来年の闘争は少なくとも物価上昇分の確保を/UIゼンセン同盟定期大会

(調査・解析部)

[労使]

繊維や化学、流通、外食サービスなど幅広い産業を組織する民間最大産別のUIゼンセン同盟(落合清四会長、103.7万人)は10~11日、東京・新宿で定期大会を開催し、向こう2年間の運動方針等を決めた。挨拶した落合会長は来春交渉の要求の考え方について、「少なくとも物価上昇分は確保し、それを全体に波及する義務が労組にはある」などと強調した。

「物価上昇分は連合の連帯責任と自覚すべき」(落合会長)

落合会長は挨拶の中で、09春季交渉の取り組みに向けた考え方に触れ、「連合は政策・制度中心とし、賃金・労働条件闘争は産別自決を基本にすべきとの主張もあるが、4年前からの中小共闘、2年前からのパート共闘、有志産別共闘の効果を考えれば、来年の春季生活闘争はもう一歩推し進め、要求基準と解決基準の共有化を図るべく、連合一丸となった戦いの雰囲気を醸成していかなければならない」などと強調。そのうえで、物価上昇率が、十数年ぶりに2%以上になるとも予測されるなか、統一賃闘の考え方として「2%となるとベアだけで5~6,000円の要求になり無理だという意見も聞こえてくるが、こうした弱音を吐いてはならない。現行賃金が実質的に下がっているのに、(仮に)2~3,000円でいいから返してくれと言うのは、卑屈で間違った思いやりの要求だ。少なくとも物価上昇分は確保し、それを全体に波及する義務が労組にはある。来年の賃上げ交渉は、物価上昇分は連合の連帯責任と自覚し、その上でUIゼンセン同盟は格差是正を含めた要求を検討していかなければならない」などと主張した。

大会では、09~10年度の運動方針として、「運動ができる組織基盤があるか?」「産別が組織実態を勘案した方針を提示できているか?」――など6点の課題をあげ、これに対応する (1) 組織が団結して行動できる体制づくり (2) 短時間労働者、介護関係労働者や派遣労働者等に焦点を当てた運動の展開 (3) 生活の一部としての働き方の見直し(所定労働時間の意味、適正要員、生産性向上等について協議する労使委員会の設置)――など9本を重点的な取り組み課題に据えた。

組織の強化・拡大に関連する方針では、 (1) 地域活動を支援する形で、(特定県でパイロット的に)「地域ゼネラルユニオン」を具体化させる (2) 生活関連業種の業界トップクラス企業を戦略的に組織化(新規・企業内拡大それぞれ2.5万人)する――ことなどを決定。UIゼンセン同盟はこの間、名ばかり管理職問題への対応からコナカユニオンやメガネスーパー労組、また合従連衡機運が高まるチェーンドラッグストアなど、売上上位10社で30組合を組織化するなどし、組織人員を昨年度比約3万4,600人増の103万6,900人(うち短時間組合員約46万人)まで伸ばした。こうしたなか、向こう2年間も引き続き医薬関連や紳士服、フィナンシャル、ホームセンター、娯楽業種ほか、地域内トップクラスの未組織企業をターゲットに、精力的に組織拡大に取り組む構えだ。

一方、政策関連の方針としては、 (1) 特定最賃(旧・産業別最賃)を全都道府県の第3次産業で設定する(09年3月に意向表明)ほか、介護関係の新設に向けて取り組む(09年統一賃闘時に協定化推進) (2) 65歳定年制へ向けた労働条件等指針や介護、派遣労働者の処遇改善指針、管理監督者の時間管理対策指針を策定する (3) (今大会で策定した「化学産業の化学物質管理政策」「食品・フードサービス産業政策」に加え)、繊維産業政策、流通・サービス産業政策、ホテル・レジャー産業政策、地域活性化等に向けた複合政策を随時策定する――ことなどを決定した。

大会ではこのほか、役員改選を行い落合清四会長、島田尚信書記長らを再任した。また、原料や食品の高騰に伴う実質賃金低下の緩和に向け、所得税減税の即時実施(定率減税の復活)など7本の対策を求める「生活防衛緊急アピール」を採択した。そして大会終了後、UIゼンセン同盟としては異例の街頭デモを展開。「物価高から国民生活を守れ!」などとシュプレヒコールしながら、大会会場の新宿厚生年金会館から渋谷区代々木方面に向けてデモ行進した。