西原会長、相原事務局長の新体制でスタート/自動車総連定期大会

(調査・解析部)

[労使]

自動車総連(74万人)は9月4、5の両日、東京・新宿で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針や中期的な観点から道路・交通政策に関する基本スタンスを示す7つの提言を確認した。役員改選では会長・事務局長を新たに選出し、西原浩一郎会長(日産労連)、相原康伸事務局長(全トヨタ労連)の新体制をスタートさせた。

自動車総連は08春闘で6年ぶりに具体的な数字を要求基準に盛り込み、賃金改善分を「1,000円以上」に設定して取り組んだ。総連のまとめによると全体の9割超の1,013組合が賃金改善分を要求し、598組合(昨年比169組合増)が改善分を獲得したことから、大会では「全体の底上げ・下支えを果たすとともに、賃金水準の格差拡大に寄与」したと総括。その一方、賃金構造維持分割れが1割弱あり、全体では賃金水準の低下に歯止めがかかっていないことから、「格差の拡大を防ぐ取り組みを一層強化」すべきだとしている。

冒頭のあいさつで加藤裕治・前会長は来春の取り組みについて、「物価上昇分は要求すべき、その上で各産業の実態に応じて生産性向上分の配分を求めるべき」との従来からの産別方針を踏まえつつ、「金属労協がリードするだけでなく、連合のすべての部門が一体となる強い共闘が必要だ」と訴えた。

運動方針では、産業内で顕在化している「長時間労働」「付加価値の偏在」「業種間・企業規模間の労働条件の格差拡大」「非正規労働者の増加」「技能伝承・品質維持」「重大災害の頻発」「海外労務問題の増加」――などの課題について重点的に取り組むとしている。非正規問題については昨年、全単組を対象に初めて実施した「自動車産業における非正規労働者の雇用実態」のアンケート調査の結果、従業員全体に占める非正規比率は26.8%となっており、非正規労働者の比率が高い企業を中心に技能伝承すべき正規従業員の不足や、直接部門の派遣社員は1カ月で2割が退職するなど入れ替わりの早さから管理監督者の負担が増大していることが浮き彫りになった。このため今後、 (1) 非正規労働者の人数や比率を適正にするための取り組み(正規登用制度など) (2) 非正規労働者の定着度や勤務状況の向上に向けた取り組み(職場懇談会など) (3) 非正規労働者のモラールやモチベーション向上を図るための取り組み(ジョブカード制度の活用など)――に重点を置くとしている。なお、2007年には正社員の増加に加え非正規労働者の組織拡大により組織人員は前年比1.7万人増の74.1万人となった。

大会ではまた、環境問題や原油高に加え、地域における道路整備のあり方など、産業を取り巻く課題が大きく変化していることから、中期的な観点から道路・交通政策に関する基本スタンスをまとめた7つの提言を確認した。「持続可能なクルマ社会の実現と活力あるまちづくりに向けて」と題した提言では、 (1) 「環境」と自動車利用の両立 (2) 経済損失の低減 (3) 「まちづくりにおける道路・交通政策の重要性」――の3つの視点から、 (1) 真に必要な道路を整備していくため、道路整備計画には民意を十分反映すべき (2) 道路整備は、コストに対して求められる効果が最大となるよう推進すべき (3) 慢性的な渋滞解消に向け、必要な施策を早急に講ずる (4) 地方都市の道路整備は「活力あるまちづくり」の観点を重視し推進すべき (5) 自動車利用との共存を前提に、公共交通機関ネットワークの再強化をすべき (6) 居住者の生活を維持できる道路・交通機関を確保すべき (7) 交通事故死者ゼロを目指し、「交通安全教育充実・運転技術の維持向上・安全な車とまちづくり」によって、より安全な車社会を実現する――を提起している。

07年の国内販売台数は3年連続前年割れとなる一方、昨年初めて日本メーカーの海外生産台数が国内生産を上回るなど競争環境は一段と厳しさを増している。このため大会討議では、部品企業はコストダウンを要請されても単価に反映できず、メーカーとの格差拡大しているため、公正取引や適正な利益の確保を要望する意見(ダイハツ労連)や、海外で労使紛争が多発しており、とくにアジア地域での労使紛争の未然防止について本部のサポートを要請(本田労連)するなど、産業をめぐる環境変化に適切に対応するよう求める意見が目立った。

役員改選があり、会長は加藤裕治(全トヨタ労連)氏に代わり西原浩一郎・日産労連会長を、事務局長には萩原克彦(日産労連)に代わり相原康伸・全トヨタ労連事務局長をそれぞれ選出した。