実質賃金維持・確保の観点で要求を/JAM定期大会

(調査・解析部)

[労使]

中堅・中小の金属機械メーカーを多く組織するJAM(河野和治会長、38万7,000人)は8月28,29の両日、熱海市で定期大会を開き、昨年決めた向こう2年間の運動方針を補強する2009年度活動方針を決めた。長時間・過重労働や格差の是正などの取り組みを進める。09春闘について河野会長は、「実質賃金維持・確保の観点からベア要求を基本とする」などと述べ、物価上昇分を含む賃上げ要求案の策定に意欲を示した。

冒頭、あいさつした河野会長は春闘の取り組み方について、「08春闘は連合中小共闘を担う産別として積極的に取り組みを強化した。その結果、100人未満や300人未満の単組の健闘が光ったが、これら単組の賃金は依然として低い状況だ」などと振り返ったうえで、「賃金や労働条件は急には良くならないので、引き続き賃金底上げのための賃金実態の把握と開示、賃金制度の確立に向けた運動を強化していく」と強調。09春闘では、「物価上昇によって生活が厳しくなっている。企業が赤字でない限り、実質賃金維持・確保の観点からベア要求を基本とする」との意向を表明した。

他方、中小企業がおかれている経営環境について、「多くの中小企業は原材料価格が高騰する一方で、納入単価は低く抑えられてほとんど価格転嫁ができていない。労働者が生み出した成果(生産性向上分)が中小企業にはほとんど残らないのが実態だ」などと説明。「こうした構造を改善し、公正な取引慣行を実現するために、下請関係二法の厳格な運用や『下請適正取引等の推進のためのガイドライン』の活用を強く働きかけていくことが重要だ」と述べ、政策面の対応強化を訴えた。

08春闘で取り組んだ時間外割増率の引き上げに関しては、「臨時国会で労働基準法の時間外割増率に関わる改正が予定されていることも踏まえ、引き続き取り組む」とした。JAMは、今秋の労働条約改定の取り組みでも、年次有給休暇取得運動の展開と労働時間管理の徹底を最重点課題に据えて総実労働時間削減の実現をめざす。

このほか、働く者をとりまく現状にも触れ、「『安心・安全』とはほど遠い。脱法行為が横行する今の派遣法は当然見直されるべきだし、これ以上の労働市場の規制緩和を許さない労働組合の取り組みが重要だ」などと述べた。

来賓あいさつした高木剛・連合会長は、09春闘の要求の考え方を「まだ、議論が始まったばかりだが」と前置きしつつ、「物価上昇による生活の目減り分を回復する必要がある。賃金カーブを維持しながら物価の目減りを補填し、そしてできれば実質的に賃金を上げる改善原資も取りたい。不況だからそういうことはできない、という議論ではだめだ」と主張。非正規労働者の処遇改善についても、「格差社会の一番の根本原因は、非正規雇用の人たちの働き方のルールの乱れや低処遇にある。同じような仕事をすれば同じような処遇で雇われるべきだし、働き方のルールがあまりにひどければ見直してもらう」と強調した。

ものづくり人材の育成を

一方、大会では、日本のものづくり産業の基盤技術・技能の継承と人材育成などに関する提言をまとめた「ものづくり進化論Ⅱ」を報告した。 (1) 創造性と個性の進化 (2) ものづくり人材の育成と労働力の確保 (3) 製造業を取り巻く環境整備――の分野ごとに課題と掲げ、実現に向けた提言を打ちだしている。

なかでも、人材育成については、「環境・安全面に配慮して塀も高く、どのような作業をしているか見えづらい」機械金属産業の現場の間口を広げることで、若年層がものづくりに関心を持つよう取り組む考えを示した。小・中学生の見学を受け入れることで「ものづくり」の楽しさ・大切さに対する理解を深めたり、インターンシップの機会を拡大して、高校生の勤労観・職業間の育成に寄与するなどの活動に着手する。

具体的には、受け入れ協力企業(事業所)をJAMに登録し、そのリストを持って地方JAMが教育委員会などと連携して活動を進める。2010年度末までにそれぞれ300件の登録をめざすという。