの「雇用の維持は最優先課題であるとの労使共通の認識」について、「現在の危機的状況においてもこうした労使の基本的な考え方はいささかも変わることはない」と明記。そのうえで、「雇用維持策の実施に際しては、労働関係法令の遵守はもとより、個別労使で個社の実情を勘案し、徹底した話し合いを通じて労使合意を得ながら進める」などとしている。

このような労使共同による政府申し入れは、7年ぶりのこと。連合と日本経団連はすでに1月15日に、「雇用安定・創出に向けた共同宣言」で、政府に対して雇用のセーフティネットの整備や雇用創出策を求めていたが、今回の「共同提言」はより具体的な対策の中身に踏み込んで、取組み強化を政府に求めたもの。

申し入れ後の記者会見で、連合の古賀事務局長は、「雇用のセーフティネットにきちんと乗れて、次の仕事に移れる仕組みを作るべきだ。そのためには、公共の職業訓練の拡充が必要だ。GDP比で世界的に見ても、日本の公共の職業訓練費用は少ない」と強調した。

(調査・解析部)
2009年 3月4日